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喧騒
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けんそう
ふりがな文庫
“
喧騒
(
けんそう
)” の例文
旧字:
喧騷
マレーに固有なその平然さは、周囲の広い
喧騒
(
けんそう
)
の中にあってきわ立っていた。四人の
上
(
かみ
)
さんたちが、ある家の戸口で話し合っていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
単にひとり静かに居る時のみではない、全き
喧騒
(
けんそう
)
の中においてもそれは来るのである。孤独は瞑想の条件であるよりも結果である。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
そして、
雑沓
(
ざっとう
)
する
道
(
みち
)
からは、
喧騒
(
けんそう
)
な
叫
(
さけ
)
びがあがり、ほこりが
舞
(
ま
)
いたっていました。その
間
(
あいだ
)
を
少年
(
しょうねん
)
は、とぼとぼ
歩
(
ある
)
いてきたのです。
新しい町
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そして外界の
厭
(
いや
)
な
喧騒
(
けんそう
)
を避けたがって、もっとも奥深い隠れ場所の中に、自分の城楼の中心に、引っ込んでるかの観さえあった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
由来、南蛮の将兵は、猛なりといえども、進取の気はうすく、
猜疑
(
さいぎ
)
ふかく、
喧騒
(
けんそう
)
多く、智をもって計るに
陥
(
おちい
)
りやすい弱点をもっています。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
このような
喧騒
(
けんそう
)
を
極
(
きわ
)
めた中でも、彼の箱の一隅で、喇叭はイレーネの肩に手をかけ、何事か一心不乱のさまで彼女の耳にかき
口説
(
くど
)
いてやまなかった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
人声と
跫音
(
あしおと
)
が入りみだれたようであった。しま萱のしげみがざわめき立ったと思った。そうして松岡は、ひどい静寂と
喧騒
(
けんそう
)
を同時に感じたのである。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そういう
喧騒
(
けんそう
)
の中からひょっくり生れてきかかった一種の旅愁に似たもの、——私は再び窓を閉じた。……
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
真昼の大天幕の下、土人の男女の
喧騒
(
けんそう
)
の中で、生温い風に吹かれながら、曲芸を見る。これが我々にとっての唯一の劇場だ。我々のプロスペロオは
球乗
(
たまのり
)
の黒熊。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
もはやそういった「健康」を
喪
(
うしな
)
ってしまったぼくは、復校してくる連中のひきおこす活動的な混乱、
喧騒
(
けんそう
)
にいやでも巻きこまれて、きっとやつらのその健康に
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
その叫びは口から口へ伝わりあらゆる人々を絶望に叩きこんだ、沸き立つような
喧騒
(
けんそう
)
がいっときしんと鎮まり、次いでひじょうな
忿
(
いか
)
りの
呶号
(
どごう
)
となって爆発した。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
男は生れつきこの世界の闘争と
喧騒
(
けんそう
)
とのなかに飛びこんでゆくようにできている。恋愛はただ青春時代の装飾か、あるいは人生劇の
幕間
(
まくあい
)
に歌われる歌にすぎない。
傷心
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
村の男女の
喧騒
(
けんそう
)
の中に在って沈着に大砲を準備して居る老人は此の村の村長でもう七十歳にもなるが砲術の名人で二十八年間此の役を引受けてやっているそうです。
母と娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
この驚くべき聴感の能力のおかげで、われわれは
喧騒
(
けんそう
)
の中に会話を取りかわす事ができ、管弦楽の中からセロやクラリネットや任意の楽器の音を拾い出す事ができる。
蓄音機
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
しかし惜しい
哉
(
かな
)
、それらのものは都の一部に過ぎなく、すぐその下には、縁のない洋風の建物、それも統一のない様々な様式、汚れた裏町、安価な店構え、俗悪な
喧騒
(
けんそう
)
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
こっちの部屋は
喧騒
(
けんそう
)
していたが、その喧騒を貫いて、鬼火の姥の上げる祈祷の声と、鬼火の姥の振る鈴の音とが、そんなように聞こえて来ることは、かなり怪奇で物恐ろしかった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
