ぺん)” の例文
そんなものはみな自分が死んだ跡で、いつか亡びて無くなってしまうのである。自分が遺言として残して置くのは、一ぺんの詩でなくてはならない。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
太史公たいしこういはく、世俗せぞくしようするところ(一一二)師旅しりよは、みな孫子そんし十三ぺん呉起ごき兵法へいはふふ。おほり、ゆゑろんぜず。其行事そのかうじ施設しせつするところものとをろんず。
今まで申し上げた事はこの講演の第一ぺんに相当するものですが、私はこれからその第二篇に移ろうかと考えます。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかも、業いまだ成らざるに、この運命に立至った。曾て作るところの詩数百ぺんもとより、まだ世に行われておらぬ。遺稿の所在も最早もはや判らなくなっていよう。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
さもないと、すべてが一ぺんのお伽噺とぎばなしのようにえて、さっぱり値打ねうちがないものになりそうでございます。
いま少時しばしねえさんのひざまくら假寐かりねむすんだあいちやんのゆめいてほどけばうつくしいはな數々かず/\色鮮いろあざやかにうるはしきをみなして、この一ぺんのお伽噺とぎばなし出來できあがつたのです。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
女仙外史の人の愛読耽翫たんがん所以ゆえんのもの、決して尠少せんしょうにあらずして、而して又実に一ぺん淋漓りんりたる筆墨ひつぼく巍峨ぎがたる結構を得る所以のもの、決して偶然にあらざるを見る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そういったものを背景にして、一ぺんの小説を構想したりなんかしているんです。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
マクミラン会社出版の、くわしい註釈を添えた書物であったから、理解するのに其れ程困難ではなかったが、しかし、正直に白状すると、己はの一ぺんを読み終った時、少からず失望した。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
向者さきより待合所の縁にりて、一ぺんの書をひもとける二十四、五の壮佼わかものあり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさ元來ぐわんらい愛國あいこく慷慨かうがいひとかつ北海ほくかい滊船きせん面會めんくわいしたときも、談話だんわこゝおよんだときかれはふと衣袋ポツケツトそこさぐつて、昨夜さくや旅亭りよてい徒然つれ/″\つくつたのだとつて、一ぺん不思議ふしぎ新體詩しんたいししめされた。
孫子武そんしぶ齊人也せいひとなり兵法へいはふもつ呉王闔廬ごわうかふろまみゆ。闔廬かふろいはく、(一)の十三ぺんわれことごとこれる。(二)もつすこしくこころみにへいろくきか』と。こたへていはく、『なり』と。
孝孺の宋潜渓そうせんけいに知らるゝや、けだ釈統しゃくとうぺん後正統論こうせいとうろんとをもってす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)