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荒涼
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こうりょう
ふりがな文庫
“
荒涼
(
こうりょう
)” の例文
満月の夜だったことをハッキリと
後悔
(
こうかい
)
しました。せめて月が無ければ、こんなにまで
荒涼
(
こうりょう
)
たる
風光
(
ふうこう
)
に
戦慄
(
せんりつ
)
することはなかったでしょう。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
賑
(
にぎ
)
やかで
面白
(
おもしろ
)
そうな海水浴場のほうは素通りにして、
荒涼
(
こうりょう
)
とした砂っ原に降りると、大学生は上原の腕をとって、
浪打際
(
なみうちぎわ
)
のほうへゆきます。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
そこは
荒涼
(
こうりょう
)
としていた。なぎさと最初の長い砂州とをへだてている、広い浅い水の上には、さざなみのおののきが、前からうしろへ走っていた。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
ああ、
荒涼
(
こうりょう
)
。四畳半。その畳の表は真黒く光り、波の如く高低があり、
縁
(
へり
)
なんてその
痕跡
(
こんせき
)
をさえとどめていない。
グッド・バイ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
山
(
やま
)
がはじめて、
地上
(
ちじょう
)
に
生
(
う
)
まれたとき、あたりは、
荒涼
(
こうりょう
)
として、なにも、
目
(
め
)
にとまるものがなかったのです。
うずめられた鏡
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
なるほどと蕭照はいやが上にも
荒涼
(
こうりょう
)
たる感を
抱
(
いだ
)
かせられ、更に数日を
隣県
(
りんけん
)
の方へあてなくあるいていた。
人間山水図巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
荒涼
(
こうりょう
)
たる心の中、さすらい尽した魂に射し込む夕焼けの色は、西の空に
故郷
(
ふるさと
)
ありと思う身にとって、死んでその安楽の故郷に帰れと教えぬばかりの色でありました。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私たちは途中からそれらのアカシアの間をくぐり抜けて、丁度サナトリウムの裏手にあたる、一面に
葦
(
よし
)
の這っている、いくぶん
荒涼
(
こうりょう
)
とした感じのする大きな空地へ出た。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
鬼界
(
きかい
)
が島の海岸。
荒涼
(
こうりょう
)
とした
砂浜
(
すなはま
)
。ところどころに
芦荻
(
ろてき
)
など
乏
(
とぼ
)
しく
生
(
お
)
ゆ。向こうは
渺茫
(
びょうぼう
)
たる
薩摩潟
(
さつまがた
)
。左手はるかに
峡湾
(
きょうわん
)
をへだてて
空際
(
くうさい
)
に
硫黄
(
いおう
)
が
嶽
(
たけ
)
そびゆ。
頂
(
いただき
)
より煙をふく。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
雲と雨との
隙間
(
すきま
)
なく連続した広い空間が、津田の視覚をいっぱいに
冒
(
おか
)
した時、彼は
荒涼
(
こうりょう
)
なる車外の景色と、その反対に心持よく設備の行き届いた車内の愉快とを思い
較
(
くら
)
べた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし
陸奥
(
みちのく
)
ゆえに、夏草の上を
掠
(
かす
)
めて夕陽を縫いながら吹き渡る風には、すでに
荒涼
(
こうりょう
)
として秋の心がありました。——背に吹くや五十四郡の秋の風、と、のちの人に
詠
(
よ
)
まれた、その秋の風です。
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
やはり艇長の役を引うけた蜂谷学士はミドリ嬢と窓に顔をならべて、
荒涼
(
こうりょう
)
たる山岳地帯のうちつづく月世界に
暇乞
(
いとまごい
)
をした。
月世界探険記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だから洛内は
荒涼
(
こうりょう
)
だが、洛外へ行くほど逆に人さわがしい変則な奇景をいまは呈している。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼
(
かれ
)
は、
帰
(
かえ
)
りに、もう一
度
(
ど
)
空
(
あ
)
き
地
(
ち
)
へ
立
(
た
)
ち
寄
(
よ
)
ってみました。
先刻
(
さっき
)
たこを
上
(
あ
)
げていた
子供
(
こども
)
たちは、どこへいったか、
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えなかったのです。
寒
(
さむ
)
い
風
(
かぜ
)
が、
荒涼
(
こうりょう
)
とした
広場
(
ひろば
)
を
吹
(
ふ
)
いていました。
とびよ鳴け
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
岩多き
荒涼
(
こうりょう
)
たる
