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珍重
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ちんちょう
ふりがな文庫
“
珍重
(
ちんちょう
)” の例文
食通
(
しょくつう
)
間では、ごりの茶漬けを茶漬けの王者と称して
珍重
(
ちんちょう
)
している。しかし、食べてみようと思えば、
大
(
たい
)
してぜいたくなものではない。
京都のごりの茶漬け
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
「瓦っかけと言ってしまえばそれまでだが、あれで
好事家
(
こうずか
)
の手にわたると、相当
珍重
(
ちんちょう
)
の品なのだ、それにあの箱が珍しいと思いましたよ」
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
また
利休居士
(
りきゅうこじ
)
の
珍重
(
ちんちょう
)
していた「赤がしら」と称える水さしも、それを贈った
連歌師
(
れんがし
)
の
本名
(
ほんみょう
)
は、
甚内
(
じんない
)
とか云ったと聞いています。
報恩記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
昔はこの物を
酒杯
(
しゅはい
)
に造って、
珍重
(
ちんちょう
)
する風習があり、それも大陸から伝わってきたように、多くの物知りには考えられていた。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
客「早速家でも遣ってみよう。実に軽くって油で揚げたように思えんね」と
頻
(
しきり
)
に
珍重
(
ちんちょう
)
する処へ下女が新しき料理を持ち来る。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
▼ もっと見る
「ほ。この
忠顕
(
ただあき
)
の世話を、お辺は、さまで心に
銘
(
めい
)
じていてくれたか。いや
珍重
(
ちんちょう
)
に
値
(
あたい
)
する。近ごろは信義もすたれ、
軽佻
(
けいちょう
)
な奴らばかりが多い中でよ」
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さす手ひく手の
妙
(
たえ
)
、面白の振りの中に
錆
(
さ
)
びた禅味がたゆとうとて
珍重
(
ちんちょう
)
されたのは、鯉魚庵の有力な
檀越
(
だんおつ
)
となって始終、
道味聴聞
(
どうみちょうもん
)
の結果でありました。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
母も死ぬ三日前に
愛想
(
あいそ
)
をつかした——おやじも年中持て余している——町内では乱暴者の悪太郎と
爪弾
(
つまはじ
)
きをする——このおれを無暗に
珍重
(
ちんちょう
)
してくれた。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「大蘆原軍医殿は、この栄螺の内臓を
珍重
(
ちんちょう
)
されるようだが、僕はこんな味のものだとは、今日の今日まで知らなかった」と、星宮理学士は、長い
箸
(
はし
)
を器用に使って
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ついで
正保
(
しょうほう
)
二年松向寺殿も御逝去遊ばされ、これより先き寛永十三年には、同じ香木の本末を分けて
珍重
(
ちんちょう
)
なされ候仙台中納言殿さえ、
少林城
(
わかばやしじょう
)
において御逝去なされ候。
興津弥五右衛門の遺書(初稿)
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
昔
(
むかし
)
、ひすいが、ひじょうに
珍重
(
ちんちょう
)
されたことがありました。この
不思議
(
ふしぎ
)
な
美
(
うつく
)
しい
緑色
(
みどりいろ
)
の
石
(
いし
)
は、
支那
(
しな
)
の
山奥
(
やまおく
)
から
採
(
と
)
れたといわれています。そこで、
国々
(
くにぐに
)
へまで
流
(
なが
)
れてゆきました。
ひすいを愛された妃
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
常に
鶯
(
うぐいす
)
を飼っていて
糞
(
ふん
)
を
糠
(
ぬか
)
に
交
(
ま
)
ぜて使いまた
糸瓜
(
へちま
)
の水を
珍重
(
ちんちょう
)
し顔や手足がつるつる
滑
(
すべ
)
るようでなければ気持を悪がり地肌の
荒
(
あ
)
れるのを最も
忌
(
い
)
んだ
総
(
す
)
べて絃楽器を弾く者は絃を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
御身に病児を托す、願わくは
珍重
(
ちんちょう
)
にせよかしとて、決然
袂
(
たもと
)
を
分
(
わか
)
ちしに、その
後
(
のち
)
二週間ばかりにして、またもや彼が頭上に一大災厄の起らんとは、
実
(
げ
)
にも悲しき運命なるかな。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
自分はしばしば思うた、もし武蔵野の林が楢の
類
(
たぐ
)
いでなく、松か何かであったらきわめて平凡な変化に乏しい色彩いちようなものとなってさまで
珍重
(
ちんちょう
)
するに足らないだろうと。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
この
任侠
(
にんきょう
)
な勇猛な性質は、
勘定
(
かんじょう
)
高き
現今
(
げんこん
)
の社会においておおいに
珍重
(
ちんちょう
)
すべきものと思う。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
さあ
御出
(
おいで
)
と取る手、振り払わば今川流、握り
占
(
しめ
)
なば西洋流か、お辰はどちらにもあらざりし無学の所、無類
珍重
(
ちんちょう
)
嬉しかりしと珠運後に語りけるが、それも
其時
(
そのとき
)
は
嘘
(
うそ
)
なりしなるべし。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
少くも貧乏な
好事家
(
こうずか
