笑止しょうし)” の例文
老いては普請庭つくり。これさへ慎めば金が出来るとやら申す由なれど小生道楽の階程かいていも古人のいましめに適合致候は誠に笑止しょうしに御座候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
するとその容子ようすが、笑止しょうしながら気の毒に思召されたのでございましょう。若殿様は御笑顔おえがおを御やめになると、縄尻を控えていた雑色ぞうしき
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ではどうあっても、柴田家にはつかぬと申しはるか、あわれや、信玄の孫どのも、いまに、裾野にかばねをさらすであろうわ、笑止しょうし笑止」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、知らぬうちに、後生大事に鍋を秘蔵しておったとは、われながら笑止しょうし。なに、そのうちに、取り返すまでのことだ——」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この役まわりがえりにえって秀吉公にわりあてられましたのは、笑止しょうしと申しましょうか、おきのどくと申しましょうか。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
破れるものなら破ってごらん、というおごれる態度を以て、お銀様は戸前で狂っている神尾主膳を笑止しょうしがっていました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
探がし探がして探がし得ず、がっかりした容子ようすは、主人の眼にも笑止しょうしに見えた。其様そんな事で弱って居る矢先やさき、自動車にかるゝ様なことになったのだろう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
書き出してみると、宇宙はなるほど宏大こうだいであって、実はもっと先まで遠征するつもりでいたところ、ようやく月世界の手前までしか行けなかったのは笑止しょうしである。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
園養のハナショウブを美化びかせんがために、いてこの歌を引用し、付会ふかいしているのは笑止しょうしの至りである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
縁先に張りこんだり、漫然と夜伽をしたりするほかどうする才覚もないらしく、いたずらにやきもきと気をもんでいるようすは、見る眼にも笑止しょうしなばかりであった。
顎十郎捕物帳:15 日高川 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
運命と意地の張合いをしているような蘇武の姿が、しかし、李陵には滑稽や笑止しょうしには見えなかった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
なにしろ竜宮界りゅうぐうかい初上はつのぼり、何一なにひとわきまえてもいない不束者ふつつかもののことでございますから、随分ずいぶんつまらぬこと申上もうしあげ、あちらではさぞ笑止しょうし思召おぼしめされたことでございましたろう。
賊の張本御嶽冠者が仁義に厚い大将とな! 笑止しょうし千万かたはら痛い! 仁義に厚いものならば不義の盗賊は何故するぞ! 不義の盗賊をする限りは無恥残暴の人非人じゃ! 冠者を
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかるに着物の縞に限りて細きを好むが如きは衣服は殊に虚飾を為すには必要なる者なれば色気ある少年たちのいたずらに世の流行にびて月並に落ちたるをも知らざる者多きは笑止しょうしなり。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
このよこたえられた白いバンドと葛岡の顔とを尚もしばらく眺めていましたが、笑止しょうしな仕業に見えるだけに、これも先生が葛岡のこころを縛りつけている幼稚なの一つのように思えましたので
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「ほだっておら洋服ふぐ着たり、靴穿いだりして、お笑止しょうしごったちゃ。」
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「それは笑止しょうしじゃ。」と、姫はほほえみながらも眉を寄せた。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
笑止しょうし笑止しょうし、めくら鬼。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
「いや笑止しょうし、笑止。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
手代は、笑止しょうしげに
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
では、あのつづらの中には、かりに掠奪された女がいるのか——その女こそいい迷惑だ、と兵馬が笑止しょうしがりました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「籠城の折だにあらば又逢ふこともあらん云々」と云う少年の心は、八百屋お七にも似て甚だ笑止しょうしではないか。
このように敏感なる報道陣も、賊烏啼と恋の選手月尾寒三とが同一人物たることには思い到らず、それ故に四角の恋愛合戦と伝えているところは、袋探偵には笑止しょうしだった。
とまわりを飛びはなれたが、偉大いだいなる猛禽もうきんのつばさが、たッたひと打ち、風をあおるとともに、笑止しょうし笑止しょうし、まるで豆人形まめにんぎょうでもフリまいたように、そこらの草へころがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御前ごぜんなどが御聞きになりましたら、さぞ笑止しょうしな事と思召しましょうが、何分今は昔の御話で、その頃はかような悪戯を致しますものが、とかくどこにもあり勝ちでございました。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