浜辺
(
はまべ
)
、第二幕より七年後の晩秋。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
石段の上に、玄関の扉が開け放しになっていて、その奥には電灯が一つ、
荒涼
(
こうりょう
)
たる光を投げていた。しかし人影はない。
人造人間事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
坂の途中から正成の向いた方へはいってゆくと、そこには旧千早城の
柵
(
さく
)
やら矢倉が朽ち傾いていて、いまは人もなき
砦
(
とりで
)
の跡の
荒涼
(
こうりょう
)
が、
廃墟
(
はいきょ
)
の石やツル草と共に足へつまずくばかりだった。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雑沓
(
ざっとう
)
の
巷
(
ちまた
)
は、五分と経たぬ間に、
無人郷
(
ノーマンズ・ランド
)
に変ってしまった。その
荒涼
(
こうりょう
)
たる光景は、関東大震災の夜の比ではなかった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
孫子
(
そんし
)
四軍の法を
整々
(
せいせい
)
とふんだ小幡民部が
軍配
(
ぐんばい
)
ぶり、さだめしみごとであろうが、いまは
荒涼
(
こうりょう
)
たる星あかり、小屋の屋根から小手をかざしてみた
燕作
(
えんさく
)
にも、ただその殺気しか感じられなかった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もっともその土間には、少年の背がかくれるほどの
丈
(
たけ
)
の長い
雑草
(
ざっそう
)
がおいしげっていて、
荒涼
(
こうりょう
)
たる光景を
呈
(
てい
)
していた。
骸骨館
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
関東とは、いうまでもなく、現下、足利
直義
(
ただよし
)
のいる鎌倉の府である。——すでに冬も
荒涼
(
こうりょう
)
な十一月十五日——尊氏の一族細川
顕氏
(
あきうじ
)
が警固のもとに、大塔ノ宮は、あずまの空へ
押送
(
おうそう
)
されて行った。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二つの
屍
(
しかばね
)
を
埋
(
うず
)
めるのは、どの雲のあたりであろうかなどと、「火の玉」少尉もあまりの
荒涼
(
こうりょう
)
たる天上の風景に、しばし感傷の中におちこんだのであった。
空中漂流一週間
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
神馬小屋
(
しんめごや
)
へ
飛
(
と
)
びこんで、馬のお
尻
(
しり
)
にかくれるもの、さては
韋駄天
(
いだてん
)
と
逃
(
に
)
げちる者など——いまが今までの
散華舞踊
(
さんげぶよう
)
は、一しゅんのまにこの
我武者
(
がむしゃ
)
のろうぜきで
荒涼
(
こうりょう
)
たるありさまと
化
(
か
)
してしまった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのときの
荒涼
(
こうりょう
)
たる光景を今胸に描いてみると、
頭脳
(
あたま
)
がじりじりと
縮
(
ちぢ
)
まって、気が変になりそうになる。
人造物語
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
見るにたえない焼け跡のさまが、
荒涼
(
こうりょう
)
として彼を迎えたのみである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二つの浮船の行手間近かに聳え立つは
荒涼
(
こうりょう
)
として死の国の
城壁
(
じょうへき
)
かと思わるる
月陰
(
げついん
)
の地表である。
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
陸
(
おか
)
をみれば、
泊
(
とまり
)
、
八幡
(
やわた
)
、
白子
(
しらこ
)
の
在所
(
ざいしょ
)
在所、いずれをみても
荒涼
(
こうりょう
)
たる
焼
(
や
)
け
原
(
はら
)
と化して、あわれ、
並木
(
なみき
)
のおちこちには、にげる途中でなげすてた
在家
(
ざいか
)
の人の
家財荷物
(
かざいにもつ
)
が、うらめしげに散乱して、ここにも
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
艇は速度をおとし、静かに
螺旋
(
らせん
)
を
描
(
えが
)
きながら、
荒涼
(
こうりょう
)
たる
月世界
(
つきのせかい
)
に向って
舞
(
ま
)
いおりていった。
月世界探険記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そしていつか、天地の
荒涼
(
こうりょう
)
は、血の秋だった。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
進少年の発した
愕
(
おどろ
)
きの言葉に、一行ははっとして、
荒涼
(
こうりょう
)
たる砂漠の上に足を
停
(
とど
)
めた。
月世界探険記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
荒
常用漢字
中学
部首:⾋
9画
涼
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
“荒涼”で始まる語句
荒涼寂寞
荒涼落莫