僧都そうず)” の例文
僧都そうずはこうした報告を受けて、不思議に思いながらもうれしかった。尼君の法事の北山の寺であった時も源氏は厚く布施ふせを贈った。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
えん優婆塞うばそくの流れを汲む豊前ぶぜん僧都そうずと自分から名乗って、あの辺では、信者も多く、えろう権式ぶっている修験者しゅげんじゃだそうでござります
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『宇治拾遺』に永超僧都そうずは魚なければ食事せず、在京久しき間魚食わず、弱って南都に下る途上、その弟子魚を乞い得てすすめた。
寂照は寂心恵心の間に挟まり、其他の碩徳せきとくにも参学して、学徳日に進んで衆僧に仰がれ依らるるに至り、幾干歳いくばくさいも経ないで僧都そうずになった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
硫黄いおうが島の僧都そうず一人、すがともづな切れまして、胸も苦しゅうなりましたに、貴女あなた、その時、フトお思いつきなされまして、いやとよ、一段の事とて、のう。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「都では僧都そうず御房ごぼう一人、そう云う神詣でもなさらないために、御残されになったと申して居ります。」
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
叡山えいざん西塔さいとうに実因僧都そうずという人がいたが、この人が無類の大力であった。ある日、宮中の御加持ごかじに行って、夜更よふけて退出すると、何かの手違いで、供の者が一人もいない。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
国守の恩人曇猛律師は僧都そうずにせられ、国守の姉をいたわった小萩は故郷へかえされた。安寿が亡きあとはねんごろにとむらわれ、また入水した沼のほとりには尼寺が立つことになった。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
有王 わしはみやこから来た者だが、(俊寛、都と聞いて驚いて有王を見る)この島に法勝寺ほっしょうじ執行しゅぎょう俊寛僧都そうずと申す方が十年前よりお渡りになっているはずだが、もしやご存じあるまいか。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
近江おうみの中将入道蓮浄れんじょう俗名成正なりまさ法勝寺執行ほっしょうじのしゅぎょう俊寛僧都そうず山城守基兼やましろのかみもとかね式部大輔雅綱しきぶのたいふまさつな、平判官康頼、宗判官信房そうはんがんのぶふさ新平判官資行しんへいはんがんすけゆき摂津国せっつのくに源氏多田蔵人行綱ただのくらんどゆきつなといった連中で、他に北面の武士が多かった。
小舟にて僧都そうず送るや春の水 蕪村
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
夫人のこの状態がまた苦労で、少納言は北山の僧都そうず祈祷きとうのことを頼んだ。北山では哀れな肉親の夫人のためと、源氏のために修法しゅほうをした。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
鰐淵寺わにぶちでら僧都そうず、心ある島武士。またかねてから宮方の成田、名和。そのほか、眼にみえぬあまたな味方が、いまぞと、ここをうながしておる」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金襴きんらん袈裟けさ、水晶の念珠ねんず、それから白い双の眉毛——一目見ただけでも、あめした功徳無量くどくむりょうの名を轟かせた、横川よかわ僧都そうずだと申す事は疑おうようもございません。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
崖づくりを急流で落ちます、大巌おおいわの向うの置石おきいしに、竹のといあやつって、添水そうず——僧都そうずを一つ掛けました。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
多武峰とうのみねの増賀上人、横川よかわ源信げんしん僧都そうず、皆いずれも当時の高僧で、しかも保胤には有縁うえんの人であったし、其他にも然るべき人で得度させて呉れる者は沢山有ったろうが
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
俊寛は、狂気のように、その教書を基康の手から奪い取って、血走る目を注いだけれども、そこには俊寛とも僧都そうずとも書いてはなかった。俊寛は、激昂のあまり、最初は使者をののしった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「——では僧都そうずいおりにあつまると申しても、歌、猿楽などいたして、半日を、風雅に遊ぼうというわけでもないですな」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かおるは山の延暦寺えんりゃくじに着いて、常のとおりに経巻と仏像の供養を営んだ。横川よかわの寺へは翌日行ったのであるが、僧都そうずは大将の親しい来駕らいがを喜んで迎えた。
源氏物語:56 夢の浮橋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
所詮は長尾ながお僧都そうずは申すまでもなく、その日御見えになっていらしった山の座主ざす仁和寺にんなじ僧正そうじょうも、現人神あらひとがみのような摩利信乃法師に、きもを御くじかれになったのでございましょう。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うりは作らぬが近まわりに番小屋も見えず、稲が無ければ山田僧都そうずもおわさぬ。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかもかみは宮廷よりしもは庶民までが尊崇そんそうしている恵心院僧都そうずの弟子であり、又僧都の使命を帯びているということもあり、彼の人柄も優にやさしかった大内記のひじり寂心の弟子であるということもあり
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「俊寛僧都そうずどのには、ましまさずや」
