標題みだし)” の例文
「噴水の鶴、今朝鳴く!」という五段抜きの大標題みだしの下に、会場の盛況から賞品授与の次第、祝辞祝電の全文と兼清博士の演説要旨
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
然も二号活字で如何にも大きい標題みだし附であった。蓋しそれほど彼の死は社会の好奇心を誘う事件であったからであろう。(中略)
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
彼岸過迄ひがんすぎまで」というのは元日から始めて、彼岸過まで書く予定だから単にそう名づけたまでに過ぎない実はむなしい標題みだしである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
少年は、又も無言のままポケットを掻いさぐって一葉の古新聞紙を私の前に差し出した。その第一頁の『東洋日報』という標題みだしの上の余白には
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
綾子手に採りひらき見れば、深川夫人乞食を救う、と標題みだし圏点けんてんを附してその美徳を称讃し、気味悪きまで賞立ほめたてたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
死せる武蔵、生ける盗賊を走らす、という標題みだしのつけられそうな三面ダネを一つおじさんから聞いてしまったんで。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其頃そのころ歐羅巴エウロツパしよ新聞しんぶんふでそろへて、弦月丸げんげつまる遭難さうなん詳報しやうほうし、かの臆病をくびやうなる船長等せんちやうら振舞ふるまひをばいた攻撃こうげきするとともに『日本人につぽんじんたましひ。』なんかと標題みだしいて
隣室とまちがえて小女が投込んで行った新聞紙を、ふと取上げて絵のある下の方を見ると、一番に目についた標題みだしは小歌の落籍ひっこみ、その要をつまんで云えば
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
肩ごしに覗いてみると、『遺言状』と標題みだしをおいて、その下に三行、細かい文字で何か書きつけてあります。
無駄骨 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「小説家の自殺」という様な標題みだしで、(彼も死んだお蔭で他人から小説家と呼んでもらうことが出来ました)
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ただ翌日の新聞の夕刊(朝刊の記事には間にあわなかったので)には「浅野護謨会社小使惨殺さる」という記事の標題みだしとして「加害者は同社の事務員」と記され
犠牲者 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
翌朝の新聞には、この事件が相当な標題みだしで報ぜられていた。謎の兇器の行方と、小標題がついていた。
撞球室の七人 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
『先刻社長が見えて其麽そんな事を云つて居た。二號標題みだしで成るべく景氣をつけて書いて呉れ給へ。尤も、今日は單に報道に止めて、此方の意見は二三日待つて見て下さい。』
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
その二面に麗々れい/\と自分の寫眞が出てゐて「文學か保險か」と大きな標題みだしの横に「三田派の青年文士水上瀧太郎氏歸る」と小標題こみだしを振つて、十七字詰三十八行の記事が出てゐた。
さほど期待しないような活字と標題みだしで——郡役所の官金費消事件が載せられていた。
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
世界を堅麺麭かたパンのやうに水気の無い物にしたがつてゐるある宗教家の書物だつたが、青年は書物の標題みだしなどには頓着なく、克明に括り紐を継ぎ合せて、カアネエギイの前に差し出した。
不良ふりやう少女せうぢよ沒落ぼつらく」といふ標題みだしもとに、私達わたしたち前後ぜんごしての結婚けつこんを×あたりに落書らくがきされてから、みなもうまるねんすごしました。Kさんがまづ母となり、あなたも間もなく母となりました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「小説家小栗桂三郎自殺す」と書いた標題みだしだけの原稿と、工場から最後の原稿を催促に来た職長の顔を眺め乍ら、年寄の江藤が、玄関わきの自分の部屋から、離屋はなれへ行って帰って来るまでの時間を
流行作家の死 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
それは二段抜の初号標題みだし畜生道ちくしょうどうにおちた兄妹きょうだいとしたものであった。神中の頭はわくわくとした。神中はくいつくようにしてその記事に眼をやった。それは己等じぶんら兄妹きょうだいを傷つけた憎むべき記事であった。
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
たいへんな標題みだしから始まって
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
東京の新聞に大きな標題みだしを付けた地震の学説がこの頃まで出ているところを見ると、こんな知識階級のビクビク加減は地方人の想像以上であるらしい。
国家的瑞兆という三段抜きの大標題みだしで手の込んだ記事を書上げ、名士、博士を総動員して感想を執筆させた。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
