針箱はりばこ)” の例文
よっちゃんは、なにをおもったか、おかあさんの針箱はりばこをふみだいにして、それへがって、時計とけいしろかお不思議ふしぎそうにながめていたのです。
時計とよっちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
文庫ぶんこのなかをさがしてもなかつた。鏡台きやうだいにも針箱はりばこにも箪笥たんす抽斗ひきだしにもなかつた。大方おほかた焼棄やきすてるか如何どうかしたのであらう。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
えゝ、決してね。私たちは何んでも好きなことが出來ましたわ——机の中だの針箱はりばこだのを引掻き𢌞したり、抽斗ひきだし
やがて出窓の管簾くだすだれなかいた下で、はらンばひに成つたが、午飯おひるの済んだあと眠気ねむけがさして、くるりとひとツ廻つて、姉の針箱はりばこの方をつむりにすると、足を投げて仰向あおむきになつた。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かゝさんれをつても御座ござんすかとたづねて、針箱はりばこ引出ひきだしから反仙ゆふぜんちりめんのはしをつかみし、庭下駄にはげたはくももどかしきやうに、でゝ縁先えんさき洋傘かうもりさすよりはや
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
針箱はりばこ糸屑いとくづうへやうまたいでちやふすまけると、すぐ座敷ざしきである。みなみ玄關げんくわんふさがれてゐるので、あたりの障子しやうじが、日向ひなたからきふ這入はいつてひとみには、うそさむうつつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
五六にちつて勘次かんじ針立はりだて針箱はりばことをつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
よっちゃんは、ちゃだんすのまえって、時計とけい見上みあげていましたが、そのうちに、おかあさんの針箱はりばこをひきずってまいりました。
時計とよっちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはたゞかあちやん/\てツて母様おつかさんかたをつかまいたり、ひざにのつかつたり、針箱はりばこ引出ひきだしぜかへしたり、ものさしをまはしてたり、縫裁おしごと衣服きもの天窓あたまからかぶつてたり
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
祖母ばあさんは、あかりのした針箱はりばこをおき、お仕事しごとをなさっていました。そのうち、れから行李こうりし、なにか、おさがしになりました。
つづれさせ (新字新仮名) / 小川未明(著)
よっちゃんは、針箱はりばこからおりると、いそいでおかあさんのいなさるところへはしってきました。「お菓子かし……ねえ、おかあちゃん、お菓子かしくれない。」
時計とよっちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
まずかべぎわには、いたてかけられてあり、そのしたのところに、乳母車うばぐるまいてあり、そのよこつくえがあり、そのばち・針箱はりばこびんというように、いろいろな道具類どうぐるいならべられてありました。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)