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咳払
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せきばら
ふりがな文庫
“
咳払
(
せきばら
)” の例文
旧字:
咳拂
と呼んで私を指すと、誰か必ず
咳払
(
せきばら
)
いをする。しかし学術優等品行方正と折紙がついていれば、そんなことに頓着していられない。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
(小型グラスをすかして見て)おや、
空
(
から
)
だ、誰かもう飲んじまった。(ヤーシャ
咳払
(
せきばら
)
いをする)がぶ飲みとはこのことだ……
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
言明どおり、能登は朝に夕に、いや時刻さだめず、
黒木
(
くろき
)
の
御所
(
ごしょ
)
を見廻りにくる。時にはわざとらしく「……エヘン」と
咳払
(
せきばら
)
いなどして通った。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「兎に角君には感謝するよ。そこでもうこっちとらは行こうじゃないか。あの戸の外で
咳払
(
せきばら
)
いをするのは患者だろう。ミイツ。行こう行こう。」
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
と
咳払
(
せきばら
)
いをなされた木戸博士は、ご自分の計算机からお立ちになり、ズカズカと助手の
丘数夫
(
おかかずお
)
の席までお出でになった。
キド効果
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
出もしない
咳払
(
せきばら
)
いをしながら、さも聞き取り難いといった顔つきで、眉をしかめ、手を、耳のところへ屏風に作って
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
迷亭はとぼけた顔をして「君のような親切な
夫
(
おっと
)
を持った妻君は実に仕合せだな」と
独
(
ひと
)
り
言
(
ごと
)
のようにいう。障子の蔭でエヘンと云う細君の
咳払
(
せきばら
)
いが聞える。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
丁度その時、運転台から、叱りつける様な慌しい
咳払
(
せきばら
)
いの声が聞えた。仲間内には意味の通ずる警告の合図だ。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と一等運転手がヨロケながら
独言
(
ひとりごと
)
のように云った。
蒼白
(
あおじろ
)
い、
剛
(
こ
)
わばった顔をして……俺は強く
咳払
(
せきばら
)
いをした。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
和尚さんはまづ、ひとわたりお御堂の中を見まはしてから、かあツ、かあツと、おそろしく大きな
咳払
(
せきばら
)
ひを二つしました。虎が二声
吠
(
ほ
)
えたやうなぐあひでした。
百姓の足、坊さんの足
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
こんこん
咳払
(
せきばら
)
いするのが癖で、「自分等の年をとったことはさ程にも思いませんが、弘さんや捨吉の大きく成ったのを見ると驚きますよ」と言って復た
咳
(
せ
)
いた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
やがて御近習が居眠りを始めたら、己がエヘンと
咳払
(
せきばら
)
いをするから、それを合図に宜いか、旨くやってくれ
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
理髪床
(
かみゆひどこ
)
の主人は謹んでお受けをした。そして
使者
(
つかひ
)
が帰つたあとで、土間に
突立
(
つゝた
)
つて大きな
咳払
(
せきばら
)
ひをした。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
おぢいさんは「そら又大納言だ。俺はいつ大納言ちうものになつたか知ら、よし/\一つ威張つてやりませう。」と思つて、エヘン/\ともつたいぶつて
咳払
(
せきばら
)
ひを致しまして
拾うた冠
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
と
咳払
(
せきばら
)
いをしてから、また急に思い出したように、五六枚はね飛ばして、一調子張り上げ
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
広子はしばらく無言のまま、ゆっくり
草履
(
ぞうり
)
を運んで行った。この沈黙は確かに篤介には精神的
拷問
(
ごうもん
)
に
等
(
ひと
)
しいらしかった。彼は何か言おうとするようにちょっと一度
咳払
(
せきばら
)
いをした。
春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いやに
済
(
す
)
ました人おつに
咳払
(
せきばら
)
ひして進み出でて曰く両君の
宣
(
のたま
)
ふ所
各
(
おのおの
)
理あり。皆その人とその場合とに因つてこれを施して可なるべし。素人も芸者も元これ女なり。生れて女となる。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
わたしはあやうくやり過ごしそうになったが、はっと気がついて、
咳払
(
せきばら
)
いをした。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
そんな事を言う間もなく、外から八五郎の恐ろしくでっかい
咳払
(
せきばら
)
いが聴えます。
銭形平次捕物控:109 二人浜路
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
まず課長殿の
身態
(
みぶり
)
声音
(
こわいろ
)
はおろか、
咳払
(
せきばら
)
いの様子から
嚔
(
くさめ
)
の仕方まで
真似
(
まね
)
たものだ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
わざとらしい
咳払
(
せきばら
)
いを先立てて
襖
(
ふすま
)
を開き、畳が腐りはしないかと思われるほど
常住坐
(
じょうじゅうすわ
)
りっきりなその座になおると、顔じゅうをやたら無性に両手で擦り廻わして、「いやどうも」といった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
水声に
架
(
か
)
す橋を渡って、長方形の可なり大きな建物に来た。導かるゝまゝにドヤ/\戸口から入ると、
眩
(
まぶ
)
しい
洋燈
(
らんぷ
)
の光に初見の顔が三つ四つ。やがて奥から
咳払
(
せきばら
)
いと共に爺さんが出て来た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
涙をかくして乗り移る哀れさ、
家
(
うち
)
には父が
咳払
(
せきばら
)
ひのこれもうるめる声
成
(
なり
)
し。
