肉身にくしん)” の例文
わたくしなどは随分ずいぶん我執がしゅうつよほうでございますが、それでもだんだん感化かんかされて、肉身にくしんのお祖父様ぢいさまのようにおした申上もうしあげ、勿体もったいないとはりつつも
日々の生活に加はつた、この新らしい興味で、もう肉身にくしんを慕つて悲しむこともなくなつた程、ほんたうに幸福な、滿足した氣持ちを持つやうになつた。
こゑふるへ、をのゝいて、わたしたち二十人にじふにんあまりをあわたゞしく呼寄よびよせて、あの、二重にぢう三重さんぢうに、しろはだ取圍とりかこませて、衣類きもの衣服きものはななかに、肉身にくしん屏風びやうぶさせて、ひとすくみにりました。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其内そのうち小六ころくうはさた。主人しゆじんこの青年せいねんいて、肉身にくしんあに見逃みのがやうあたらしい觀察くわんさつを、二三つてゐた。宗助そうすけ主人しゆじん評語ひやうごを、あたるとあたらないとにろんなく、面白おもしろいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つめたいつきひかりされて、人目ひとめかゝらぬいしなか封込ふうじこめられた蟾蜍ひきがへるごとく、わがみにく鉱皮くわうひしためられてゐるとき、ほかのひとたちは清浄しやうじやう肉身にくしん上天じやうてんするのだらう。
せないさゝか有ても調法なは金なり心がすまずば其金にていもとお富へ何なりと江戸土産みやげなどかうて行れよ然すれば我が請たも同樣かならず/\心配しんぱいしやるなと手にだも取ず押戻おしもど肉身にくしんわけたる舍弟おとゝ十兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ふさぎがちなる肉身にくしんから雄々しい聲を噴上ふきあげよ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
肉身にくしんを示さず
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
それからこちらの世界せかいからの見舞者みまいては、だい一が、ははよりもきへ歿なくなったちち、つづいて祖父じじ祖母ばば肉身にくしん親類しんるい縁者えんじゃしたしいお友達ともだち、それからはは守護霊しゅごれい司配霊しはいれい産土うぶすな御神使おつかい
苦痛にすべてうちまかせたその肉身にくしんから
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
從容しようようとして死の許嫁いひなづけたる肉身にくしんから叫べ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)