卯月うづき)” の例文
時鳥ほととぎすの鳴く卯月うづきが来て、衣更ころもがえの肌は軽くなったが、お菊の心は少しも軽くならなかった。月が替ってから播磨は再び渋川の屋敷へ呼ばれた。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
卯月うづき八日の天道花てんとうばなも同様に、祭の形だけは古くからの定めに従い、その説明が追々に変化して来たのである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
天しょうじゅういちねん卯月うづき二十四日と申すおくがたの御さいごの日におわってしまったのでござりまして
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
七夕祭りの内容を小別こわけしてみると、鎮花祭の後すぐに続く卯月うづき八日の花祭り、五月に入っての端午の節供せっくや田植えから、御霊ごりょう・祇園の両祭会・夏神楽までも籠めて
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
たとえば「鉄砲の遠音とおねに曇る卯月うづきかな」というのがある。同じ鉄砲でもアメリカトーキーのピストルの音とは少しわけがちがう。「里見えそめてうまの貝吹く」というのがある。
映画時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
半紙を短冊形たんざくがたに切って、それに「千早振ちはやぶ卯月うづき八日は吉日よ、さきがけ虫を成敗ぞする。」
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
まだこの城が水攻めをうけない卯月うづき二十七日の大寄せに、敵の鉄砲にあたって、片脚にかなり痛そうな怪我けがをしていたが、この矢倉を預けられた以上、たおれてもここは降りない。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先ず卯月うづきなかばごろ、池水あおくして緑あざやかなる不忍池畔でのめぐり合いを語り、それがえにしとなって、お互に訪問たずねかわすようになり、どうにもしてこの絶世の美の化身を
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
こめし櫻山めぐふもとに風かほる時は卯月うづきの末の空花の藤枝ふぢえだはや過て岡部に續く宇都うつの山つたの細道十團子とほだんご夢かうつゝにも人にもあはぬ宇都の谷と彼の能因のういんが昔を今にふりも變らぬ梅若葉鞠子まりこの宿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
月滿御前つきまろごぜんまをすべし。其上そのうへ、此國のぬし八幡大菩薩は卯月うづきにうまれさせたまふ。娑婆世界さばせかいの教主釋尊しやくそんも、又卯月八日に御誕生なりき。いま童女どうによ、又月は替れども、八日にうまれ給ふ。
卯月うづきのすえ、ようようきょうの旅泊りは駿河するがの国、島田の宿と、いそぎ掛川かけがわを立ち、小夜さよの中山にさしかかった頃から豪雨となって途中の菊川も氾濫はんらんし濁流は橋をゆるがし道を越え
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
土地では珍しいから、引越す時一枝ひとえだ折って来てさし芽にしたのが、次第にたけたかく生立おいたちはしたが、葉ばかり茂って、つぼみを持たない。ちょうど十年目に、一昨年の卯月うづきの末にはじめて咲いた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また筑前にて、柱に「今年より卯月うづき八日は吉日ぞ髪長虫を成敗ぞする」
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
日も卯月うづき、ひとりし行かば——水沼みぬまべの緑のしとね
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
されど卯月うづきの日の光、けふぞ谷間に照りわたる。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
卯月うづき八日死んで生るゝ子は仏
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
今日けふしも、卯月うづきよひやみに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
かさねて十日とうか半月はんつきさては廿日はつかにつらき卯月うづきすぎたり五月雨さみだれごろのしめりがちのき忍艸しのぶたぐひのきてはかねどいけのあやめのながきおもひにかきらされてそでにもみづかさのさりやすらん此處こゝ別莊べつそう人氣ひとげくなくりの八重やへ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
北の庄では卯月うづき廿日にさくま玄蕃どのがてきのとりでを攻めおとされ、なかゞわ瀬兵衛尉どのゝ首を討ったと申すしらせがござりまして、たいそうおよろこびあそばされ
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
有名な「古池やかわず飛び込む水の音」はもちろんであるが「灰汁桶あくおけのしずくやみけりきりぎりす」「芭蕉ばしょう野分のわきしてたらいに雨を聞く夜かな」「鉄砲の遠音に曇る卯月うづきかな」等枚挙すれば限りはない。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
卯月うづきめ、きょうは悪い舌をしておるな。これでは脚の重いはずじゃ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
卯月うづき八日(旧四月八日)の花の日にはじまり、八月一日の八朔はっさくをおわりとして、毎日それだけの昼寝を、働くひとたちの権利のように思っている地方は今でも多く、ヒノツジという言葉が日の頂上
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
暦はもう卯月うづきに入って、昼間から雨気あまけを含んだ暗い宵であった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
春の卯月うづきの贈物、われはや、既に尽し果て
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
卯月うづき八日ようか死んで生るゝ子は仏
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
今年より卯月うづき八日は吉日よ
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
卯月うづきッ。卯月をけッ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
卯月うづき八日(四月八日)
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
卯月うづきを出せ。卯月を」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五〇 卯月うづき八日
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
卯月うづきころ
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)