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牀
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とこ
ふりがな文庫
“
牀
(
とこ
)” の例文
わが
牀
(
とこ
)
は我を慰め、
休息
(
やすらい
)
はわが
愁
(
うれ
)
いを和らげんと、我思いおる時に、汝は夢をもて我を驚かし、
異象
(
まぼろし
)
をもて我を
懼
(
おそ
)
れしめたまう。……
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そこで黒猩
暴
(
にわ
)
かにすね出し、空缶を番人に投げ付け、
牀
(
とこ
)
に飛び上り、毛布で全身を隠す、その
体
(
てい
)
気まま育ちの小児に異ならなんだ。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「夜深うして
方
(
まさ
)
に独り
臥
(
ふ
)
したり、
誰
(
た
)
が
為
(
た
)
めにか
塵
(
ちり
)
の
牀
(
とこ
)
を払はん」「形
羸
(
つか
)
れて
朝餐
(
てうさん
)
の減ずるを覚ゆ、睡り少うして
偏
(
ひと
)
へに
夜漏
(
やろう
)
の長きを知る」
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
間もなく母は気苦労がつもって病気になり、たおれて
牀
(
とこ
)
についたが、
便溺
(
しものもの
)
から寝がえりまで皆大成の手をかりるようになった。
珊瑚
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
竹槍、日本刀、鎌などが、
牀
(
とこ
)
の間に、ずらりと、ならべてあった。酔って来ると、歌う者、手をたたく者、踊る者が出て来た。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
▼ もっと見る
侍女や
媼
(
ばあや
)
達が集まってきて酒の
準備
(
したく
)
をした。そこで広い
牀
(
とこ
)
の上に小さな几を据えて二人がさし向いで酒もりをした。魚は
竹青
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
癒ゆべからざる長病の
牀
(
とこ
)
にあって、更衣の圏外に置かれた居士の気持は、この句を誦する者に或うらさびしさを感ぜしめずには置かぬであろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
はた
如何
(
いか
)
にして病の
牀
(
とこ
)
のつれづれを慰めてんや。思ひくし居るほどにふと考へ得たるところありて
終
(
つい
)
に
墨汁一滴
(
ぼくじゅういってき
)
といふものを書かましと思ひたちぬ。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
早寝の
牀
(
とこ
)
で聴いてゐる。……プラステイックな
宇宙
(
コスモス
)
のしはぶきを。(このとき、地球は
鞠
(
まり
)
ほどの大きさしかない)
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
それを騷ぎに
紛
(
まぎ
)
れて手をつけずに居たが、昨夜
牀
(
とこ
)
へ入つてから、寢酒に一杯やつたものらしい、——この通りだ
銭形平次捕物控:201 凉み船
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
總ての摸樣は、まことに活きたる五色の
氈
(
かも
)
と見るべく、又
彩石
(
ムザイコ
)
を組み合せたる
牀
(
とこ
)
と見るべし。されどポムペイにありといふ床にも、かく美しき色あるはあらじ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
さま/″\思ひつづけて、観念の
牀
(
とこ
)
の上に夢を結べば、妻恋ふ鹿の声に目をさまし、……(身延山御書)
学生と先哲:――予言僧日蓮――
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
壁も
牀
(
とこ
)
も
梁
(
はり
)
も、巌であつた。自身のからだすらが、既に巌になつて居たのだ。屋根が壁であつた。壁が牀であつた。巌ばかり——。
触
(
さは
)
つても/\巌ばかりである。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
轡虫
(
くつわむし
)
だの、
蛼
(
こほろぎ
)
だの、秋の先駆であるさまざまの虫が、或は草原で、或は彼の机の前で、或は彼の
牀
(
とこ
)
の下で鳴き初めた。楽しい田園の新秋の予感が、村人の心を浮き立たせた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
渋江氏で此年蘭門の高足であつた抽斎
全善
(
かねよし
)
が五十四歳で歿した。流行の
暴瀉
(
ばうしや
)
に罹つて、八月二十九日に瞑したのである。柏軒は抽斎の病み臥してより
牀
(
とこ
)
の
傍
(
かたはら
)
を離れなかつた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
と言いながら、源氏が
牀
(
とこ
)
をのぞこうとするので、御息所は女房に別れの言葉を伝えさせた。
源氏物語:14 澪標
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そうして
牀
(
とこ
)
に飾られる器が、美しさにおいてよく実用の品を超え得た場合があろうか。美しい古作品を列挙するなら、期せずしてその大部分が用具であったのに気づくであろう。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
天は
万物
(
ばんもつ
)
に安眠の
牀
(
とこ
)
を与へんが為めに夜テフ
天鵞絨
(
びろうど
)
の
幔幕
(
まんまく
)
を
下
(
お
)
ろし給ふぢやないか、然るに其時間に労働する、
即
(
すなは
)
ち天意を犯すのだらう、
看給
(
みたま
)
へ、夜中の労働——売淫、窃盗、賭博
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
