兄君あにぎみ)” の例文
寐屋ねや燈火ともしひまたヽくかげもあはれさびしや丁字頭ちやうじがしらの、はなばれし香山家かやまけひめいま子爵ししやくおなはらに、双玉さうぎよくとなへは美色びしよくかちめしが、さりとて兄君あにぎみせきえず
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
右の手に持あらはれ出たる一人のをんな行先ゆくさき立塞たちふさがおのれ大惡だいあく無道ぶだうの吾助大恩有る主人と知りながら兄君あにぎみがいし岡山を立退のきし事定めて覺え有べし今爰にあひしは天のたまもの疾々とく/\勝負しようぶ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
兄君あにぎみやまひ重ければとて大阪へ帰り給ふ不幸の際にいましけれど何時いつも話多くなり申しさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
また松島海軍大佐まつしまかいぐんたいさ令妹れいまいなるかれ夫人ふじんにはまだ面會めんくわいはせぬが、兄君あにぎみ病床やまひ見舞みまはんがめに、暫時しばしでもその良君おつとわかれげ、いとけなたづさへて、浪風なみかぜあら萬里ばんりたびおもむくとは仲々なか/\殊勝しゆしようなる振舞ふるまひよと
馬廻うままはりに美男びなんきこえはれど、つき雲井くもゐちり六三ろくさなんとして此戀このこひなりたちけん、ゆめばかりなるちぎ兄君あにぎみにかヽりて、遠乘とほのり歸路かへりみち野末のずゑ茶店ちやてんをんなはらひて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
尋ぬると云も不審いぶかしそれは置て兄君あにぎみ喜内樣にも澤井の父樣にも御機嫌きげんよきか物堅いお生れながらお兄樣は早三十にも成給へば御内方でも迎へ給ひしか樣子は如何にと問懸とひかくれば友次郎ももろともにたえて久敷古郷こきやうの樣子少しも早く聞度と云れて忠八兎や云ん角や云んとむねの中一人くるしめ居たりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
六三ろくさいとまつたくより、こヽろむすぼほれてくることく、さて慈愛じあいふかき兄君あにぎみつみともはでさし置給おきたま勿体もつたいなさ、七万石ひちまんごくすゑうまれておやたまとも愛給めでたまひしに、かはらにおとる淫奔いたづらはづかしく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)