出来しゅったい)” の例文
旧字:出來
「ひと通りのことはさっき幸次郎さんにもお話し申したのでございますが、手前どもの店に少々困ったことが出来しゅったいいたしまして……」
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「若ッ! 一大事出来しゅったい! 三島の宿で雇い入れました鼓の与吉という人足めが、かのこけ猿の壺をさらって、逐電ちくでんいたしましたっ!」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
何か変事が出来しゅったいしたのではないか。私が信号手ひとりをそこに残して帰ったがために、何か致命的ちめいてきの災厄が起こったのではあるまいか。
言いかえれば、彼女はもうとても私と逢うことは出来ないとさとった。というのは、私が他に心を奪われることが出来しゅったいしていたからである。
家人たちもいかなる異変出来しゅったいかと思い、おっ取り刀で、——女性たちは擂粉木すりこぎとかはさみとかほうきなどを持って、——集まって来た。
思い違い物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「それでございます。実は大鳥家にとりまして、甚だ外聞を憚る儀が出来しゅったい致しましたので、実にはや、何とも彼とも申上げ様のない事件で」
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
金蔵が恨もうと、お豊が帰るまいと、別に心に残ることはなかったが、兵馬が去ってから後の室町屋には大変が出来しゅったいしました。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
電信機発明以来、べっして遠方の事もすみやかに相わかり、右器械を用い候えばワシントンまで一時いっときの間に応答出来しゅったいいたし候。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
のち日本国で今はえらいという俗言が一つ出来しゅったいせし由、しかれば古き喩えはいずれも故実のある事、今様の俗言も何なりとよりどころのある事ならん云々
でわれわれ一同の者、かえって気持ちがセイセイし、大きく笑ってあきらめかけた時、とんでもないことが出来しゅったいしてござる。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
出来しゅったいの上で、と辞してがえんぜぬのを、平にと納めさすと、きちょうめんに、すずりに直って、ごしごしと墨をあたって、席書をするように、受取を——
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勘定局を建てられ〔この人選ことに大切なり〕差寄さしより五百万両くらいの紙幣出来しゅったい皇国政府の官印を押し通用相成るべきこと。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「現に、あやつのお蔭で、御大家の、秘蔵の息女まで、とんだ身の上になられ、いやもう、大騒動が出来しゅったいいたしたる位だ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
あるいはこれらの事情を圧倒するにいたるべき他の有力なる事情が出来しゅったいするときには、死はなんでもなくなるのである。
死刑の前 (新字新仮名) / 幸徳秋水(著)
きっと発見するに相違ありません……そこにどんな事件が出来しゅったいするか、わたしにもほとんど見当がつかないくらいです。
それは支那出来しゅったいの鉢で、まわりに綺麗な人物が描いてありましたが、それをきらきらした金の鉢にしてしまったのです。
不慮ふりょ椿事ちんじ出来しゅったいいたし、勅使をお迎え申し奉る大礼に、何かの御不審もござりましょうが、平にお見のがしの程を』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第一の少女のそばにいたら、この先どうなるか分らない、ことにると実際弁解の出来ないような怪しからん事が出来しゅったいするかも知れないと考え出した。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……ここに、意外なことが出来しゅったいしたというのは、ほかでもない。お上がかねてお手飼いなされ、ことのほか御寵愛なされた『瑞陽ずいよう』ともうす丹頂の鶴。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それ/″\牢内に入れ置く例でございます、文治を乗せたる船が海上つゝがなく三宅島へ着きますると、こゝに一条の騒動出来しゅったいの次第は次回に申上げます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
十月には伊勢殿の御勘気も解けて、上洛じょうらく御免のお沙汰さたがありましたとやら、またそのうちさぞかし色々と怪しげな物ごとが出来しゅったいいたすことでございませう。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
「——いかなることあるとも他言いたすべからず。大事出来しゅったい、一刻を急ぎそうろうあいだ、馬にて参るべし。 豆州」
「どうも驚いちまった。日本にこんな事件が出来しゅったいしようとは思わなかった。一体どうしたというのだろう。」
食堂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「今度は両陛下ともコロンバスに動かされて、その結果、新大陸発見という劃時代的かくじだいてきの事件が出来しゅったいしたのさ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
