薩張さつぱり)” の例文
『まだ。今日か明日帰るさうだ。吉野さんがゐないと俺は薩張さつぱり詰らないから、今日は莫迦に暑いけれども飛出して来たんだ。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ろよ、近頃ちかごろ薩張さつぱりてくんねえが、れことにでもつたんぢやねえかなんてつから」とみせ女房にようばう戯談ぜうだんまじへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あいちやんはなになんだか薩張さつぱり道理わけわからず、『長靴ながぐつにもなれは半靴はんぐつにもなる!』と不審いぶかしげな調子てうし繰返くりかへしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かゝる事は円朝わたくし薩張さつぱりぞんぜずにりましたが、談洲楼焉馬だんしゆうろうえんばしたゝめた文によつ承知しようちいたしました。其文そのぶん
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
綺麗薩張さつぱり諦めたよ。本人から後腐れないやうな挨拶をされちや、男の方から未練を言ふ筋はあるまい。
やがて老師らうしあらはれた。たゝみ見詰みつめてゐた宗助そうすけには、かれ何處どことほつて、何處どこから此所こゝたか薩張さつぱりわからなかつた。たゞかれはらつて曲彔きよくろく重々おも/\しい姿すがたた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
瀬川君に比べると、勝るとも劣ることは有るまいといふ積りだ。一体瀬川君は何処が好いんでせう。どうして彼様あんな教師に生徒が大騒ぎをするんだか——私なんかには薩張さつぱり解らん。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
羽織はおりをたゝんでふところへんで、からずねの尻端折しりはしよりが、一層いつそう薩張さつぱりでよからうとおもつたが、女房にようぼう産氣さんけづいて産婆さんばのとこへかけすのではない。今日けふ日日新聞社にち/\しんぶんしや社用しやようた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
せはしく督促すれば出さぬこともないが、出て來た子供は中途半端から聞くのだから教師の言ふことが薩張さつぱり解らない。面白くもない。教師の方でも授業が不統一になつて誠に困る。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『おまへ薩張さつぱりなにらないね』とつて公爵夫人こうしやくふじんは、『それは眞個ほんとうの、ことなんです』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
もつとも、我輩は士族だから、一反歩は何坪あるのか、一つかに何斗の年貢を納めるのか、一升まきで何俵のもみが取れるのか、一体ねんに肥料がの位るものか、其様そんなことは薩張さつぱり解らん。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なるほど芸妓げいしやのおぢうさんだ、おめえ虎列剌これらで死んだのだ、これはどうも……此方こつちてから虎列剌これらはう薩張さつぱりよいかね、しかし並んで歩くのはいやだ、ぼく地獄ぢごくくのは困るね、極楽ごくらくきたいが
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
勘定かんぢやうにやんねえなどうも、近頃ちかごろやうねえよ文久錢ぶんきうせんだの青錢あをせんだのつちうのが薩張さつぱりなくなつちやつてな、それから何處どこつてもかうしてくんだ」商人あきんどがぼてざるから燐寸マツチさうとすると
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「見掛けさへすれば、有無を言はさずつかまへるが、薩張さつぱり見掛けない、——尤も、下女のお近は、姿は變つて居たが、あの女らしいのが、ウロウロして居るのを見たやうな氣がすると言つて居たよ」
忙しく督促すれば出さぬこともないが、出て来た子供は中途半端から聞くのだから、教師の言ふことが薩張さつぱり解らない。面白くもない。教師の方でも授業が不統一になつて誠に困る。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
以前はく吾輩のうちへもやつて来て呉れたツけが、此節はもう薩張さつぱり寄付かない。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「親分、あつしには薩張さつぱりわからねえ、あれは一體どうした事で?」
『いくら見てもありませんの。役場にも松三郎と届けた筈だつて言ひますし……』と孝子はまた初めから帳簿を繰つて、『通知書を持つて来ないもんですから、薩張さつぱり分りませんの。』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
何んなに此の世の中が薩張さつぱりするだらうとまで思ふ事がある樣になつた。
硝子窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)