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それで源氏の君も多忙であった。北山の寺へも久しく見舞わなかったことを思って、ある日わざわざ使いを立てた。山からは僧都そうずの返事だけが来た。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その瓊子もよそながら、以後は鰐淵寺わにぶちでら僧都そうず庇護ひごの下にあるのであろう。そこで僧都頼源のたよりに託してこれをとどけてよこしたものにちがいない。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僧都そうず御房ごぼう! よく御無事でいらっしゃいました。わたしです! 有王ありおうです!」
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
森厳藍碧しんげんらんぺきなる琅玕殿裡ろうかんでんり黒影こくえいあり。——沖の僧都そうず
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
北山の僧都そうずがなくなっておしまいになったことは惜しいことだ。親戚しんせきとせずに言ってもりっぱな宗教家でしたがね
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
「たいへんです。いよいよ物険ものけわしく見えまする。護正院ノ僧都そうず猷全ゆうぜんそのほか、一ノ木戸の者どもこぞッて、六波羅方へ降参に出たとやら沙汰しております」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとその印を結んだ手のうちから、にわかに一道の白気はっき立上たちのぼって、それが隠々と中空なかぞらへたなびいたと思いますと、丁度僧都そうずかしらの真上に、宝蓋ほうがいをかざしたような一団のもやがたなびきました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
僧都そうずには、あらかじめ、叡山えいざんから書状を出しておいたことだし、慈円じえん僧正からも口添えがあったことなので
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僧都そうずも道理であるとうなずき、尊い心がけであることをほめなどするうちに日も暮れたため、中宿りに小野へ寄ることはふさわしい道順であると薫は思ったが
源氏物語:56 夢の浮橋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
僧都そうず御房ごぼう宗人むねとの一人に、おなりになったとか云う事ですが、——」
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
きつい気のする有名な僧都そうずとか、僧正とかいうような人は、また一方では多忙でもあるがために、無愛想ぶあいそうなふうを見せて、質問したいことも躊躇ちゅうちょされるものであるし
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
さきの使僧から託された——頼源僧都そうずから帝のお手許へ——なる油紙ゆし包みのヨリを無造作に解いてみたのだ。そんな行為を自身いやしむようなひるみなどはどこにもない。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宮は僧都そうずの所へも捜しにおやりになったが、姫君の行くえについては何も得る所がなかった。美しかった小女王の顔をお思い出しになって宮は悲しんでおいでになった。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
さらに、南岸坊の僧都そうず、道場坊の宥覚ゆうかくなども、千余の僧兵をひきいて行宮あんぐうをかためにかかった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
息子むすこ僧都そうずから、聞き苦しい、念仏よりほかのことをあなたはしないようになさいとしかられましてね。それじゃあ弾かせてもらわないでもいいと思って弾かないのですよ。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
女房たちもそうした色のものを縫い、それを着せる時には、思いがけぬ山里の光明とながめてきた人を悲しい尼の服で包むことになったと惜しがり、僧都そうずを恨みもし、そしりもした。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
僧都そうずは言い、その強がりの僧に抱かせて家の中へ運ばせるのを、弟子たちの中に
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
もし生きておりましたならば今申しました母にだけは逢いとうございます。僧都そうず様が手紙にお書きになりました人などには断然私はいないことにしてしまいたいと思うのでございます。
源氏物語:56 夢の浮橋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「これが、某僧都そうずがもう二年ほど引きこもっておられる坊でございます」
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大きな御祈願がこの人の手で多く行なわれたこともある僧都そうずがあった。
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
いろいろ祈祷きとうなどをさせていても効験しるしの見えない気がする。それでも祈祷はもう少し延ばすほうがいいね。効験をよく見せる僧がほしいものだ、何々僧都そうず夜居よいにしてあなたにつけておくのだった
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中宮は堅い御決心を兄宮へお告げになって、叡山えいざん座主ざすをお招きになって、授戒のことを仰せられた。伯父おじ君にあたる横川よかわ僧都そうずが帳中に参っておぐしをお切りする時に人々の啼泣ていきゅうの声が宮をうずめた。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)