外部の
喧騒
(
けんそう
)
から
遮断
(
しゃだん
)
されたところで読書と
瞑想
(
めいそう
)
に
耽
(
ふけ
)
ることもできたが、彼はいつも神経を斫り刻むおもいで、難渋を重ねながらペンをとった。……このようにして年月は流れて行った。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
総立ちになった見物たちは、もう
咳
(
せき
)
払いするものさえなく、化石したように動かなかった。さいぜんからの
喧騒
(
けんそう
)
に引きかえて、大テントの下は、失神したように静まり返ってしまった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そして話をしながら、婆さんは自分の釜から、
牡蠣
(
かき
)
を取って爺さんの釜に移したりしていて、——そこだけ、周囲の
喧騒
(
けんそう
)
に乱されない、なごやかな静かな空気が漂っているようであった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
壇上で
交
(
か
)
わされる言葉にも、片方のグループの
喧騒
(
けんそう
)
にも、同じように平静に耳を傾け、自分たちの列からちらほら人が立って別なグループとあちらこちらでいっしょに相談することをさえ
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
そういう
喧騒
(
けんそう
)
を、橋に、
肱
(
ひじ
)
をついて、
呆然
(
ぼうぜん
)
と見下ろしている人もあった。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
されど
爰
(
ここ
)
に注意すべきことあり。広重は歌川
豊広
(
とよひろ
)
の門人にして人物画をもよくしたるにかかはらず、隅田川の風景を描くにさへ
強
(
し
)
ひて花見の
喧騒
(
けんそう
)
を避け、
蘆荻
(
ろてき
)
白帆
(
はくはん
)
の閑寂をのみ求めたる事なり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
喧騒
(
けんそう
)
の
中
(
うち
)
に時間が来て、
誰彼
(
たれかれ
)
となくぽつぽつ席を立ち始めた。クレエムを食った
femme
(
ファム
)
omineuse
(
オミニョオズ
)
もこの時棒立ちに立って、蝙蝠傘を体に添えるようにして持って、出て
行
(
ゆ
)
く。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ようやく
喧騒
(
けんそう
)
が大きくなったころ、先生は
屁
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
喧騒
(
けんそう
)
の
蛙
(
かわず
)
の声の中に読む
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
仲間同士の話というものは、しばしばそういう平和な
喧騒
(
けんそう
)
をきたすものである。それは会話であると同時にカルタ遊びであり混雑であった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
各人のうちに存在しながら人生の
喧騒
(
けんそう
)
のために聞き漏らされてる、
諸々
(
もろもろ
)
の神秘な力の一世界を、彼はこれまでにない繊細な官能で感得した。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
半信半疑、また歩き出して、
一叢
(
ひとむら
)
の森道を抜けてみると、なんと、そこには
忽然
(
こつぜん
)
と、かなり賑やかな
田舎
(
いなか
)
町の一
聚落
(
じゅらく
)
がガヤガヤと
喧騒
(
けんそう
)
していた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
隅近くではあったが、それだけ中央の
喧騒
(
けんそう
)
から遠去かり、別世界の感があった。中央の喧騒を批評的に見渡して自分たちの場席を顧みると、
頼母
(
たのも
)
しい寂しい孤独感に捉えられた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
一度
(
ひとた
)
び問題がここに触れようものなら知識階級は総立ちになって
喧騒
(
けんそう
)
を
極
(
きわ
)
めるのだ。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
椋鳥
(
むくどり
)
が群れをなして
翔
(
か
)
けて来たが、坪庭の柿の木へ一斉に下り、いかにもガサツに啼き立て、騒ぎ立て、しばらく
喧騒
(
けんそう
)
をつづけたかと思うと、真昼の陽のひかりのみなぎっている空を
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
人々は、
喧騒
(
けんそう
)
の渦巻いている中を、堤から降りた。支配方らしいのが
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
丸万の声が聞えないくらいの
喧騒
(
けんそう
)
に俺は取りまかれていた。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
