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淹
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い
ふりがな文庫
“
淹
(
い
)” の例文
召使に茶を
淹
(
い
)
れさせ、ほっとして窓に倚ると、障子に青白く光りがさしている。あけてみると十三夜あたりのきれいな月が出ていた。
いさましい話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
西谷と私がそうして打解けて話していることが、娘には大変に嬉しいらしく、何時も娘は私達のところへ茶を
淹
(
い
)
れて出て来るのであった。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「へエ、來ましたが、お茶を
淹
(
い
)
れて上げると、喉が乾いて面倒臭せえから水をくんろ——と言つてね、
柄杓
(
ひしやく
)
で一杯飮んで——」
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「あれ、私の方から持ち込んだ話ですもの、お世話も何もありゃしませんけど……」と
口籠
(
くちごも
)
るところへ、娘のお仙は茶を
淹
(
い
)
れて持って来た。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
おようがお茶を
淹
(
い
)
れに立ったので明はちょっとの間、初枝と差し向いになっていた。明はつとめて相手から目をそらせていた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
▼ もっと見る
姉は茶を
淹
(
い
)
れる。土産の包を開くと、姉の好きな好きなシュウクリーム。これはマアお
旨
(
い
)
しいと姉の声。で、
暫
(
しばら
)
く一座はそれに気を取られた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
綺麗
(
きれい
)
に
作
(
つく
)
つて
湯
(
ゆ
)
から
帰
(
かへ
)
ると、
妻
(
つま
)
は
不図
(
ふと
)
茶道具
(
ちやだうぐ
)
ともなかとを
私
(
わたし
)
の
傍
(
そば
)
へ
運
(
はこ
)
んで、
例
(
れい
)
の
嫻
(
しとや
)
かに、
落着
(
おちつ
)
いた
風
(
ふう
)
で、
茶
(
ちや
)
など
淹
(
い
)
れて、
四方八方
(
よもやま
)
の
話
(
はなし
)
を
始
(
はじ
)
める。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
板谷との
長閑
(
のどか
)
な間柄が恋いしくなって来る。きんは、がっかりした気持ちで、しゅんしゅんと沸きたっているあられの
鉄瓶
(
てつびん
)
を取って茶を
淹
(
い
)
れた。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
私を呼ぶつもりで、茶の間で茶でも
淹
(
い
)
れているらしい嫂の気配を感じると、私は大急ぎで床をとって、寝てしまいました。
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ばあやは近所へ買物に行ったということで、老人は自身に茶を
淹
(
い
)
れたり、菓子を出したりした。ひと通りの挨拶が済んで、老人は機嫌よく話し出した。
半七捕物帳:21 蝶合戦
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
二日目の晩、ある大きな駅に汽車が停ったとき、この神経質な紳士は熱い湯を汲みに行き、自分で茶を
淹
(
い
)
れ始めた。
クロイツェル・ソナタ:01 クロイツェル・ソナタ
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
月夜の
松濤庵
(
しょうとうあん
)
に清流を汲んで茶を
淹
(
い
)
れ、何かないかと戸棚を捜したら一袋の掻餅が出て来た、それを泉鏡花氏が喜んで食べた、ということが書いてある。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
膳
(
ぜん
)
を引かせて、叔母の新らしく
淹
(
い
)
れて来た茶をがぶがぶ飲み始めた叔父は、お延の心にこんな
交
(
こ
)
み
入
(
い
)
った
蟠
(
わだか
)
まりが
蜿蜒
(
うねく
)
っていようと思うはずがなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
座についた彼らに、はいって来て女中が茶を
淹
(
い
)
れた。彼女はさがりがてに、
膝
(
ひざ
)
まずいて障子を閉めようとした。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「イヤこれはこれは、今日は
全家
(
うちじゅう
)
が出払って余り
徒然
(
つれづれ
)
なので、番茶を
淹
(
い
)
れて
単
(
ひと
)
りで
浮
(
うか
)
れていた処サ。」と。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
立った序にとて、弟は茶を
淹
(
い
)
れかえ、今度は自分で新しく桶から出した山独活を鉢で勧めまして、なおも話の続きから私たちを逃すまじき粘りを見せています。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼女は茶を
淹
(
い
)
れると、砂糖を使いすぎたと言って叱られ、小説を読んで聞かせると、こんなくだらないものをと言って、作者の罪が自分の上に降りかかって来る。
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
光明寺の和尚さんは、伏見から取り寄せた駿河屋の羊羮で、宇治の玉露を
淹
(
い
)
れて飮むのを樂んでゐた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
あとは実験室の片隅で
鑢
(
やすり
)
がけや
盤陀
(
はんだ
)
付けで小さい実験装置の部分品を作ったり、漫談に花を咲かせたり、時にはビーカーで湯を
沸
(
わか
)
して紅茶を
淹
(
い
)
れて飲んだりしていた。
寺田先生の追憶:――大学卒業前後の思い出――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
要らないお茶を
淹
(
い
)
れたり、プロレスのように両脚で私の首をはさんで引き倒したりするのだ。
愛のごとく
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
その湯で
淹
(
い
)
れた毒入りの茶を、一杯また一杯と重ねながら、つい今しがたまでジノーヴィー・ボリースィチは、どうにか一家のあるじの
沽券
(
こけん
)
をみずから慰めていたものだったが
ムツェンスク郡のマクベス夫人
(新字新仮名)
/
ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフ
(著)
モカ系のコーヒーで、丁寧に
淹
(
い
)
れてあって、これは中々東京には無い味だった。
神戸
(新字新仮名)
/
古川緑波
(著)
何でも
昨日
(
きのふ
)
医者が湯治が良いと言うて
切
(
しきり
)
に勧めたらしいのだ。いや、もう急の
思着
(
おもひつき
)
