荒々あら/\)” の例文
こぶし荒々あら/\しくたゝくと、なかから制服せいふくけた、圓顏まるがほかはづのやうにおほきいをしたモ一人ひとり歩兵ほへいひらかれました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
丘の荒々あら/\しい線が表はす魅力に打たれた強い感じと、彼が我が家と呼んでゐるくろずんだ屋根と灰白の壁とに湧いて來る愛着を口にしたことがあつた。
言ひ捨てて、ふすま立切たてきり、疊觸たゝみざはりはも荒々あら/\しく、ツと奧に入りし左衞門。跡見送らんともせず、時頼は兩手をはたとつきて、兩眼の涙さながら雨の如し。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
よめになんどおもひもらぬことなりことばかはすもいまはしきに疾々とく/\かへらずやおかへりなされエヽなにをうぢ/\老婆ばあさま其處そこめなさいとことばづかひも荒々あら/\しくいかりの面色めんしよくすさまじきを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
むすびし者なりなんぢ當所たうしよとまりしは運命うんめいつくる處なり先刻せんこく見置みおきし金子はや/\拙者どもへ差出せよと荒々あら/\しげに申ける吉兵衞は少しもわるびれたる氣色けしきもなく此方こなたに向ひ兩人ども必ず慮外りよぐわい振舞ふるまひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やはらかにつもりつたが、はんして荒々あら/\しくこぶしをもかためて頭上かしらのうへ振翳ふりかざした。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
穀物が第一膏而已のみに相成候趣に御座候、今より二ヶ月も相立候得ば必病氣をのぞき可申と、口を極めて申居候。此度は決而きつと全快仕可申候間御安心可成候。此度荒々あら/\病氣の所行なりゆきも申上置候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
場内にはいらない先から、わたしは競馬なんぞ見る氣がしなくなつてゐたのです。自動車の砂ほこりや見物人の雜沓がいかにも荒々あら/\しく、田園の風致を毀損するやうに思はれて腹が立つて來るのでした。
畦道 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
推察すいさつされたうへはと、きふ語勢ことばつき荒々あら/\しく
取敢御急報申上度荒々あら/\此御座候。恐々不盡。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
餘計よけい世話せわかんでもい。』益〻ます/\荒々あら/\しくなる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
其方そなた樣へ御渡し申候間金子首尾能御請取下されたく金子さへ有ば何國いづくの浦にても心の儘と存候へば一時も早く立退度たちのきたく夫のみ祈り居參せ候猶委細の事は源藏殿より御聞下きゝくださるべく候何も心せかれ候へば先は荒々あら/\申上參せ候めでたくかしく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ながうとはまをしませぬまをしあげたきこと一通ひととほりとことばきれ/″\になみだみなぎりて引止ひきとむるかひなほそけれど懸命けんめいこゝろ蜘蛛くも千筋ちすぢ百筋もゝすぢちからなきちからはらひかねて五尺ごしやくなよ/\となれどわざ荒々あら/\しく退けてお人違ひとちがひならん其樣そのやうおほうけたまはるわたくしにはあらずいけはたよりおともせし車夫しやふみゝにはなんのことやら理由わけすこしもわかりませぬ車代しやだいたま
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)