絹糸きぬいと)” の例文
旧字:絹絲
そとで、たこのうなりごえがする。まどけると、あかるくむ。絹糸きぬいとよりもほそいくものいとが、へやのなかにかかってひかっている。
ある少年の正月の日記 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこをドナウはゆるくうねり、銀いろに光って流れている。そのながれが遠く春の陽炎ようえんのなかに没せむとして、絹糸きぬいとの如くに見えている。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
百姓ひゃくしょうはそうくと小踊こおどりをして、さっそく殿様とのさま御殿ごてんへ行って、首尾しゅびよくたまの中へ絹糸きぬいととおしてお目にかけました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と竹童が、なにやらさわるものに手をやると、上より一すじ絹糸きぬいとのようなものがたれ、えりくびから手にはいまわってきたのは一ぴきの金蜘蛛きんぐもだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其癖そのくせかれ一々いち/\絹糸きぬいとるした價格札ねだんふだんで、品物しなもの見較みくらべてた。さうして實際じつさい金時計きんどけい安價あんかなのにおどろいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
上等じょうとうな品で、きれいな品を持ってきました。いろいろかわったしめひもがあります。」といって、いろいろな色の絹糸きぬいとであんだひもを、一つ取りだしました。白雪姫は
けれどもそれはふつうの金あみや金輪かなわではなくって、ただ細い絹糸きぬいとを二、三本、鼻の回りにむすびつけて、あごの下にふさをらしてあった。白いカピは赤い糸をむすんでいた。
みつを一方の口の穴に塗っておき、ありの足に絹糸きぬいとをゆわえて、こっちの穴から入れてやれば、蜜のに引かれてきっといっぽうへ抜けて出る。その糸をだんだん太くすればよいと教えてくれた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
なんでもないことだよ。それは、たまかたかたのあなのまわりにたくさん蜂蜜はちみつをぬっておいて、絹糸きぬいとありを一ぴきゆわいつけて、べつあなかられてやるのです。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ここの渓流けいりゅうでは砂金さきんがとれる、砂金をうってよろい小太刀こだち金具かなぐをつくる少女があり、そうかと思うと、かわをついで絹糸きぬいとで、武具ぶぐ草摺くさずりをよろっているうちも見える。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母親ははおやは、真剣しんけんになって、子守歌こもりうたをうたいはじめるのでした。ははあいからながる、なつかしい、ほそいしらべは、ひか絹糸きぬいとのように、れんとして、れずに、つづくのでした。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、いつもの鳥が、金と銀の糸でった着物と、絹糸きぬいとと銀の糸でぬいとりしたうわぐつとをおとしてくれました。女の子は、おおいそぎで着物をきかえて、宴会えんかいへでかけていきました。
しばらくすると、またおとなりくに殿様とのさまから、信濃国しなののくにへお使つかいが一つのたまってました。いっしょにそえた手紙てがみむと、このたま絹糸きぬいととおしてもらいたい。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
つきひかりが、しっとりと絹糸きぬいとのように、そらしたみなと町々まちまち屋根やねらしています。そこの、果物屋くだものやには、店頭みせさきに、とおくのしまからふねんでおくられてきた、果物くだものがならんでいました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)