余り腕が痛いので、東京に出たついでに、渋谷の道玄坂どうげんざか天秤棒てんびんぼうを買って来た。丁度ちょうど股引ももひきしりからげ天秤棒を肩にした姿を山路愛山君に見られ、理想を実行すると笑止しょうしな顔で笑われた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
だが半九郎笑止しょうしらしくいった。
染吉の朱盆 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夜になると田山白雲は、お銀様の寝た縮緬ちりめん夜着蒲団よぎふとんの中へ身を埋めながら、そんなことを考えて笑止しょうしがり、問題の画面に向っては、厳粛な眼をえておりました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
由なき戦を起されて縄目なわめの耻を受けられたのは笑止しょうしでござると云うと、いや/\、某は天下の形勢を考え、徳川殿を亡さずんば豊臣家のために宜しからずと思案いたし
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
先刻、計らざるご対面、あと定めし、ご立腹と存じ候えど、浅ましの新九郎が境界、どのつら下げてお名乗り申すべくもなく、悩乱狼狽の後ろ姿、あわ笑止しょうしともお見のがし下されたく候
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みやこ子女しじょとして至って平民的な彼等も流石にはずかしそうな笑止しょうしな顔をした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そのほか発句ほっくも出来るというし、千蔭流ちかげりゅうとかの仮名かなも上手だという。それも皆若槻のおかげなんだ。そういう消息を知っている僕は、君たちさえ笑止しょうしに思う以上、あきれ返らざるを得ないじゃないか?
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お角さんが、道庵先生の絶体絶命のていを見て笑止しょうしさに堪えられないでいるのは、さすがに商売柄です。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
せっかくそれほどのおのぞみがあだになりましたのは笑止しょうしのいたりでござります。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
屋根廂やねびさしからななめさがりに、ぴゅッと一本の朱槍しゅやりが走って、逃げだしていく佐分利の背から胸板をつらぬいて、あわれや笑止しょうし、かれを串刺くしざしにしたまま、けやきみきいつけてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竜之助は大兵の男の荒っぽい剣術ぶりを笑止しょうしがって見ているうちに、少年は右へ左へ前へ後ろへ、ほどよくあやなす手練しゅれんと身の軽さ。そのうちになんとすきを見出したか
足利若御料わかごりょう礼讃らいさんはまア笑止しょうしながら聞き捨ててもおこうが、鎌倉入りの大合戦は、ひとえに、若御料(千寿王)の参陣があったからこそ勝ったのだとかした雑言ぞうごんだけはききずてならん。
これはお角としては、甚だしい手ぬかりで、すっかり裏をかれていることを気がつかないで、すべてを手の内へまるめておく気取りでいるのが、笑止しょうしといわねばなりません。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし、自分の計画は船の上にあるのだから、お久良とはらを合す者が、巧みにつづらを運び去ったとしても、それはむしろこっちの思うつぼちて行くのだ! と笑止しょうしにも考えられる。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
犬にわれたな、狂犬やまいぬだろう、大きな犬だ、あれに逐いつめられて木の上へ登って、そこから助けを呼んでいるというのは笑止しょうしなことだ、その声を聞けば子供でもないようだが
鎌倉手代てだいの事ごとにコセついた威嚇や小心さは、何とも笑止しょうしなものがある。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
折助は米友が、あんまり一生懸命に見えるから笑止しょうしがって箒を持った手を休めました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
見ものであり、笑止しょうしな存在となった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
驚きあわてて出て行く芸者の後ろ姿を見て、兵馬は笑止しょうしの至りに堪えません。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あな笑止しょうし、苦しい言い訳」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
七兵衛が、どこまでも真面まがおだものですから、主膳も、いよいよ笑止しょうしがって
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さりとは、妙にハニかんだ人だと、兵馬が笑止しょうしに思いました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「おおこれは、芳村氏が男やもめ、笑止しょうし
笑止しょうしの種となるだけでした。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それを兵馬は笑止しょうしげに
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)