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哂
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わら
ふりがな文庫
“
哂
(
わら
)” の例文
すべて敵に遭って
却
(
かへ
)
ってそれをなつかしむ、これがおれのこの
頃
(
ごろ
)
の病気だと私はひとりでつぶやいた。そして
哂
(
わら
)
った。考へて又哂った。
花椰菜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
それがまた、一層
可笑
(
おか
)
しいので、橋の上では、わいわい云って、騒いでいる。そうして、皆、
哂
(
わら
)
いながら、さまざまな批評を交換している。
ひょっとこ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
娘は鳥渡の間、傍を向いて、まるでひどく気を悪くでもしたかのような表情を浮かべたが、直ぐに肩をゆすぶらして
哂
(
わら
)
った。
アンドロギュノスの裔
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
愛は与える本能をいうのだと主張する人は、恐らく私のこの揚言を聞いて
哂
(
わら
)
い出すだろう。お前のいうことは
夙
(
とう
)
の昔に私が言い張ったところだ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ところで、今、河岸に沿うて歩きながら、珍しくも、三造の中にいる貧弱な常識家が、彼自身のこうした馬鹿馬鹿しい非常識を
哂
(
わら
)
い、
警
(
いまし
)
めている。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
▼ もっと見る
哂
(
わら
)
ふ勿れ、古來の詩人や小説家によつて美しく唄はれたり描かれたりした戀といふものも、飾りを脱いだ眞實のところはそんなものぢやないだらうか。
見て過ぎた女
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
ある日、同じように蓮香のことを思いつめていると、不意に
簾
(
すだれ
)
をあけて入ってきた者があった。それは蓮香であった。桑の榻の傍へきて
哂
(
わら
)
って言った。
蓮香
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そうして子路であるから勇ありという一語を用いしめることを忘れず、また前段で説いたように孔子が子路を
哂
(
わら
)
うということも注意深く付加されている。
冉有
(
ぜんゆう
)
についても同様である。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
命を
賭
(
と
)
しても此帷幕の
隙見
(
すきみ
)
をす可く努力せずに居られぬ人を
哂
(
わら
)
うは
吾儕
(
われら
)
が
鈍
(
どん
)
な
高慢
(
こうまん
)
であろうが、同じ
生類
(
しょうるい
)
の進むにも、鳥の道、魚の道、
虫
(
むし
)
の道、また
獣
(
けもの
)
の道もあることを忘れてはならぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
一夜大蜥蜴燈の油を吸い
竭
(
つ
)
くしたちまち消失するを見、
異
(
あやし
)
んで語らずにいると、明日王曰く、われ昨夜夢に魔油を飽くまで飲んだと、嫗見しところを王に語るに王
微
(
すこ
)
しく
哂
(
わら
)
うのみとあれば
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
どうすれば
哂
(
わら
)
はれないですむだらうか、とかと
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
貫一は自ら
嘲
(
あざけ
)
りて苦しげに
哂
(
わら
)
へり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
こうなれば、もう誰も
哂
(
わら
)
うものはないにちがいない。——鏡の中にある内供の顔は、鏡の外にある内供の顔を見て、満足そうに眼をしばたたいた。
鼻
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それだけは秘かに目覚めて
哂
(
わら
)
っているような・醜い執拗な寄生者の姿が、何かしら三造に、
希臘
(
ギリシヤ
)
悲劇に出て来る意地の悪い神々のことを考えさせた。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「あの床屋のアセチレンも消されるぞ。今度は親方も、とても
敵
(
かな
)
ふまい。」私はひとりで
哂
(
わら
)
ひました。それからみちを三四遍きいて、ホテルに帰りました。
毒蛾
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
子路
率爾
(
そつじ
)
として
対
(
こた
)
えて曰く、千乗の国大国の間に
摂
(
はさ
)
まりて加うるに
師旅
(
しりょ
)
を以てし
因
(
かさ
)
ぬるに
饑饉
(
ききん
)
を以てせんとき、
由
(
ゆう
)
これを
為
(
おさ
)
めば、三年に及ばん
比
(
ころ
)
、勇あり
且
(
か
)
つ
方
(
みち
)
を知らしめん。夫子之を
哂
(
わら
)
う。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
そして、卑しい
田舍訛
(
いなかなまり
)
を朋輩に
哂
(
わら
)
はれはしないかと氣遣つた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
そうかと云って社会の
輿論
(
よろん
)
も、お島婆さんの悪事などは、勿論
哂
(
わら
)
うべき迷信として、不問に附してしまうでしょう。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
というのは、
渠
(
かれ
)
自身けっして死を
怖
(
おそ
)
れていたのではなかったし、渠の病因もそこにはなかったのだから。
哂
(
わら
)
おうとしてやって来た鮐魚の精は失望して帰って行った。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
天人は
紺
(
こん
)
いろの
瞳
(
ひとみ
)
を大きく
張
(
は
)
ってまたたき一つしませんでした。その
唇
(
くちびる
)
は
微
(
かす
)
かに
哂
(
わら
)
いまっすぐにまっすぐに
翔
(
か
)
けていました。けれども少しも動かず移らずまた変りませんでした。
インドラの網
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そういう無名の弟子がここに突然現われて、孔子の有名な弟子の三人までを蹴落としてしまう。そうして問答のあとで孔子がただ曾皙だけに子路を
哂
(
わら
)
った理由を打ち明けることになっている。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
