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傷手
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いたで
ふりがな文庫
“
傷手
(
いたで
)” の例文
女のためにも重い
傷手
(
いたで
)
を負わせたあの騒動をお思いになると、積極的な御行動は取れないで院は忍んでおいでになったのであるが
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
神のごとき純なお千絵に、生涯の
傷手
(
いたで
)
を与えて去ることは、かの女を幸福にすべく起った初志をみずから裏切っていないだろうか。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは
傷手
(
いたで
)
に肉がもり上ってきているような感じだった。そしてひそかにほっとしたのだが、二三日たつと閑子はまたミネの部屋に入ってきた。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
前書
(
まえがき
)
には、「一人の男になりて」と書き、男のどちらかの心をいたわり、また、旅人みずからの心の
傷手
(
いたで
)
をうたうがような調べも含まれてあった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
傷手
(
いたで
)
にも屈せず起き上がって、浪人の腰へむしゃぶりついた。その武左衛門を蹴返すと、またもや一太刀あびせかけた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
そうして彼は幸福にも一日一日と日を送って行くうちに、もう殆んど、そうした良心の
傷手
(
いたで
)
を忘れかけていた。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
しかし
麗屋
(
れいおく
)
の市街にもかかわらず内容の空虚は殆んど収拾することのできない
傷手
(
いたで
)
を市民にあたえていた。
スポールティフな娼婦
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
その夜遅くまでのお前との息苦しい対話は、その翌朝突然私の肉体に現われた著しい変化と共に、私の老いかけた心にとっては最も大きな
傷手
(
いたで
)
を与えたのだった。
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
それは
永
(
なが
)
い涙の忍従と苦い苦い血とによってようよう皮をかぶせたばかりの深い
傷手
(
いたで
)
であった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
「こうした要求が男の心にどんな
傷手
(
いたで
)
を負わせるかということが、あなたに解りませんか」
ふみたば
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
しかし、この都にやや住み慣れて来ると、見るものから、聞くものから、また触れるものから、過去十余年間の一心の悩みや、生活の
傷手
(
いたで
)
が、一々、
抉
(
えぐ
)
り出され、また
癒
(
いや
)
されもした。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
千代之助は、あまりの驚きに
傷手
(
いたで
)
も忘れて、流るる血潮を押えるように、尼の手許を覗きました。幸い
剃刀
(
かみそり
)
は奪い取りましたが、此女は何をやり出すか、うっかり側へも寄れません。
百唇の譜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
英国も今度の大戦で、経済上の
傷手
(
いたで
)
がひどく、基礎方面の科学の研究には、戦後あまり金が出せない。しかし大した機械や設備を使わないで、非常にいい研究がぼつぼつ出てきている。
アラスカ通信
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
と云って、お美津を抱き起した正吉は、
傷手
(
いたで
)
を堪えながら裏口から外へ出た。
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
失恋の
傷手
(
いたで
)
に
悶々
(
もんもん
)
たる烏啼の奴は、今頃はやるせなさのあまり、君の心臓を串焼きなんかにして喰べてしまったかもしれないよ。とんでもないことだ、そんなことは安東に話してやれないな”
心臓盗難:烏啼天駆シリーズ・2
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
木の葉も
凋落
(
ちょうらく
)
する
寂寥
(
せきりょう
)
の秋が迫るにつれて
癒
(
いや
)
しがたき
傷手
(
いたで
)
に冷え冷えと風の沁むように何ともわからないながらも、幼心に行きて帰らぬもののうら悲しさを私はしみじみと知ったように思われる。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
友人が彼にいう——「おい、
今日
(
きょう
)
こそは君の顔つきから、悪霊がまったく退散してるじゃないか。」ベートーヴェンは答える——「僕の天使が訪ねて来てくれたんでね。」——心の
傷手
(
いたで
)
は深かった。
ベートーヴェンの生涯:02 ベートーヴェンの生涯
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
放埓
(
はうらつ
)
のわが悔に、初戀の清き
傷手
(
いたで
)
に
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
弦之丞の撃たれた箇所は、右胸部の上、腕のつけ根に寄った所で、一時、仆れたものの、急所ではなく、
起
(
た
)
てない程の
傷手
(
いたで
)
ではなかった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お
傷手
(
いたで
)
が新女御の宮で
癒
(
いや
)
されたともいえないであろうが、自然に昔は昔として忘れられていくようになり、帝にまた楽しい御生活がかえってきた。
源氏物語:01 桐壺
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
と云いながら権九郎はヒョロヒョロ立ち上がったが、肩の
傷手
(
いたで
)
に堪えかねたものか、そのままドシンと
尻餅
(
しりもち
)
をついた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それは永い涙の忍従と苦がい/\血とによつて
漸々
(
やう/\
)
皮を
被
(
か
)
ぶせた許りの深い
傷手
(
いたで
)
であつた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
ミネたちはできる限りの思いやりで、その
傷手
(
いたで
)
にふれぬよう心をつかった。しかし、閑子のくらいかげは、みんなに映って、のんきで明るかった家の中は何ともいえぬ重い空気がただよった。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
菜穂子の結婚から深い心の
傷手
(
いたで
)
を負うたように見えた彼女の母の、三村夫人が突然狭心症で亡くなってしまうと、急に菜穂子は自分の結婚生活がこれまでのような
落
(
お
)
ち
著
(
つ
)
きを失い出したのを感じた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「不覚どころではない、これや、案外な大罪人かも知れぬぞ。
暫時
(
ざんじ
)
傷手
(
いたで
)
をこらえて、召捕った時の模様を、話して聞かせい」
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
軽佻
(
けいちょう
)
