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甲
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かん
ふりがな文庫
“
甲
(
かん
)” の例文
そこでも、ひとしきり、かの女の涙まじりの
甲
(
かん
)
だかい声やら、経盛以下の、小さい子どもらの泣き声が、もつれもつれに聞こえていた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と叫ぶ
甲
(
かん
)
高い声を聞いて、左膳は、何はともあれ脱出するのが目下の急務だから、
依然
(
いぜん
)
縁さきに
佇立
(
ちょりつ
)
する源十郎をしりめにかけて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
時刻は午後五時すぎ、——道場ではまだ稽古の音がして、門人を教える野中又五郎の、よくとおる、
甲
(
かん
)
の高い声が聞えていた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
濁
(
にご
)
った楽隊の音や、
甲
(
かん
)
走った蓄音機のひびきや、それらの色彩と音楽とが一つに溶け合って、
師走
(
しわす
)
の都の
巷
(
ちまた
)
にあわただしい気分を作っていた。
半七捕物帳:03 勘平の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
また高知県の
甲
(
かん
)
ノ
浦
(
うら
)
では、二十日の夜から地震の前まで、南方沖合が明るかったと言われている(四国地方各県踏査報告)。
地震なまず
(新字新仮名)
/
武者金吉
(著)
▼ もっと見る
甲
(
かん
)
に高い浅吉の呼び声は、感情もまたたかぶって、沼のほとりを、あちらこちらとさがし廻っている様子が、なんとしても穏かには響きません。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
薄い唇、睡さうな眼、
甲
(
かん
)
の高い聲、恰幅はなか/\よく、そればかりは曾て二本差したこともあるらしい人柄です。
銭形平次捕物控:282 密室
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
とドス声で
甲
(
かん
)
を殺す……この
熊漢
(
くまおとこ
)
の前に、月からこぼれた白い
兎
(
うさぎ
)
、天人の落し児といった風情の、
一束
(
ひとつか
)
ねの、雪の
膚
(
はだ
)
は、さては
化夥間
(
ばけなかま
)
の雪女であった。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、その時紋也と引き添い、左側のほうを走っていた、お粂が
甲
(
かん
)
高くこう叫んだので、小男の素性が紋也に知れた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「
甲
(
かん
)
の聲を出す時に、普通の人は喉が開くのに、あなたのは閉ぢる。發音の仕方が惡いのだらうから、今度は教へて上げようと仰有るんですけど……。」
素材
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
船頭長平、水夫源右衛門、長六、甚兵衛、四人の乗組みで、土佐の
甲
(
かん
)
ノ浦を出帆したところで時化に遭い、五十日も漂い流れてこの島に着いたのである。
藤九郎の島
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
けれ共その終い際になったら、もともと厭気がさしている上に疲れているものだから、声が
甲
(
かん
)
に釣り上ってヘトヘトになってすっかり汗を掻いてしまった。
謡曲黒白談
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
何と
甲
(
かん
)
高い暢々とした妖精的な声でしょう。それが渦巻いて盛上って、あたりに反響します。近所の人こそ迷惑です。だけどその近所にも、家屋の上に物干があります。
エスキス
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
またはお琴をあそばしながらおうたいなされました
唱歌
(
しようが
)
のおこえなど、はれやかなうちにもえんなるうるおいをお持ちなされて、うぐいすの
甲
(
かん
)
だかい張りのあるねいろと
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
甲
(
かん
)
の
浦
(
うら
)
沖を過ぐと云う頃ハッチより
飯櫃
(
めしびつ
)
膳具
(
ぜんぐ
)
を取り下ろすボーイの声
八
(
や
)
ヶましきは早や夕飯なるべし。少し大胆になりて起き上がり箸を取るに頭思いの
外
(
ほか
)
に軽くて胸も苦しからず。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
しかし舞台の上に子供などが出て来て、
甲
(
かん
)
の高い声で、
憐
(
あわ
)
れっぽい事などを云う時には、いかな私でも知らず知らず眼に涙が
滲
(
にじ
)
み出る。そうしてすぐ、ああ
騙
(
だま
)
されたなと後悔する。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
黒いとがった
糸杉
(
いとすぎ
)
の姿がところどころにそびえていた。その向こうには畑がうちつづいていた。閑寂だった。地を
耘
(
うな
)
ってる牛の鳴声や、
犁
(
すき
)
を取ってる百姓の
甲
(
かん
)
高い声が聞こえていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
牟岐、八坂八浜、
宍喰
(
しゝくひ
)
をすぎて、
甲
(
かん
)
の
浦
(
うら
)
にかゝつたとき、とッぷりと日は暮れた。
にはかへんろ記
(新字旧仮名)
/
久保田万太郎
(著)
なかには
甲
(
かん
)
の高いきい/\した声をして、てんでに品定めをするのもあつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
冬山の
枯山
(
からやま
)
來ればいさぎよし
甲
(
かん
)
にひびきて何か
斫
(
き
)
る音
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
甲
(
かん
)
の黄や、乙の紫
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
二人の話の途切れに……すぐ近くの杭の
繋
(
かか
)
り
舟
(
ぶね
)
の
苫
(
とま
)
から、またしても、さっきの
甲
(
かん
)
だかい赤子の泣き声が、
水谺
(
みずこだま
)
をよんでいた。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
薄い唇、
睡
(
ねむ
)
そうな眼、
甲
(
かん
)
の高い声、
恰幅
(
かっぷく
)
はなかなかよく、そればかりは
曾
(
かつ
)
て二本差したこともあるらしい人柄です。
銭形平次捕物控:282 密室