いや、今でも
猶
(
なお
)
この恐怖は、執念深く己の心を捕えている。臆病だと
哂
(
わら
)
う奴は、いくらでも哂うが
好
(
い
)
い。それはあの時の袈裟を知らないもののする事だ。
袈裟と盛遠
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
現に、M氏は先刻の感想の中で、明らかに、自分を上の階段まで達しているものとし、彼を嘲弄する我々を、「下の階段にいながら上段にいる者を
哂
(
わら
)
おうとする身の程知らず」
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
第二双の眼(何を
哂
(
わら
)
ってやがるんだ。)
電車
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
勿論、中童子や下法師が
哂
(
わら
)
う原因は、そこにあるのにちがいない。けれども同じ哂うにしても、鼻の長かった昔とは、哂うのにどことなく
容子
(
ようす
)
がちがう。
鼻
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いかに行く先々で
愚弄
(
ぐろう
)
され
哂
(
わら
)
われようと、とにかく一応、この河の底に
栖
(
す
)
むあらゆる
賢人
(
けんじん
)
、あらゆる医者、あらゆる
占星師
(
せんせいし
)
に親しく会って、自分に
納得
(
なっとく
)
のいくまで、教えを
乞
(
こ
)
おう
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
若し卿等にして予が児女の情あるを
哂
(
わら
)
はずんば、予は居留地の空なる半輪の月を仰ぎて、
私
(
ひそか
)
に従妹明子の幸福を神に祈り、感極つて
歔欷
(
きよき
)
せしを語るも善し。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さて、又一方、ゾラ先生の
煩瑣
(
はんさ
)
なる写実主義、西欧の文壇に横行すと聞く。目にうつる事物を細大
洩
(
も
)
らさず列記して、以て、自然の真実を写し得たりとなすとか。その
陋
(
ろう
)
や、
哂
(
わら
)
うべし。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それは
醜
(
みにく
)
い
山鴉
(
やまがらす
)
が美しい
白鳥
(
はくちょう
)
に恋をして、ありとあらゆる空の鳥の
哂
(
わら
)
い物になったと云う歌であった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
また、一人の妖怪——これは
鮐魚
(
ふぐ
)
の精だったが——は、悟浄の病を聞いて、わざわざ
訪
(
たず
)
ねて来た。悟浄の病因が「死への恐怖」にあると察して、これを
哂
(
わら
)
おうがためにやって来たのである。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
橋の上の見物がまた「わあっ」と
哂
(
わら
)
い声を上げる。中には人ごみに押された子供の泣き声も聞える。
ひょっとこ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
なめくぢか蛭のたぐひかぬばたまの夜の
闇處
(
くらど
)
にうごめき
哂
(
わら
)
ふ
和歌でない歌
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
それが橋の上にいる人間から見ると、
滑稽
(
こっけい
)
としか思われない。お
囃子
(
はやし
)
をのせたり楽隊をのせたりした船が、橋の下を通ると、橋の上では「わあっ」と云う
哂
(
わら
)
い声が起る。
ひょっとこ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その山高帽子とその紫の
襟飾
(
ネクタイ
)
と——自分は当時、むしろ、
哂
(
わら
)
うべき対象として、一瞥の
中
(
うち
)
に収めたこの光景が、なぜか今になって見ると、どうしてもまた忘れる事が出来ない。……
毛利先生
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
『
大方
(
おおかた
)
劫
(
こう
)
を経た
獺
(
かわおそ
)
にでも
欺
(
だま
)
されたのであろう。』などと
哂
(
わら
)
うものもございました。
竜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ブウシエを
哂
(
わら
)
つて俗漢と
做
(
な
)
す。
豈
(
あに
)
敢
(
あへ
)
て難しとせんや。
遮莫
(
さもあらばあれ
)
千年の
後
(
のち
)
、天下
靡然
(
びぜん
)
としてブウシエの
見
(
けん
)
に
赴
(
おもむ
)
く事無しと云ふ可らず。
白眼
(
はくがん
)
当世に
傲
(
おご
)
り、
長嘯
(
ちやうせう
)
後代を待つ、
亦
(
また
)
是
(
これ
)
鬼窟裡
(
きくつり
)
の生計のみ。
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そこで彼等は用が足りないと、この男の歪んだ
揉
(
もみ
)
烏帽子の先から、切れかかつた
藁草履
(
わらざうり
)
の尻まで、万遍なく見上げたり、見下したりして、それから、鼻で
哂
(
わら
)
ひながら、急に後を向いてしまふ。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
つまり二千余年の歴史は
眇
(
びょう
)
たる一クレオパトラの鼻の如何に
依
(
よ
)
ったのではない。
寧
(
むし
)
ろ地上に遍満した我我の
愚昧
(
ぐまい
)
に依ったのである。
哂
(
わら
)
うべき、——しかし壮厳な我我の愚昧に依ったのである。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、その相手は何かと思えば、
浪花節語
(
なにわぶしかた
)
りの
下
(
した
)
っ
端
(
ぱ
)
なんだそうだ。君たちもこんな話を聞いたら、小えんの
愚
(
ぐ
)
を
哂
(
わら
)
わずにはいられないだろう。僕も実際その時には、
苦笑
(
くしょう
)
さえ出来ないくらいだった。
一夕話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その愚を
哂
(
わら
)
ふ者は、
畢竟
(
ひつきやう
)
、人生に対する路傍の人に過ぎない。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
こうなれば、もう誰も
哂
(
わら
)
うものはないにちがいない。
鼻
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
よく
哂
(
わら
)
ってはいたものなのです。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
哂
漢検1級
部首:⼝
9画
“哂”を含む語句
哂笑
御哂
微哂