彼は言葉の市場から来る
喧騒
(
けんそう
)
に耳を
聾
(
ろう
)
していた。笛の美しい
節
(
ふし
)
は喧騒の中に消え
失
(
う
)
せて、聞き取ることができなかった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
町人共の
喧騒
(
けんそう
)
は、むりもない。当然、彼らを先に
安堵
(
あんど
)
させてやらねばならぬ、騒ぎを見てから馳せつけるは、すでに、
此方
(
このほう
)
共の手ぬかりであった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かかる中間的局面には、疲労と
喧騒
(
けんそう
)
と耳語と睡眠と雑踏とがあって、大国民が一宿場に到着したものにほかならない。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
犬達は
喧騒
(
けんそう
)
した。つづけて二、三匹飛び込もうとした。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
往来の
喧騒
(
けんそう
)
をきらっていた。子供らが鋭い叫びをたてて追駆け合っていた。近所の犬がそれに答えて
吠
(
ほ
)
えたてていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ついに
梨
(
なし
)
を書いてしまって、それから彼にルイ金貨を一つ与えながら言った、「これにも梨がついているよ。」また浮浪少年は
喧騒
(
けんそう
)
を好むものである。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それを見ると、
逃
(
に
)
げまわっていた
徳川家
(
とくがわけ
)
の者たちが、また
蠅
(
はえ
)
のように
集
(
あつ
)
まって
神官
(
しんかん
)
を取りまき、忍剣をわたせ、
殺傷
(
さっしょう
)
の
罪人
(
ざいにん
)
を徳川へわたせと
喧騒
(
けんそう
)
した。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして夕方帰り道では、列車の混雑、低い狭い薄暗いみじめな郊外客車の、むせるほどの人込み、
喧騒
(
けんそう
)
、笑い声、歌の声、
猥雑
(
わいざつ
)
、悪臭、たばこの煙。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
シャロンヌ街の各居酒屋はまじめで
喧騒
(
けんそう
)
であった。こう二つの形容詞を並べて居酒屋につけるのは少し変に思われるかも知れないが、それは実際であった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
真夏の暑気に加えて、狭い城下町に、何倍もの人口が一時に入ったので、その混雑や
喧騒
(
けんそう
)
はひととおりでない。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼らはフランス人のごとき
喧騒
(
けんそう
)
浮薄な快活さを有しない。彼らは魂を多分にもち、その愛情はやさしくかつ深い。働いて
倦
(
う
)
まず、企画して
撓
(
たわ
)
まない。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼らのふたりの内緒話は、
喧騒
(
けんそう
)
の声に包まれて他にもれなかった。去来する雨に、あけ放してある馬車の中はすっかりぬれていた。それに二月の風はまだ寒い。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
静かだった空気は、彼の
凄
(
すさ
)
まじい声も打消すほど、途端に、
喧騒
(
けんそう
)
の
坩堝
(
るつぼ
)
に落ちていた。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
喧騒
(
けんそう
)
の中にその言葉の
尻
(
しり
)
は消えてしまった。クリストフは突然口をつぐみ、ピストルを取り落とし、足場から飛んで降り、マヌースのそばへ引き寄せられた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その一例をあぐれば、この
喧騒
(
けんそう
)
な少年らの小社会におけるマルス嬢の評判は、一味の皮肉さで加味されていた。浮浪少年は彼女のことをまるまる嬢と言っていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
また出雲の守護、
塩冶判官高貞
(
えんやほうがんたかさだ
)
なども、立会いとして、これへ臨んでいたので、三明院の野外は、時ならぬ兵の陣場となり、ふだん百戸に足らぬ浦の部落は、
喧騒
(
けんそう
)
にあふれ返った。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
御者のののしる声、らっぱの響き、電車の
鉦
(
かね
)
の音が、耳を
聾
(
ろう
)
するばかりの
喧騒
(
けんそう
)
をなしていた。その音響、その動乱、その臭気に、クリストフはつかみ取られた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
喧
漢検準1級
部首:⼝
12画
騒
常用漢字
中学
部首:⾺
18画
“喧騒”で始まる語句
喧騒裡
喧騒轟々
喧騒震撼