)
に
珍重
(
ちんちょう
)
されるだけで、
精々
(
せいぜい
)
が
黄表紙
(
きびょうし
)
並に扱われる位なもんだろう。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
それも私は知らなかったが、私の住んで居る家の娘子は長くそこに住むに随って茶などをくれたり、あるいはその村で最も上菓子と
珍重
(
ちんちょう
)
せるところの
蕎麦
(
そば
)
パンを
拵
(
こしら
)
えて折々私にくれるです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「うむ、
珍重
(
ちんちょう
)
じゃの、この冬にない初物じゃ、ゆっくり休むがよい」
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
花蓋片
(
かがいへん
)
の中央
紅色
(
べにいろ
)
の深いものはベニスジユリと
唱
(
とな
)
え
珍重
(
ちんちょう
)
せられるが、これは園芸的の品である。ハクオウというのは、
花蓋片
(
かがいへん
)
が白くて
斑点
(
はんてん
)
なく中央に
黄筋
(
きすじ
)
の通っているもので、これも園芸品である。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
心持が
稍
(
やや
)
間接だが、先ず万葉の歌の一体として
珍重
(
ちんちょう
)
していいだろう。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
「
珍重
(
ちんちょう
)
。」
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
前掲の句の作者は
元禄
(
げんろく
)
時代の人だから、その時代に江戸っ子が初がつおを
珍重
(
ちんちょう
)
したのはうかがえるが、今日これは通用しない。
いなせな縞の初鰹
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
こう云う老人は日本は
勿論
(
もちろん
)
、西洋にも今は一人もあるまい。
佐藤春夫
(
さとうはるお
)
にでも紹介してやったら、さぞ
珍重
(
ちんちょう
)
することであろう。僕は老人に話しかけた。
不思議な島
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
舶来品だけが久しい間
珍重
(
ちんちょう
)
せられ、国内で盛んに作り出したのは二百年ぐらい前からのことで、それも明治になってようやく一般化したものである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「死中、生アリ。生中、生ナシ。——
嗚呼
(
ああ
)
、
珍重
(
ちんちょう
)
珍重。秋水冷やかなるを覚ゆ。謙信、なお死なずとみゆる」
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
西洋人が
珍重
(
ちんちょう
)
するのは血のソースで煮た兎といいまして兎を切る時大切に心臓の近所の血を
絞
(
しぼ
)
り取ります。日数を経たものは
凝結
(
かたま
)
っていますが一羽の兎から五勺位出ます。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
その古風な舞いぶりを、今の
若衆
(
わかいしゅ
)
たちが老人の後見で、伝えられた通りを大事に保存しながら、威勢よく舞っているらしいのが、お松をして、いっそう
珍重
(
ちんちょう
)
の念を起させたようであります。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ここ以外で捕ったものは、とうてい宮古もののような美味さがないので、自然宮古ものは
珍重
(
ちんちょう
)
されている。
鮪を食う話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
ともかくもこれを頸珠として
珍重
(
ちんちょう
)
した動機にも、ただ容色を
粧
(
よそお
)
い立てる以上に、まだ何かの隠れた力が考えられることは、古史を読む者の年久しい体験であった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
... これが
先
(
ま
)
ず四十五銭位かかりましょうか」小山「牛の尾は私も折々食べた事がありますがなかなか結構ですね。それに牛の脳味噌も薬になるといって西洋人が大層
珍重
(
ちんちょう
)
するそうですね」
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
いやこの尊氏の前途にあたって、そのようなゆゆしい大敵が待つかと思えば、尊氏もまた、いちばいな智と勇をふるいおこさずにはおられん。
珍重
(
ちんちょう
)
珍重。もうよい……。介、充分に休息をとれ
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それを聞くと道庵が
珍重
(
ちんちょう
)
がって、ちょうど、その小金ヶ原へは自分もひとつ下検分に行ってみたいと思っていたところだから、お前が行くならば一緒に行こうと、乗り気になってしまいました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
... これは
仏蘭西人
(
ふらんすじん
)
が最上等の料理と
珍重
(
ちんちょう
)
するドウキングのケーポンだよ」大原「何の事だね」主人「ドウキングというのは
肉用鶏
(
にくようけい
)
の中で第一等の種類さ。ケーポンというのはその去勢したのだ。 ...
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「ははあ、安綱がお手に入ったか、それは
珍重
(
ちんちょう
)
」
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「
珍重
(
ちんちょう
)
、珍重」
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
珍重
(
ちんちょう
)
珍重」
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
珍
常用漢字
中学
部首:⽟
9画
重
常用漢字
小3
部首:⾥
9画
“珍重”で始まる語句
珍重珍重