兵部の娘も、
金椎
(
キンツイ
)
も、おのおの、
牀
(
とこ
)
について、安らかに眠りに落ちているようです。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
人間は針のように磁気に感ずるものだと断言して、夜分血液の循環が地球の磁気の大流に逆らわないようにと、頭を南に足を北にして
牀
(
とこ
)
を伸べた。嵐のある時は自分で脈を取って見た。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼等がひねもす物語をした客殿の
牀
(
とこ
)
は
青緑
(
みどり
)
であつたと書いてある。あまり物もたべず、酒ものまず、ただ乾杏子をたべて、乾葡萄をたべて、涼しい果汁をすこし飲んでゐたかもしれない。
乾あんず
(新字旧仮名)
/
片山広子
(著)
小屋には
牀
(
とこ
)
はない、土の上に
莚
(
むしろ
)
を敷いたばかりだが、その土は渓の方へ低くなっている。囲炉裡に足を入れていては、勢い頭は低い方に向く、頭の足より低いのは、一体
心地
(
ここち
)
のよいものではない。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
だが、こんなに早く不起の病の
牀
(
とこ
)
に就こうとも思わなかった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
かたはらに楊貴妃の絵の掛かりたる紫檀の
牀
(
とこ
)
にものな思ひそ
満蒙遊記:附 満蒙の歌
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
牀
(
とこ
)
を敷いて蒲団の中へもぐり込んでも安眠が出来ない。
五月雨
(新字旧仮名)
/
吉江喬松
(著)
こゝに在るは善き人々なるをば、客人も
夙
(
と
)
く悟り給ひしならん。されど此等の事思ひ定め給はんには、先づ快く一夜の勞を
醫
(
いや
)
し給ふに若かず。こゝに
佳
(
よ
)
き
牀
(
とこ
)
あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
公主は
牀
(
とこ
)
につッぷしたなりに
啼
(
な
)
き悲しんでよさなかった。竇は心を苦しめたが他に手段がなかった。と、急に目があいた。竇は始めて夢であったということを知った。
蓮花公主
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
大便所は清潔で、正面に小さい
牀
(
とこ
)
が作ってあり、銀の一輪ざしに、温室咲きらしい百合の花がさしてあった。うす暗い電燈の光のなかに、白い花びらが清楚に光っている。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
さうして、彼の逃げて仕舞つた妾の代りに、二人の十と七つとの孫娘を、自分の左右に眠らせた
牀
(
とこ
)
のなかで、この花つくりの翁は眠り難かつた。彼は月並の
俳諧
(
はいかい
)
に
耽
(
ふけ
)
り出した。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
暇
(
ひま
)
ならば器には遠い。あの
牀
(
とこ
)
に休む飾物は概して弱いではないか、
脆
(
もろ
)
いではないか。働き手ではないからである。用に遠いが故に美にもまた遠い。丹念とか精緻とかの趣きはあろう。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
壁も、
牀
(
とこ
)
も、
梁
(
はり
)
も、巌であった。自身のからだすらが、既に、巌になって居たのだ。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
病
(
やまい
)
の
牀
(
とこ
)
に仰向に寐てつまらなさに天井を
睨
(
にら
)
んで居ると天井板の木目が人の顔に見える。それは一つある節穴が人の眼のように見えてそのぐるりの木目が不思議に顔の輪廓を形づくって居る。
ランプの影
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
ベロアル・ド・ヴェルビュの『上達方』に婦人は寺で天女、宅で悪魔、
牀
(
とこ
)
で猴と
誚
(
そし
)
り、仏経には釈尊が弟の難陀その妻と好愛甚だしきを
醒
(
さ
)
まさんとて彼女の
瞎
(
めっかち
)
雌猿に劣れるを示したと出づ。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その女は
牀
(
とこ
)
の上に坐っているらしかった。捕卒は不審しながら進んで往った。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
秦の
姑
(
おば
)
さんが没くなった後で、
姑丈
(
おじ
)
さんが
鰥
(
やもめ
)
でいると、狐がついて、
瘠
(
や
)
せて死んだが、その狐が女の子を生んで、嬰寧という名をつけ、むつきに包んで
牀
(
とこ
)
の上に寝かしてあるのを
嬰寧
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
牀
(
とこ
)
の間と、くろがきの大黒柱を境にしてならんでいる仏壇の奥に、
金色
(
きんしょく
)
燦然
(
さんぜん
)
たる
阿弥陀如来
(
あみだにょらい
)
が静まりかえって、これも
黄金
(
おうごん
)
の
蓮台
(
れんだい
)
のうえに、坐禅を組んでいる。その下に、朱塗りの袋戸棚がある。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
小翠は平気で笑いながら元豊の
屍
(
しかばね
)
を
曳
(
ひ
)
きあげて
牀
(
とこ
)
の上に置き、体をすっかり拭いて乾かし、またそれに
被
(
よぎ
)
を着せた。夫人は元豊の死んだことを聞いて、泣きさけびながら入って来て罵った。
小翠
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
牀
漢検1級
部首:⽙
8画
“牀”を含む語句
牀几
病牀
牀机
牀上
岩牀
牀下
寝牀
牀榻
牀板
竹牀簀
臥牀
縄牀
神牀
胡牀
石牀
病牀録
病牀即事
船牀
土牀
踞牀
...