取直とりなほ)” の例文
云掛る人など有て五月蠅うるさくも腹立敷だたしきをりも有ども何事も夫の爲且はなさけある亭主への恩報おんはうじと思へば氣を取直とりなほして宜程よきほどにあしらひつゝ月日を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『あゝ、みなわたくしわるいのだ、わたくし失策しくじつたばかりに、一同みんな此樣こん憂目うきめせることか。』とふか嘆息たんそくしたが、たちまこゝろ取直とりなほした樣子やうす
それよりは取直とりなほして稼業かげふせいしてすこしの元手もとでこしらへるやうにこゝろがけてくだされ、おまへよはられてはわたし此子このこうすることもならで、それこそ路頭ろたうまよはねばりませぬ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……朝餉あさげますと、立處たちどころとこ取直とりなほして、勿體もつたいない小春こはるのお天氣てんきに、みづ二階にかいまでかゞやかす日當ひあたりのまぶしさに、硝子戸がらすど障子しやうじをしめて、長々なが/\掻卷かいまきした、これ安湯治客やすたうぢきやく得意とくいところ
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
言葉ことばの一々を雲飛は心にめいし、やゝ取直とりなほして時節じせつるのをまつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それから取直とりなほして。
きゝ與惣次は大いに喜び然ば御途中とちう待受まちうけて直に願はゞ萬一傳吉が助かることもあらんかかつはお專が氣をも取直とりなほさせんと其のことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
てふなにない、あに此處こゝだから、ころしはせぬから安心あんしんして、な、いか、えるか、あにだよ、正雄まさをだよ、取直とりなほして正氣しやうきになつて、おとつさんやおつかさんを安心あんしんさせてれ、こらすこ聞分きゝわけて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
じつて、小刀こがたな取直とりなほした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
記し終りてかたふうじ枕元なる行燈あんどうの臺に乘置のせおきやゝしばし又もなんだに暮たりしが斯ては果じ我ながら未練みれんの泪と氣を取直とりなほし袖もてぬぐひ立上り母の紀念かたみ懷劍くわいけん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御兩親ごりやうしんがどれほどおなげきなさるかをかんがへて、取直とりなほしてれ、え、いか、おまへこゝろなほさうとおもへば今日けふいまなほれるではないか、醫者いしやにもおよばぬ、くすりにもおよばぬ、こゝろひと居處ゐどころをたしかにしてな
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)