)” の例文
だ東京で三年前に買つたまゝのをかぶつて居る僕の帽もこの連中れんぢゆうあかみた鳥打帽やひゞれた山高帽やまだかばうに比べれば謙遜する必要は無かつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「ははは、何だか馬鹿に年寄りみたことを言うじゃねえか。お光さんなんざまだ女の盛りなんだもの、本当の面白いことはこれからさ」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
この子供を人間の子供と解されぬこともないけれども、それでは余り芝居みて来る。やはり狐の子とする方が穏当であろう。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
世帯みたことに没頭しているいま、池上にしろ葛岡にしろ、また逢って最初に切出す皮切りのひと皮の挨拶が妙に億劫な気がいたします。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
町内で揃いに染めさした、波に千鳥と桜をあしらった手拭、少しお花見手拭みますが、派手な図柄を選った、若い人達の好みだったのです。
しかし不遠慮に言えば、百物語の催主が気違みた人物であったなら、どっちかと云えば、必ず躁狂そうきょうに近い間違方だろうとだけは思っていた。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かうして、彼女は、田舍みた建物たてものに入り、村童等の驚いた列の間をすべり拔けた。彼女は、大抵リヴァズ氏の日課である聖書問答の時間に來た。
自分たちの境遇が変ると、昨日きのうまで軽蔑けいべつしていた人の真似まねをしててんとして気の付かない姉夫婦は、反省の足りない点においてむしろ子供みていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つまるところ、目賀野は本事件の主役ではなく、その傍系ぼうけいのドンキホーテみたところのある人物に過ぎないのだ。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
孫永才は、狂気みた眼をして、丘の斜面を見守りながら、弟の頸に手をかけようとしたが、肉親の情に突き上げてくる涙をおさえるのがやっとだった。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
この頃は二子ふたこの裏にさえ甲斐機を付ける。斜子の羽織の胴裏が絵甲斐機じゃア郡役所の書記か小学校の先生みていて、待合入りをする旦那だんな估券こけんさわる。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
同情おもひやりの深い智恵子は、宿の子供——十歳とをになる梅ちやんと五歳いつつの新坊——が、モウ七月になつたのに垢みた袷を着て暑がつてるのを、いつもの事ながら見るに見兼ねた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
直情径行の堀尾君も愛人の前には策をろうする。十万円貰うと真向から発表しては宣伝みて品が好くないから、斯ういう手順を履んだのらしい。ナカ/\機嫌取りが巧い。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
なにしろなんだ、そんな世帶しよたいみたことふなアよしてくれ。いただけでもくさくさするよ」
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
と突然狂気みた声で、大鳥井紋兵衛は怒鳴どなったものである。彼はムックリと起き上がった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
播磨守はりまのかみ政岑は、分家とはいえ門地の高い生れだけあって、顔に間の抜けたところがなく、容貌はむしろ立派なほうだが、ツルリとしたいき好みの細面ほそおもてがいかにも芸人みたふうにみえ
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
玄翁げんのうか何かで一度に叩ッ殺し、そのまま線路上へ投げ出して置く——が、しかし、この場合の犯人は、既に僕等も見て来た様に、実に不自然な、むしろ芝居みた道具立をしている。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
只遺骸を灰にして、高い山から、西風の吹く日に吹き飛ばして呉れといふ子供みた申状と、遺稿のうち、採るべきものがあつたら出版して欲しいといふ希望だけを、発表しておきます。
ある死、次の死 (新字旧仮名) / 佐佐木茂索(著)
郵便切手を集める——といふと、何だか子供みた事のやうに思ふものが多い。また実際欧羅巴ヨーロツパの子供には切手を集めるに夢中になつて、日本人がたまに故国の郵便切手でも呉れてやると
どうしたのかと聞けば、おふさは涙によごれた顏を上げて、髮が澤山拔けるから悲しいといふ。こんなに、いくらでも拔けるんですのと言ひながら、油みた櫛に引つかゝつた拔け毛を見せる。
金魚 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
先ほども言ったように失敗が既にどこか病気みたところを持っていた。
泥濘 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
平日ふだんから油んだ髪をきらっていたから、菅糸すがいとだって、葛引くずひきだって
世間は他人ひとごとどころではないと素気なくね返す。彼はいきり立ち武者振むしゃぶりついて行く。気狂いみているとて今度は体を更わされる。あの手この手。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それにそんな嘘をつく必要がないだろうじゃないか。死ぬか生きるかと云う戦争中にこんな小説みた呑気のんき法螺ほらを書いて国元へ送るものは一人もない訳ださ
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「もう二百年も以前のことですよ——それはもう、あのモオトン・ヴェイルのオリヴァさまの大きなおやしきとは比べものにならない小さな田舍みた所ですがね。」
美妙斎美妙と名乗った理由は知らぬが、別段説明を聞かないでもわかるほど露骨であって詩人の奥床しさを欠いておる。小説家よりは曲芸師みて寄席よせのビラに書かれそうだ。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
たとえ二卵性の双生児としても、それはあまりにも似合わしからぬところであった。すると真一は境遇の上では妾の同胞に相当していながら、身体の上の印からはどうしても他人みていた。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
茜さんは、油んだ枕の上で、向うむきになったまま
このアルトゥールがどこで女に失敗するかというと、その熱心さがあんまり気狂いみているというんです。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
取り出して何心なく見たんだそうだ。するとその鏡の奥に写ったのが——いつもの通りひげだらけなあかみた顔だろうと思うと——不思議だねえ——実に妙な事があるじゃないか
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
最も苦辛くしんした労作と自からも称していた「いちご姫」は昔しの物語の焼直しみて根ッから面白くなかった。一時は好奇心を牽いた「おじゃる」ことば徐々そろそろ鼻に附いて飽かれ出した。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そして、池上は気狂いみた笑い声を立てました。わたくしは、何か自分の身の上に早くも女として大人たちの間から目をつけられているものゝあることを感じました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
調戯からかうんだと思ったのか、あんまり小供みていると思ったのかほとんど取り合う気色はなかった。代助も平生の自分を振り返ってみて、真面目まじめにこんな質問を掛けた今の自分を、むしろ奇体に思った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三十歳前まではもう茶の湯謡曲から書画骨董のような老人みた道楽に浸っていました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「僕がさつき昼寐をしてゐる時、面白い夢を見た。それはね、僕が生涯にたつた一遍逢つた女に、突然夢のなかで再会したと云ふ小説みた御話だが、其方そのほうが、新聞の記事より、聞いてゐても愉快だよ」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
他のときと場合ならわたくしたちの所作は芝居みていて、随分妙なものに受取られただろうが、しかし場合が場合なので、棺輿の担ぎ手も、親戚しんせきも、葬列の人も、みな茶店の老婆と同じ心らしく
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)