早足はやあし)” の例文
セセラ笑って、ひっ返した早足はやあし燕作えんさくがみをする竹童の胸板むないたに足をふんがけて、つかんでいる般若丸はんにゃまるを力まかせに引ったくった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
して間を合せられよ某し儀格別日數の懸る事もあるまじ何分頼み置と云つゝ直樣すぐさま出立なしたりけり元より早足はやあしの半四郎ゆゑ晝夜ちうやとなく道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
電車が二人ふたりの前でまつた。平岡は二三歩早足はやあしに行きかけたが、代助から注意されて已めた。かれの乗るべき車はまだかなかつたのである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
太鼓たいこおとの、のびやかなあたりを、早足はやあしいそいでかへるのに、途中とちうはしわたつてきしちがつて、石垣いしがきつゞきの高塀たかべいについて、つかりさうにおほきくろもんた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
長吉は帽子を取って軽く礼をしたがそのまま、けるように早足はやあしもと来た押上おしあげの方へ歩いて行った。同時に蘿月の姿は雑草の若芽におおわれた川向うの土手の陰にかくれた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これなら背に負うても同じことのように思われるが、物を背に負う者が一歩一歩、足をふみしめて道をあるく習いであるに反して、このほうは奇妙に早足はやあしで行くことができた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私のした本をうで一杯に抱えて、はじけそうな、銀杏返いちょうがえしを見せて振り向きもしないで、町風まちふう内輪うちわながら早足はやあしに歩いて行く後姿なんかを思いながらフイと番地を聞いて置かなかった
秋風 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
まるでりすのようなはやさでかけのぼっていったのは、たけがさ道中合羽どうちゅうがっぱをきて旅商人たびあきんどにばけた丹羽昌仙の密使、早足はやあし燕作えんさくだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庇間合ひあはひ捨置すておき早足はやあし逃出にげいだし手拭ひにて深く頬冠ほゝかむりをなしきもふとくも坂本通りを逃行くをりから向うより町方の定廻り同心手先三人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よし子は、すなおに気の軽い女だから、しまいに、すぐ帰って来ますと言い捨てて、早足はやあしに一人丘を降りて行った。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
長吉ちやうきちは帽子を取つて軽く礼をしたがのまゝ、けるやうに早足はやあしもと来た押上おしあげはうへ歩いて行つた。同時に蘿月らげつ姿すがたは雑草の若芽わかめおほはれた川むかうの土手どてかげにかくれた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
むか廊下らうかから早足はやあしで、すた/\来懸きかゝつた女中ぢよちゆう一人ひとり雪枝ゆきえ立停たちとまつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「やアやア搦手からめてがたの兄弟、丹羽昌仙にわしょうせんさまの密書をもって、安土城あづちじょうへ使いした早足はやあし燕作えんさくが、ただいま立ちかえったのだ。開門! 開門」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うかゞひみるに小猿に相違なきゆゑ心中によろこびしに小兵衞もちらりと振り返り見てやつは三吉めなりと思ひ恐れしにぞ知ぬ顏にて早足はやあしに行過る所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よし子は、素直に気の軽い女だから、仕舞にすぐ帰つてますと云ひ捨てゝ、早足はやあし一人ひとりをかりて行つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
先生もみんなの心を察して、い加減に講義を切りげて呉れた。三四郎は早足はやあしで追分迄帰つてくる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけおほ方角はうがくいて早足はやあしうつした。今日けふ日曜にちえうも、のんびりした御天氣おてんきも、もうすで御仕舞おしまひだとおもふと、すこ果敢はかないやうまたさみしいやう一種いつしゆ氣分きぶんおこつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)