友誼ゆうぎ)” の例文
ともかく民藝を栄えしめることによって、支那固有の美をますます発揮せしめることは、日本人の任務であり、友誼ゆうぎであると考えます。
北支の民芸(放送講演) (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
僕はあなたの友誼ゆうぎなんか望みません。そんなものは、つばでも引っかけてやりたいくらいだ! いいですか? さあこの通り、僕は帽子を
我輩の如きは、君も見て知っているだろうが、小鳥峠の上で、仏頂寺と見事に心中をげたんだ、仏頂寺の友誼ゆうぎじゅんじたんだぜ。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おそらくこれは嫉妬しっとと不信とに基づくことであろうから、この際友誼ゆうぎを結んで百事を聞き知ろうとするには、まずその心を収攬しゅうらんするがいい。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その程まで、この男をかばってやらなければならない友誼ゆうぎも理由もわしにはない。……だが武蔵とても、このになってまさか逃げもすまい。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誠に温順な平和な人で、交われば交わるほど友誼ゆうぎに厚い人であった。が如何なる圧迫を受けても決して所信を曲げない。
永久の友誼ゆうぎが続きそうでいて、そのくせ、親交を結んだ相手と、その晩近づきになった記念の酒席で大抵いつも喧嘩をやらかしてしまうのが落ちだ。
痛ましいことではあるが、困窮のために友誼ゆうぎも薄らぐ時があるものである。以前には親しい仲であったのが、今はただ通りがかりの者に過ぎなくなる。
けれどももしそのままでいったら、クリストフはかかる客間的な友誼ゆうぎになんらの幻をもかけなかったろうし、少しの親交も二人の間には生じなかったろう。
そもそも仏国の土国をたいするを見るに、友誼ゆうぎ懇親によるのほか、さらに他意あらず。ゆえに土国のために害ある約はたつべからず。この理、領解しがたきにあらず。
まじめになって、友人をいさめたためにあるいは友誼ゆうぎを破り、あるいは他人の心に反抗心をき起こさせて、いっそう彼を堕落だらくせしむるの機縁きえんとなることがある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
もっとも柳糸子は喜劇的で明るくて、篠井智恵子は悲劇的で暗く、同じように美しいうちにも、性格も役柄も違って居るのが、かえって二人の友誼ゆうぎこまやかにしたのかもわかりません。
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
すなわち氏の友誼ゆうぎあつき親友鳴海三郎氏の談によれば、次の如き興味ある事実が判明する。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小林に対する友誼ゆうぎを満足させるため、かつはいったん約束した言責げんせきを果すため、津田はお延のもらって来た小切手のうちから、その幾分をいて朝鮮行のはなむけとして小林に贈る事にした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで、祖母は自分の夫の残酷無情を大いに憤激しながら彼に訴えて、ただ一つの道はあなたの友誼ゆうぎと同情に頼むのほかはないという結論に到達すると、サン・ジェルマン伯は〈よろしい。
そうしてかれむかし生活せいかつ健全けんぜんで、愉快ゆかいで、興味きょうみのあったこと、そのころ上流社会じょうりゅうしゃかいには知識ちしきがあったとか、またその社会しゃかいでは廉直れんちょく友誼ゆうぎ非常ひじょうおもんじていたとか、証文しょうもんなしでぜにしたとか
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
言って見れば、友誼ゆうぎの法則なぞがそれですね。(学士と握手せんとす。)
あのちょびひげが、友誼ゆうぎにそむいて警察に知らせたのであろうか。そんなことはありえない。この地下装置による不当営利事業をその筋に知られたら、かれも重い処罰を受けるはずではないか。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それにもかかわらずKのことをこんなに引きとらえているなどとは! なぜだろうか? 叔父に対する個人的な友誼ゆうぎなのだろうか、あるいはKの訴訟をきわめて風変りなものと認めて、Kに対してか
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
そうした男と女の友誼ゆうぎというものは世の中に無いのであろうか。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しかして後また友誼ゆうぎ恢復かいふくして、これをきよめ得るのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
人々はひどく友誼ゆうぎ的だった。
撥陵遠征隊 (新字新仮名) / 服部之総(著)
あんな友誼ゆうぎ
粗忽評判記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「だが、君の流刑るけいを聞き、また君が俺にしてくれた友誼ゆうぎの厚さに、山泊やま頭目とうもく連中は、どうしても一度君に会いたいといってきかないんだ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは不信にもとづくことであろうから、よろしく適当な縁故を求めて彼らと友誼ゆうぎを結び、それと親通するのが第一である。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