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、つと身体を斜めにいっそうだらしなく崩折れると、口ばやに
甲
(
かん
)
高に、
堰
(
せき
)
を落とすようにしゃべりだした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と、ひときわ
甲
(
かん
)
高く、リーンという音がした。すなわち華子が黄金の杖を、石畳の上へ突いたのである。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
鶴が
甲
(
かん
)
ばしった声でさけんだ。血走った眼で乾を睨みつけながら、妙に
重石
(
おもし
)
のついた声で
金狼
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
この声は少し
甲
(
かん
)
を帯びて高かった。竜之助がこちらにあることを知らないものだから。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして声がいつまでもかれらのように太くならず、叫んだりするときんきん
甲
(
かん
)
高に響いた。まだ固いしこりのある乳房は手で押しても痛む、それを菊千代は
晒
(
さら
)
し木綿できりきりと巻き緊めた。
菊千代抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
冬山の
枯山
(
からやま
)
来ればいさぎよし
甲
(
かん
)
にひびきて何か
斫
(
き
)
る音
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「やいっ、
十八公麿
(
まつまろ
)
」と、
甲
(
かん
)
だかい声で、呼ぶ者があった。思いがけない鋭さなので、思わず、足を
竦
(
すく
)
めて振りかえると、
彼方
(
かなた
)
の山蔭に、
土牢
(
つちろう
)
の口が見えた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さっと
頬
(
ほお
)
から血の気が引いた。そして、ほとんど叫ぶように、
甲
(
かん
)
高い声を
前棒
(
さきぼう
)
の背へ浴びせた。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
屋敷の門のある方角から、お粂と鈴江との叫ぶ声が、
甲
(
かん
)
高に聞こえて来たからであった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お玉の
面
(
かお
)
はやや斜めにして、花は散りても春はさく……の時、声が
甲
(
かん
)
にかかって、ひとたび
冴
(
さ
)
えていた眼が眠るように、死出の旅——で低く低く沈んで、唄を無限の底まで引いて行く。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
誰やらの聲が
甲
(
かん
)
走ると、氣のきいたのが、奧から手燭を持つて來ました。
銭形平次捕物控:046 双生児の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
石段を駆け降りて、ギッシリと浜辺に立ちならんでいる人垣のうしろまで行くと、その向うから、何かききとりにくいことを、繰りかえし繰りかえし叫んでいる
甲
(
かん
)
高い女の叫び声がきこえてきた。
キャラコさん:01 社交室
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それまで、化石したように、うしろの方に立ち
竦
(
すく
)
んでいたお通は、ふいに、走りよって、
甲
(
かん
)
だかく叫んだ。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
金属性の
甲
(
かん
)
高い、ふしぎな笑い声が、高々と秋ぞらに吸われて——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それと察した弁天松代は、
甲
(
かん
)
高く声を響かせた。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お寿々は、
甲
(
かん
)
だかい声をあげて、往来まで走ったが、すぐ人目を思って、
裸足
(
はだし
)
で泣く泣く帰って来た。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あなた」と、針をふくんだような——冷たい
甲
(
かん
)
ばしった声が——ついそこの
住居
(
すまい
)
から走った。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
甲
(
かん
)
の音のあがる時は、魂を宙天へ
攫
(
さら
)
われて、雲と戯れる心地がするし——と思えば、また地の声と天の響きとが和して、
颯々
(
さっさつ
)
と世の無常をかなしむ松風の
奏
(
かな
)
でと変ってゆく。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、わざと声の
甲
(
かん
)
を張って、
怯
(
ひ
)
け身を見せまいとしましたものの、思わず寒気に襲われて、ぞッと
襟
(
えり
)
すじをすくめた証拠には、お蝶の銀のかんざしが微かに光を砕いています。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「これっ、どこへ参る」性善坊がうしろから抱き
竦
(
すく
)
めると、女は、
甲
(
かん
)
ばしった声で
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
尾か脚かを、伊織に斬られて
甲
(
かん
)
だかい啼き声を放ちながら
征矢
(
そや
)
みたいに逃げ走った。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
若い男女は、
恟
(
すく
)
んだまま、楠平の
甲
(
かん
)
だかい声に、顔いろを
顫
(
おのの
)
かせていた。
夕顔の門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
右を見、左を見、次室の武者
溜
(
だま
)
りの内へ、こう
甲
(
かん
)
だかく呼びたてた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
甲
(
かん
)
だかく、お寿々は、泣き声をふくんで
呶鳴
(
どな
)
った。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つづいて、一そう
甲
(
かん
)
だかく
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“甲”の解説
甲(こう、きのえ)は、十干の1番目である。
陰陽五行説では木性の陽に割り当てられており、ここから日本では「きのえ」(木の兄)ともいう。
(出典:Wikipedia)
甲
常用漢字
中学
部首:⽥
5画
“甲”を含む語句
甲板
甲冑
甲虫
甲子
甲斐
甲斐性
甲斐々々
鼈甲
甲斐絹
甲比丹
甲胄
手甲
甲羅
年甲斐
甲府
甲州
鼈甲縁
鎧甲
甲掛
上甲板
...