表情ひょうじょう)” の例文
親方はどうどうとした様子であった、かれはれいの美しいしらが頭をまっすぐに上げて、その顔には憤慨ふんがい威圧いあつ表情ひょうじょうがうかべていた。
おみちはむすめのような顔いろでまだぼんやりしたようにすわっていた。それは嘉吉がおみちを知ってからわずかに二だけ見た表情ひょうじょうであった。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「あの空気銃くうきじゅうって、とりってあるいたおとこは、どこかへいったというはなしだね。」と、かおあかるい表情ひょうじょうをただよわしながら、いいました。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、博士はくしはくらい表情ひょうじょうでこたえた。そのうち透明人間とうめいにんげんは、にわかにうめき声をあげ、からだをえびのようにまげ、頭をかかえこんだ。
うまほうでもまたわたくしによく馴染なじんで、わたくし姿すがたえようものなら、さもうれしいとった表情ひょうじょうをして、あのおおきなからだをすりけてるのでした。
灰色ガンは、見るからにかわいらしい、ちっちゃな頭をしています。はね毛は、しゅすのようにやわらかで、目には、おだやかな、うったえるような表情ひょうじょうをたたえています。
しかしわかあまさんは、眼鏡めがねをかけたかお真剣しんけん表情ひょうじょうをうかべて、「いいえ、自分じぶんからだかして、爆弾ばくだんとなってしまうかねですから、どうしても供養くようをしてやりとうござんす。」
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
子供こどもきなおはつ相変あいかわらず近所きんじょいえから金之助きんのすけさんをいてた。頑是がんぜない子供こどもは、以前いぜんにもまさる可愛かわいげな表情ひょうじょうせて、袖子そでこかたにすがったり、そのあとったりした。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、かれの顔いッぱいに、意外いがいなよろこびにぶつかッた表情ひょうじょうわらいかがやいて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの目にきみょうな表情ひょうじょうを持った女の子は——名前をリーズとばれていたが、わたしの向こうにこしをかけていた。
老人はまゆせてしばらく群青ぐんじょういろにまった夕ぞらを見た。それからじつに不思議ふしぎ表情ひょうじょうをしてわらった。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
博士はくしはきっとした表情ひょうじょうになり、ゆだんなくあたりを見ながら、しずかに部屋へやにはいっていった。
には平袖ひらそで白衣びゃくいて、おびまえむすび、なにやら見覚みおぼえの天人てんにんらしい姿すがた、そしてんともいえぬ威厳いげん温情おんじょうとのそなわった、神々こうごうしい表情ひょうじょう凝乎じっわたくしつめてられます。
おうむがえしにそういって、少女たちは急にかなしい表情ひょうじょうにくもった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの女は絶望ぜつぼう表情ひょうじょうで、自分のうちのけ落ちるのを目の前に見ている人のように、ひょうのるのをながめていた。
あちらにゆる遠景えんけい丁度ちょうど油壺あぶらつぼ附近ふきんりますので、うっかり話頭はなし籠城時代ろうじょうじだいことむかいますと、良人おっと様子ようすきゅうしずんで、さも口惜くやしいとったような表情ひょうじょううかべるのでした。
はげしい歓喜かんき表情ひょうじょうのありったけを見せて、かべに向かってとびかかっていた。
かれは金茶色のかみをしていた。顔色は青白くて、すきとおった皮膚ひふのもとにひたい青筋あおすじすら見えるほどであった。その顔つきには病人の子どもらしい、おとなしやかな、悲しそうな表情ひょうじょうがあった。
そんなふうなからだつきでけっしてりっぱとは言えなかったが、その顔にはしかしきみょうに人をひきつけるものがあった。悲しみとやさしみの表情ひょうじょう、そしてそれから……たよりなげな表情であった。