御徒目付からは、御徒組頭久下善兵衛くげぜんべえ、御徒目付土田半右衛門はんえもん菰田仁右衛門こもだにえもん、などが駈けつける。——殿中では忽ち、はちの巣を破ったような騒動が出来しゅったいした。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なにしろかようなへんじ変事出来しゅったいいたそうとはたれいちにんもゆめにもおもいつかなんだことでござります。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すでにそういう美術品要素が出来しゅったいした以上、今日ではそれは下らないものだが内容さえよく、そしてぴったりすれば、その描方でもあるいは生かす事が出来よう。
り候実はただ今すぐにても御面会致し親しく懇願致度いたしたき事件出来しゅったい候が何分意にかさず候故手紙にて申上候
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
わが子の師である伯円に逐一此を伝へたことが「天保六花撰」出来しゅったいの縁起に手記してゐる。
下谷練塀小路 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
ここを出て地獄茶屋でひと休みやすんでいると、只事ただごとならぬ叫び声が聞える。スワ何事の出来しゅったいと、四人一度に飛び出す。見れば一頭の悍馬かんば谷川へちて今や押し流されんず有様。
予、なにごとの出来しゅったいせしやと疑いながらただちに披封すれば、なんぞはからん、「父大病につき、ただちに帰宅せよ」と、親戚某より寄するところの電報なり。愕然がくぜん、大いに憂懼ゆうくす。
妖怪報告 (新字新仮名) / 井上円了(著)
折角の深い交際がおろそかになったり、恩義ある人に悪感を抱かせたり、又は大切の得意を失策しくじったりして、後悔ほぞむ共及ばぬような大事件が出来しゅったいするその最初の一刹那なのである。
謡曲黒白談 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その他何らレジームを攪乱するごとき事件がその間に出来しゅったいしなかったにせよ、藤原時代の有様が、そのままに引いて足利時代まで伝わるべきものではなく、外部からの影響がなくても
これは、ほんのたとえでございます。いかなる事態が出来しゅったいいたしましても、法皇を
読経の後、遺族、近親、参会者、築地小劇場員の焼香があって、当日出来しゅったいしたデスマスクが発表された。午後三時半法事を終って、ここに小山内薫先生の築地小劇場葬はつつがなく終了した。
小山内薫先生劇場葬公文 (新字新仮名) / 久保栄(著)
シカシこのままにして捨置けば将来何等どん傷心恨かなしい事が出来しゅったいするかも測られぬ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかる処また明朝も同様、大審院の方に止むを得ざる用件出来しゅったいいたしそうろう上、あなた様はじめ、アヴドーチャ・ロマーノヴナの親子兄弟、水入らずの御対面をお妨げ致すも心ぐるしく存じ候につき
が、ここに一つの難事が出来しゅったいした、それは雪が深くなるにつれて、年少組は川へ水をくみにゆくことができなくなったことである。ゴルドンは思案しあんにあまって、まず第一に工学博士に相談をした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
いったい何事が出来しゅったいしたのかと、うるさくそれを問い糺そうとした。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「重国が、一本出来しゅったいしてまいった。御気に召さば、御差料さしりょうに」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
しかしどんな事が出来しゅったいするにしても7750
一、ささゆき横町に美しき氷店出来しゅったいの事
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
あっぱれ出来しゅったいしたるものかな。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
「殿、大事出来しゅったい
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
前々から廃業したいという下心したごころがあったところへ、こんな騒ぎがまたもや出来しゅったいしたので、父の市兵衛はいよいよ見切りを付けまして
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かれらは大事出来しゅったいとみて、その中にいる人物をよそへ移すか、またはその場で片づけるつもりだろう。菅田平野は走りながら旅嚢と燧袋を投げだし
日日平安 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
今まで種々大事件が出来しゅったいいたしましても、なにごともお耳に入れず、無言の頑張り合いをつづけてきたのでございますが、明日あすこそは丹波を斬って
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
悪くそんな奴がはびこると、たちまち、能職が謡屋をかねるような事が出来しゅったいする。私がこのままで我を通せば、餓鬼、畜生と言われても、明日の舞台は天人だ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
十月には伊勢殿の御勘気も解けて、上洛じょうらく御免のお沙汰さたがありましたとやら、またそのうちさぞかし色々と怪しげな物ごとが出来しゅったいいたすことでございましょう。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
弁倉児など呼ばる(『皇立亜細亜アジア協会北支那部雑誌』二輯十一巻五九頁)、天復中隴右の米作大豊年で、刈ろうと思う内、稲穂が大半なくなり大饑饉出来しゅったいした。