雄鶏おんどり)” の例文
旧字:雄鷄
そんな時には彼女は自分の身を、鶏小屋に雄鶏おんどりがいないとやはり夜っぴて眠らずに心配しつづける雌鶏めんどりにひきくらべてみるのだった。
可愛い女 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それは法則の通り昨日きのうこしらえておいたスープの中へ二、三百目位な雄鶏おんどりを丸のまま入れて塩をホンの少し加えて一時間ばかり湯煮ゆでる。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
その側には、トサカの美しい、白い雄鶏おんどりが一羽と、灰色な雌鶏めんどりが三羽ばかりあそんでいたが、やがてこれも裏の林の中へ隠れてしまった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのあざは、彼のからだが或る方向になったときにかぎり、雄鶏おんどりのシルエットに見えた。僕は彼のことを、これからオンドリと呼ぼう。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
金持かねもちは、かごのなかはいっているにわとりました。それは、ひくい、ごまいろの二雌鶏めんどりと、一のあまりひんのよくない雄鶏おんどりでありました。
金持ちと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
十年前に、闇夜と労苦とのなかでオリヴィエは——このゴールのあわれな小さな雄鶏おんどりは——その弱々しい歌で、遠い夜明けを告げたのだった。
毎朝、泊り木から飛び降りると、雄鶏おんどりは「もう一つの」がやっぱりあそこにいるかどうかを見た——「もう一つの」はやっぱりそこにいる。
まず、雄鶏おんどりの方から初めました(木彫りの順序は鑿打ちで形を拵え、鑿と小刀で荒彫り、それから小作り、仕上げとなる)。
けれども近頃ではそんな姿を一度も甲野に見せないようになった。それは彼が羽根を抜いた雄鶏おんどりに近い彼の体をじている為に違いなかった。
玄鶴山房 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ええ、牝鶏があしたなら構いませんが、こうやってつむりを集めているのは、柳屋の雄鶏おんどり宵啼よいなきをするからでございますぜ。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雌鶏めんどりのことばに、雄鶏おんどりも羽ばたきした。——袁家えんけから申しこんできた「共栄の福利を永久にわかたん」との辞令が、真実のように思い出された。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同じようなわけで、後に教授が道化役になって雄鶏おんどりの鳴き声をするのでも、映画のほうではちゃんとしたそれだけの因縁が明らかにされている。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
身形みなりが別に派手でも何でもないが、彼女を見付け出すのは鶏群中の雄鶏おんどりを見出す程容易であった。彼女の手には反物たんものらしい紙包の買物が既に抱かれて居った。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
ある男が羽をむしった雄鶏おんどりを示してプラトンの「人間」だといったという話を聞いて、彼は膝がちがった方向にまがっているのが重要な相違だと思うといった。
この語は coq から来ていて、一羽の雄鶏おんどりが数羽の牝鶏めんどりに取巻かれていることを条件として展開する光景に関するものである。すなわち「媚態的びたいてき」を意味する。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
納屋の入口の前では、勇ましい雄鶏おんどりが気取って歩き、あっぱれな亭主か、勇士か、紳士のようだった。
十羽ほどの鶏を籠に入れて、売りに来た者がありまして、雌鶏めんどり雄鶏おんどりのひとつがいを買いましたが、雌鶏の方は夏の末にちてしまいまして、おすの方だけが残りました。
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大きな雄鶏おんどりである。総身の羽が赤褐色で、くび柑子こうじ色の領巻くびまきがあって、黒い尾を長く垂れている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
大きなプリマウス種の雄鶏おんどりが、鶏舎の外で死んで居た。羽毛が其処そこ此処ここにちらかって居る。昨夜鶏舎の戸をしめる時あやまって雄鶏をしめ出したので、夜中いたちおそわれたのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
見事なトサカを持ったレグホン種の真白い雄鶏おんどりが、納屋から飛び出して、ときを作った。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
からすきつね問答もんどう驢馬ろばと小犬の問答、雄鶏おんどり雌鶏めんどりの問答などをのこらず知っています。動物どうぶつむかしは口をきいたということをひとからいても、ローズ・ブノワさんはちっともおどろきません。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