至極なことである、この人にうとまれ、捨てられてしまった時は、どんなに深い
傷手
(
いたで
)
を心に受けることであろうなどと煩悶をしている様子も
源氏物語:53 浮舟
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「おおそうか。
忝
(
かたじ
)
けない!」老人はムックリ起き上がろうとしたが、急所の
傷手
(
いたで
)
に身動きもならぬ。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
信頼しきっていた
許婚
(
いいなずけ
)
の又八から、ふいに受けた一片の去り状は、又八が戦場で死んだと聞くより大きな心の
傷手
(
いたで
)
であった。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それはとにかく
龍太郎
(
りゅうたろう
)
のすがたが、このなかに見えぬようであるが、どこぞで、
傷手
(
いたで
)
でもうけているのではあるまいか」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もっとも大きな
傷手
(
いたで
)
は、孫権の大将
凌操
(
りょうそう
)
という剛勇な将軍が、深入りして、敵の包囲に遭い、黄祖の
麾下
(
きか
)
甘寧
(
かんねい
)
の矢にあたって戦死したことだった。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その上、下り松へ行く途中、ああして又八から棄てられてしまったことも、さすがに老いの心へ大きな
傷手
(
いたで
)
となり、体にも
利
(
き
)
いていたに相違ない。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また
不愍
(
ふびん
)
な
傷手
(
いたで
)
を負っている。なぐさめてやろう。世間の男性は、そう色情の鬼ばかりでないことも知らせてやろう。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まだどこか、体の
傷手
(
いたで
)
が、
癒
(
い
)
え切っていないような彼ではあったが、もうその影は、夕闇の往来へ、
紛
(
まぎ
)
れこんでいた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
家康としては、これが、
寿命
(
じゅみょう
)
の毒になるほどな、強い心の
傷手
(
いたで
)
であったことは、その、常にない
容子
(
ようす
)
でも察しられた。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この先——この
傷手
(
いたで
)
を持った十七の
処女
(
おとめ
)
は——親も身寄りもない
孤児
(
みなしご
)
は——どうして生き、どうして人なみな女の生きがいを、夢みて行かれるだろうか。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
突然の損失と希望から抛り出された
傷手
(
いたで
)
に、身がふるえ、血が
憤
(
いきどお
)
って、茫然と、空地の人群れを見つめていた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
といって白衣の影は、肩の
傷手
(
いたで
)
をおさえたまま、天蓋をあおむけにして、よろよろと石畳の上へぶっ仆れた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
安政は、足を投げ出して、茫然と空を見ており、末弟の七右衛門は、どこかの
傷手
(
いたで
)
からポタポタと血しおが膝に
溜
(
たま
)
るのも知らずに、首を垂れて居眠っていた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
床下からではあるが、十分、
居合
(
いあい
)
の
肱
(
ひじ
)
が延びて行ったので、
鞘
(
さや
)
を脱した
皎刀
(
こうとう
)
は、刃を横にして銀五郎の片足——
浴衣
(
ゆかた
)
の上から返り血の飛ぶほどな
傷手
(
いたで
)
を与えた。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
武蔵は、もいちど、ひょろ長い松の
生
(
は
)
えている塚を振向いて、清十郎のために、自分の与えた木剣の
傷手
(
いたで
)
が、はやく
癒
(
い
)
えてくれればよいがと、心のなかで祈った。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こっちも対抗しましたが、奴に立ち
対
(
むか
)
われては当る者なく、私もまたこの通り、みじめな
傷手
(
いたで
)
を受けてしまい、どうにも無念ですが、正直いって歯が立ちませぬ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
膝の
傷手
(
いたで
)
を、噛みこらえて、まッしぐらに駈け出した新九郎の
鬢
(
びん
)
の
毛
(
け
)
は、風を
衝
(
つ
)
いて、後ろへ流れる。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「父上の
傷手
(
いたで
)
もややよくなりましたゆえ、ご当家のお兄上さまに、お礼を申し上げに来ております」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
長可
(
ながよし
)
が、功にはやって、小牧の
敵塁
(
てきるい
)
へ、奇襲をしかけたのが、
過
(
あやま
)
ちの
因
(
もと
)
で、まだ
総帥
(
そうすい
)
の秀吉が、この大決戦場へ、着陣もしないうちに、おびただしい
序戦
(
じょせん
)
の
傷手
(
いたで
)
を
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遠く陣を退いて、さて、味方の損害を
糺
(
ただ
)
してみると、予想外な
傷手
(
いたで
)
を
蒙
(
こうむ
)
っていたことが分った。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
秀吉としては、蟹江、大野、また附近の海岸線など、取れば得、失敗しても、
傷手
(
いたで
)
はない。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ああ、さすが
叡智
(
えいち
)
の殿の御眼も、きょうに限って、なぜかそのように曇らせ給うておらるるか。——きょうわが全軍にうけた
傷手
(
いたで
)
は、討死の者、尠なくも三千人は
降
(
くだ
)
りませぬ。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
傷手
(
いたで
)
は軽い、
多寡
(
たか
)
が右手一本ではないか。左の手を振って、歩けば歩けるにちがいない。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
処女
(
おとめ
)
のほこりに消えようもない
烙印
(
やきいん
)
を与えられた
傷手
(
いたで
)
と——それに
伴
(
ともの
)
うて起るさまざまな精神的また生理上の動揺というものは、そう三日や四日で、
易々
(
やすやす
)
と
癒
(
い
)
えるものではない。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
林冲
(
りんちゅう
)
。よく言ってくれた。しかしこの
敗
(
やぶ
)
れは
梁山泊
(
りょうざんぱく
)
はじめての
傷手
(
いたで
)
だ。みなにすまん」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
傷
常用漢字
小6
部首:⼈
13画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“傷”で始まる語句
傷
傷痕
傷負
傷々
傷口
傷寒
傷心
傷所
傷痍
傷寒論