恐らくジャン・ミシェルの方でも、同じようなき方をしていたであろう。多くの友誼ゆうぎは、他人相手に自分のことを語るための、相互阿諛あゆの結合にすぎない。
欧米の各国はよほど日本に友誼ゆうぎを表し、既に四十年来不都合なる条約のもとに苦しめられたものが、国際法の主義に従って同等なる待遇を受けるというまでに進んだのである。
外交の方針 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
かかる事は吾々の為していい友誼ゆうぎであろうか。またはこれが建築に対する正しい理解であろうか。吾々はその破壊を是認すべき積極的理由をどこに見出したらよいのであるか。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
感謝と友誼ゆうぎの表情と、彼の思いも設けなかった偽りならぬ尊敬が(あざけるような視線と包み切れぬ軽蔑けいべつの代りに)現われていたので彼は全く頭ごなしに罵倒ばとうされでもした方が気安いほど
或はおんなじ事かも知れない。僕はどうしても、それを君に話さなければならない。話す義務があると思うから話すんだから、今日までの友誼ゆうぎに免じて、快よく僕に僕の義務を果さしてくれたま
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
水戸は傍から友誼ゆうぎあつい忠言を送った。ドレゴは、無言でうなずいた。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
かかる恋愛はいつもかかる友誼ゆうぎといっしょになるものである。
心友としての男女の友誼ゆうぎの存在を信じていた。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
忠盛は、かれの友誼ゆうぎを、きもにめいじている。ふかく、徳として「忘れてはすまない人……」と、つねに子どもらへも、話していたことだった。
彼らが愛したのは、彼のうちの卑俗な点、凡庸ぼんような輩と共通な点ばかりであって、真に彼自身であるところのものをではなかった。彼らの友誼ゆうぎは一つの誤解にすぎなかった……。
我輩は隣邦国民の友誼ゆうぎとして従来数々支那人に警告した、注意した。およそ国家の滅亡は他動的に非ずして、自動的なものである。亡ぼさるるというは当らず、亡びるのである。
彼がきわめて友誼ゆうぎ的な意図をいだいているのは、よそ目にもそれと察しられた。
友誼ゆうぎの三一は服装が引き受ける者である。頭のなかで考えた友達と眼の前へ出て来た友達とはだいぶ違う。高柳君の服装はこの日の来客中でもっともあわれなる服装である。愛は贅沢ぜいたくである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「だって先生、科学的には非常に信用が置けるし、言うことも普通であるし、友誼ゆうぎ潔癖けっぺきであるほど厚いし、ことに細君のことなど潔癖で、細君が死んでから他の女には絶対に接しなかったという程の人格者としてはおかしいですが」
「今日までは未だ彼にいささかの友誼ゆうぎをのこしていたが、こんな不忠不孝を勧める悪人と分ればかえって思い切りがよい」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに於て単に理論から言えば、世界の人類は同胞なり、世界の人類には欧羅巴ヨーロッパ人、東洋人という区別はないのである。感情も、友誼ゆうぎも、充分に成り立つ訳だ。同じ人間である。
平和事業の将来 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
彼女は両親を軽蔑けいべつしかねた。両親を愛していた。しかしもうこのままの生活をつづけることはできなかった。シモーヌ・アダンにたいする友誼ゆうぎも、なんの助けともならなかった。
友誼ゆうぎに対する愛の中に発見するに違いない……
藤吉郎は相役のがんまくに、友誼ゆうぎを尽して交際つきあっていた。がんまくは、蒲団をかぶって寝ていた。何ぞというと、よく寝てばかりいる男だった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
友誼ゆうぎにおいては、恩を受くる者も施す者もないんだ。ぼくは恩なんか甘受しない! ぼくたちはたがいに愛してるから、同等の者なんだ。君に会うのが待ち遠しくてたまらない。
秀吉は、利家の友誼ゆうぎむくゆるに、加賀の石川、河北の二郡を附したほか、子息の利長にも、松任まっとう四万石を与え、代りに、府中の城は、これを収めた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
親愛な友誼ゆうぎをも破り、自分の健康をも失わんとした。数か月の間、もはや眠りもせず、食をもとらず、病的な熱心さで同じ議論を際限もなく繰り返した。たがいに刺激し興奮し合った。
こう二つの結びあいを離れて、さらにふたりの性格を箇々にながめてみると、なおその友誼ゆうぎまっとうし合った底に、津々しんしんたる両者の人間の味が噛みしめられる。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
独立せんがためには、組合生活を捨て、友誼ゆうぎをも捨てなければならないだろう。
追って、そうお訊ね下さる友誼ゆうぎに対して、甚だ不挨拶ぶあいさつを申すようで恐れ入るが、いささか思案もござれば、どうぞ御懸念なく、留守方のお勤め、慥乎しっかとお守りねがいたい
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)