雄鶏おんどりがときをつくる時のように、上を見上げて意気揚々としてダンスを踏みました。
オカアサン (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
林のかなたでは高く羽ばたきをして雄鶏おんどりが時をつくる、それが米倉の壁や杉の森や林や藪にこもって、ほがらかに聞こえる。堤の上にも家鶏にわとりの群が幾組となく桜の陰などに遊んでいる。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
とは知りながらも、雄鶏おんどりはときどき何かしゃくにさわることがあると見えます。
昧暗まいあんから暁へ移った庭へ、雄鶏おんどりが先へ飛び降りて、ククと雌鶏めんどりを呼んだ。
父の俤 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
鶏の料理は是非ぜひとも鶏の割き方を覚えなければなりません。今あの料理人が三百目ほどの雄鶏おんどり俎板まないたの上へ仰向あおむけに置きました。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
隼はためらうように、じっと同じ高さのところを飛んでいる。恐らく、彼は鐘楼の雄鶏おんどりねらっているだけなのかも知れない。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
えさを拾う雄鶏おんどりの役目と、羽翅はねをひろげてひなを隠す母鶏ははどりの役目とを兼ねなければならなかったような私であったから。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まだら牝牛めうしが牧場の草を食べていて、そのゆるやかな鳴き声は、うつらうつらしてる田舎の静けさを満たしていた。鋭い声の雄鶏おんどりが農家から農家へ答え合っていた。
そして、金網かなあみったかごのなかをのぞきますと、なるほど、くびながくてあかい、たかい、けづめのするどくとがった雄鶏おんどりと、一のそれよりややからだちいさい雌鶏めんどりがいました。
金持ちと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまや、雄鶏おんどりも、雌鶏めんどりも、七面鳥、鵞鳥がちょう家鴨あひるに加えて、牛や羊とともどもに、みな死なねばならぬ。十二日間は、大ぜいの人が少しばかりの食物ではすまさないのだ。
駅馬車 (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
井戸のそばの空地あきちには、五、六羽のとりが午後の日を浴びながら遊んでいたが、その雄鶏おんどりの一羽はどうしたのか俄かに全身の毛をさか立てて、店口の土間へ飛び込んで来たかと見る間もなく
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それはちょうど雄鶏おんどりくびの羽根を逆立さかだてるのに似たものだった。
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
先ず若い雄鶏おんどりの二百五十目位なものを買ってその肉を肉挽器械にくひききかいで挽けば上等ですし、器械がなければ細かく叩いてその中へ大きな玉葱を一つ位山葵卸わさびおろしでり卸して
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
あるものは、頭の中に鉛の弾丸たまを撃ち込まれる。ほかのものから離れる。狂おしく、空のほうに舞い上る。樹よりも高く、鐘楼の雄鶏おんどりよりも高く、太陽を目がけて舞い上るのである。
雄鶏おんどりときの声が、深く寝しずまった村に、ときおり聞えて、「羽のはえた奥方たちに夜半をしらせる」のだが、ひとびとは聖なる祭日の近づいたことを告げているのだと思うのである。
雄鶏おんどり牝鶏めんどりと遊ぶところへ、釣針つりばりをくれ、鳥の咽喉のどに引掛けて釣取るという。犬を盗むものもある。それは黒砂糖でよその家の犬を呼び出し、殺して煮て食い、皮は張付けて敷物に造るとか。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
或るものは、頭の中に鉛の弾丸たまを撃ち込まれる。ほかのものから離れる。狂おしく、空の方に舞い上がる。樹よりも高く、鐘楼の雄鶏おんどりよりも高く、太陽を目がけて舞い上がるのである。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
それから鳥のシタフェというのは若い雄鶏おんどりのおなかの中をくり抜いて蒸した栗をバターと塩とお砂糖とでえてその中へよく詰め込んで鶏の皮の切口を木綿糸で縫ってテンパン皿へ入れる。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
雛鳥ひなどりのためにえさを探す雄鶏おんどりであるばかりでなく、同時にまたあらゆる危害から幼いものを護ろうとして一寸ちょっとした物音にも羽翅はがいをひろげようとする母鶏の役目までも一身に引受けねばならなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その棒には、おまけに、節くれや、苔や、古い雄鶏おんどりのように蹴爪けづめまでついていた。
雄鶏おんどりCoqs
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)