で、
脚下
(
あしもと
)
から鳥の
起
(
た
)
つやうな騒をして、十二時三十分の
滊車
(
きしや
)
で。ああ、
独
(
ひとり
)
で寂いところ、まあ茶でも
淹
(
い
)
れやう
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「お茶でも
淹
(
い
)
れよう、遊んでおいで。叔父さんも帰って来ようからね」
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「えらい済んまへんが、珈琲六人前
淹
(
い
)
れたっとくなはれ」
雪の夜
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
けい ええ、でも、お茶くらい
淹
(
い
)
れますよ。
女の一生
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
そして、自分で
淹
(
い
)
れて勧めた。
万年青
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
濃く
淹
(
い
)
れし緑茶を
所望
(
しょもう
)
梅雨
(
つゆ
)
眠し
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
おうめにお茶を
淹
(
い
)
れて、と云いながら、おみきは喜六を家へ招き入れた。その家は六
帖
(
じょう
)
と四帖半二た間に、
厠
(
かわや
)
と勝手という造りだった。
枡落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
平次は、口ほどには驚く色もなく、そのまゝ庭へ
誘
(
さそ
)
ひ入れて、お靜に茶などを
淹
(
い
)
れさせるのです。まことに自若たる姿です。
銭形平次捕物控:322 死の秘薬
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「お茶でも
淹
(
い
)
れましょうか?」
膝
(
ひざ
)
の上で何やら本を読み出していたお照が、ふいとその本から目を上げて、弘に言った。
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
小野は自分の花嫁でも来るような晴れ晴れしい顔をして、「どうだ新さん待ち遠しいだろう。茶でも
淹
(
い
)
れようか。」
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
淹
(
い
)
れたてのコオフィ一杯で時々朝飯ぬきにする時があるが、たいていは、紅茶にパンに野菜などの方が好き。このごろだったら、
胡瓜
(
きゅうり
)
をふんだんに食べる。
朝御飯
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そして私の旅行話に興味を持ったらしく、小形の地図なぞを出して、フムフムと
相槌
(
あいづち
)
を打っていましたが、そのうちに例の娘は
珈琲
(
コーヒー
)
を
淹
(
い
)
れて、運んで来てくれました。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
老人は自分で起って、忙しそうに茶を
淹
(
い
)
れたり、菓子を運んで来たりした。それがなんだか気の毒らしくも感じられたので、私はすゝめられた茶をのみながら訊いた。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お延は仕方がないので、茶を
淹
(
い
)
れ
代
(
か
)
えるのを口実に、席を立とうとした。小林はそれさえ
遮
(
さえ
)
ぎった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そののち女は紅茶を
淹
(
い
)
れ、簡単な食事をつくって帰った。次の土曜日にも、女は来た。
愛のごとく
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
「紅茶を
淹
(
い
)
れましたからお上んなさい。少しばかり
栗
(
くり
)
を
茹
(
ゆ
)
でましたから」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ある朝私は自分の部屋で、紅茶を
淹
(
い
)
れて飲んでいた。
銀三十枚
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
茶を
淹
(
い
)
れようとする妻に手をふって云った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
老僧は茶を
淹
(
い
)
れながら言つた。
ごりがん
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
清、茶を
淹
(
い
)
れてもってくる。
女の一生
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
彼一語我一語新茶
淹
(
い
)
れながら
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
十時になったとき珍しく鈴が鳴り、「茶を
淹
(
い
)
れてまいれ」と命ぜられた。都留は茶菓を運びながら、それとなくその座のようすを見た。
晩秋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「ヘエ、来ましたが、お茶を
淹
(
い
)
れて上げると、喉が渇いて面倒臭えから水をくんろ——と言ってね、
柄杓
(
ひしゃく
)
で一杯飲んで——」
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
やがて友達の引き揚げて行った座敷に、夫婦はしばらく茶を
淹
(
い
)
れなどして、しめやかに話しながら差し向いでいた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そうして茶を
淹
(
い
)
れ、机の上の色々なものに触れてみる。「御健在か」と、そう
訊
(
き
)
いてみる気持ちなのだ。ペンは万年筆を使っている。インキは丸善のアテナインキ。
生活
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そのときおばさんがお茶を
淹
(
い
)
れて持ってきた。そしてあらためて私に
無沙汰
(
ぶさた
)
の
詫
(
わ
)
びやら、手みやげのお礼などいい出した。無口なおじさんも急にいずまいを改めた。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
まあ、折角の御馳走ですから、番茶でも
淹
(
い
)
れましょう。湯ももう沸いたようです。
影:(一幕)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その時婆さんが
漸
(
ようや
)
く
急須
(
きゅうす
)
に茶を
淹
(
い
)
れて持って出た。今しがた鉄瓶に水を
注
(
さ
)
してしまったので、
煮立
(
にたて
)
るのに暇が入って、つい遅くなって済みませんと言訳をしながら、
洋卓
(
テーブル
)
の上へ盆を載せた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
淹
漢検1級
部首:⽔
11画
“淹”を含む語句
淹留
仙郷淹留譚
淹京
淹悶
淹留期
淹知
淹茶