燃立もえた)” の例文
勿論、兇器きょうきは離さない。うわそらの足がおどつて、ともすれば局の袴につまずかうとするさまは、燃立もえた躑躅つつじの花のうちに、いたちが狂ふやうである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
立派な二重橋の眺望も城壁の上なる松の木立こだちを越えて、西の空一帯に夕日の燃立もえたつ時最も偉大なる壮観を呈する。
しかくれなゐは、俯向うつむいたえりすべり、もたれかゝつた衣紋えもんくづれて、はだへく、とちらめくばかり、氣勢けはひしづんだが燃立もえたつやう。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さくらか、海棠かいだうかとおもふ、おほきなつゝじの、燃立もえたつやうなのをうゑて、十鉢とはちばかりずらりとならべた——べにながしたやうなのは、水打みづうつた石疊いしだたみかげうつつたのである。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……ひとみ水晶すゐしやうつたやうで、薄煙うすけむりしつとほして透通すきとほるばかり、つき射添さしそふ、とおもふと、むらさきも、萌黄もえぎも、そでいろ𤏋ぱつえて、姿すがた其處此處そここゝ燃立もえたは、ほのほみだるゝやうであつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、燃立もえたつようなのは一株も見えぬ。しもに、雪に、長くとざされた上に、風の荒ぶる野に開く所為せいであろう、花弁が皆堅い。山吹は黄なる貝を刻んだようで、つつじの薄紅うすくれない珊瑚さんごに似ていた。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふぢはなむらさきは、眞晝まひる色香いろかおぼろにして、白日はくじつゆめまみゆる麗人れいじん面影おもかげあり。憧憬あこがれつゝもあふぐものに、きみかよふらむ、高樓たかどのわた廻廊くわいらうは、燃立もえた躑躅つゝじそらかゝりて、宛然さながらにじへるがごとし。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
玉簾たますだれなかもれでたらんばかりのをんなおもかげかほいろしろきもきぬこのみも、紫陽花あぢさゐいろてりえつ。蹴込けこみ敷毛しきげ燃立もえたつばかり、ひら/\と夕風ゆふかぜ徜徉さまよへるさまよ、何處いづこ、いづこ、夕顏ゆふがほ宿やどやおとなふらん。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
卓子テエブル其処そこへ、花片はなびらの翼を両方、燃立もえたつやうに。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
卓子テエブル其處そこへ、花片はなびらつばさ兩方りやうはう燃立もえたつやうに。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)