新聞に書いたのは(ABアアベエ横町。)と云う標題みだしで、西の草深のはずれ、浅間に寄った、もう郡部になろうとするとある小路を、近頃渾名あだなしてAB横町ととなえる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、それだけなら無論構はない。先生の関係した事ぢやないから、然し」と云つて、又残りの新聞を畳みなほして、標題みだしゆびあたまおさへて、三四郎のしたした。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
先刻さつき社長が見えて其麽そんな事を云つて居た。二号標題みだしで成るべく景気をつけて書いて呉れ給へ。尤も、今日は単に報道にとどめて、此方こつちの意見は二三日待つて見て下さい。』
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
だが、新聞では『兵卒の犯罪』という大標題みだしもとに仰々しく書き立てている。それは兵営内に起った怪事件で、しかもその犯人として、倅の名が判然はっきりと掲げられているではないか。
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
お目にかけたんだ。遠慮することは無い。明日の新聞には、三段抜かなんかで頼むよ、『女優柳糸子、日比谷公園で身ぐるみ剥がる』なんていうのは。全く良い標題みだしだぜ、ちと特種料を出しな——
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
俊雄は心底しんそこ歎服たんぷくし満腹し小春お夏を両手の花と絵入新聞の標題みだしを極め込んだれど実もってかの古大通こだいつうの説くがごとくんば女は端からころりころり日の下開山の栄号をかたじけのうせんこと死者しびとの首を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
と結んで、おまけにどこでったかわからない私の横顔の写真に、鬼課長狭山氏と標題みだしを付けて割込ましてある。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
参観すべき場所と云う標題みだしのもとには、山城町やまぎちょうの大連医院だの、児玉町こだまちょうの従業員養成所だの近江町おうみちょうの合宿所だの、浜町はまちょうの発電所だの、何だのかだのみんなで十五六ほどある。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
月を待つのおとぎにとて、その坊さんが話すのですが、薗原山そのはらやま木賊刈とくさがり伏屋里ふせやのさと箒木ははきぎ、更科山の老桂ふるかつら千曲川ちくまがわ細石さざれいし、姨捨山の姥石うばのいしなぞッて、標題みだしばかりでも、妙にあわれに
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新聞を見ても少し長い記事になると、もう五六行讀んだ許りで、終末しまいまで讀み通すのがもどかしくなつて、大字だいじ標題みだしだけを急がしくあさつた。續き物の小説などは猶更讀む氣がしなかつた。
不穏 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
この標題みだしを見ただけでも、事件の容易ならぬことが判ります。
水中の宮殿 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
昨春三月頃の東都の新聞という新聞にデカデカと書き立てられました特号標題みだしの「謎の女」に相違ない事です。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「いや、それだけならむろんかまわない。先生の関係したことじゃないから、しかし」と言って、また残りの新聞を畳み直して、標題みだしを指の頭で押えて、三四郎の目の下へ出した。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それはいいが、その記事の終尾おしまいの処に次のような記事がデカデカと一号標題みだしで掲載されていたのには驚いた。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
吾輩が差出した新聞の綴込を抱えた山羊髯は、紙面を鼻の先に押付けて、初号活字の標題みだしを探り読んだ。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
標題みだしに含まれている暗示もよほど注意深く新聞を読んでいる人か、又は実地を調査した係官の中でもかなり職務に忠実な人間でなければわからないようにしておいた。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いかにも無念そうに唇をきっと結んだまま、私が持っていた曙新聞を受け取って、同じ一昨年の十月十四日の夕刊の社会面を開いて、前の広告と同様の赤丸を施した標題みだしを指さし示した。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ほかの新聞には「又も轢死女」という四号標題みだしで、身元不明の若い女の轢死が五行ばかり報道してあるだけで、姙娠の事実すら書いてないのに反して、私の新聞の方には初号三段抜きの大標題おおみだし
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「模範兵士の化けの皮」という大きな標題みだしで……
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
標題みだし……「田植連中の環視の中で……姙娠美人の鉄道自殺……けさ十時頃、筥崎駅附近で……相手は九大名うての色魔……女は佐賀県随一の富豪……時枝家の家出娘」……「両親へ詫びに帰る途中……思い迫ったものか……この悲惨事」
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)