十三夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
兼尾殿はこう
咳払
(
せきばら
)
いをして、この晴れがましい役目の遂行にかかった。
艶妖記:忍術千一夜 第一話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
父はてれ隠しにエヘンと
咳払
(
せきばら
)
いをして、わざと落ち着き払って答えた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
道化者は一つ
咳払
(
せきばら
)
ひをして、マントの中に頭まですつぽりもぐりこんで、そこにうづくまりました。すると、そのマントの中から、子豚の鳴き声がきこえてきました。ブウー、ブウー、ブウー……。
エミリアンの旅
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
嗄
(
しわが
)
れた
咽喉
(
のど
)
から
咳払
(
せきばら
)
いと一緒にいった。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
平馬は聞きかねたように
咳払
(
せきばら
)
いをして
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
と、老人が
咳払
(
せきばら
)
いした。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は
咳払
(
せきばら
)
いをする。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
咳払
(
せきばら
)
いから、声の
抑揚
(
よくよう
)
から、話振りから、笑い声から、何から何まですべて百パーセントに死んだ細君そっくりである。
あの世から便りをする話:――座談会から――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ガサ、ガサとこっちへ寄ってきた中西与力と捕手の者は、もう約束をすぎて、夕月さえ見る刻限となったので、少し、じれだしながら、
咳払
(
せきばら
)
いをした。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
前後を一渡り見まわしてから、如何にも貴族らしく、
鷹揚
(
おうよう
)
にうなずきながら二ツ三ツ
咳払
(
せきばら
)
いをしました。
死後の恋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
えへんえへんと二つばかり大きな
咳払
(
せきばら
)
いをして席に着いた。おれは今度も手を
叩
(
たた
)
こうと思ったが、またみんながおれの
面
(
かお
)
を見るといやだから、やめにしておいた。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あちこちに起こる
咳払
(
せきばら
)
いの音。やがてそれもピッタリと静まって、水をうったような広いテントの下。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
フェリックスは
咳払
(
せきばら
)
いをした。「妙だ。どうも葉巻はまだ
己
(
おれ
)
には
好
(
よ
)
くないようだ。」
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
その時に廊下で、
咳払
(
せきばら
)
いがして、人の足音が聞え出す。七兵衛が帰って来たのです。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
えへん! えへん! と
咳払
(
せきばら
)
いの声が、
先触
(
さきぶ
)
れのように廊下を流れて来る。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「いいであります、慣れていますから」と彼は言って、
咳払
(
せきばら
)
いをした。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
保吉は校長の
咳払
(
せきばら
)
いと同時に、思わず膝の上へ目を伏せてしまった。
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
三
時
(
じ
)
になると
彼
(
かれ
)
は
徐
(
しずか
)
に
厨房
(
くりや
)
の
戸
(
と
)
に
近
(
ちか
)
づいて
咳払
(
せきばら
)
いをして
云
(
い
)
う。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
こう兄はお母さんに言って、例の
咳払
(
せきばら
)
いを連発させた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「さればさ。」と
僧侶
(
ばうず
)
は高慢さうな
咳払
(
せきばら
)
ひをした。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
と
咳払
(
せきばら
)
いをなされた木戸博士は、
乾枯
(
ひか
)
らびた色艶のわるい
指頭
(
ゆびさき
)
を Fig. 1 に近づけられて
扨
(
さ
)
て
仰有
(
おっしゃ
)
った。
キド効果
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ここまで読んで来ると
流石
(
さすが
)
にマダム竜子の声が、怪しく震えを帯びて来た。しかしマダムの竜子は何気なく
咳払
(
せきばら
)
いをして、いかにも平気らしく先の方を読みつづけた。
継子
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ややあって、どこかで一ツ
咳払
(
せきばら
)
いがしたかと思うと、
厠
(
はばかり
)
の戸のさるがカタンといった。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一種異様の
咳払
(
せきばら
)
いをした。すると、これはどうだ。押入れの天井にポッカリと穴があいて、そこから真赤な電燈の光りが射して来た。天井板と見せかけて、その実
上
(
あ
)
げ
蓋
(
ぶた
)
になっているのだ。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
道庵先生、いかめしい
咳払
(
せきばら
)
いをして
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
金博士は、妙な
咳払
(
せきばら
)
いをつづけさまにして、部屋の中を動きまわっている。失意か、得意か、さっぱり分らない。
共軛回転弾:――金博士シリーズ・11――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あとは時折、切れの悪い
咳払
(
せきばら
)
いが中からするほか、いよいよ世間
森
(
しん
)
としきった時分。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
咳
漢検準1級
部首:⼝
9画
払
常用漢字
中学
部首:⼿
5画
“咳”で始まる語句
咳
咳嗽
咳声
咳入
咳拂
咳枯
咳唾
咳嗄
咳一咳
咳込