“敵愾心:てきがいしん” の例文
“敵愾心:てきがいしん”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治12
中里介山5
有島武郎4
泉鏡花3
海野十三3
“敵愾心:てきがいしん”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.6%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
彼が攘夷は敵愾心てきがいしんの凝結したるものにして、その立意誠実にして、また一種の経綸ありしや、また決して疑を容れず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そしてこのごろでは勝負などはどうでもいいなどと思っている久野までかなり激烈な敵愾心てきがいしんに支配されるようになった。
競漕 (新字新仮名) / 久米正雄(著)
西国の雄鎮として、共に率先して勤皇の大義を唱へた両藩の先覚者の間に、それほど深刻な敵愾心てきがいしんがあるとは思へない。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
そして織田の将士に、強い敵愾心てきがいしんと多年の訓練とを、骨髄こつずいにまで、植えこんでおいてくれたものである。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
未知の女同志が出あう前に感ずる一種の軽い敵愾心てきがいしんが葉子の心をしばらくは余の事柄ことがらから切り放した。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
骨組のしっかりした男の表情には、憎悪と敵愾心てきがいしんが燃えていた。それがいつまでも輝いている大きい眼から消えなかった。
パルチザン・ウォルコフ (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
しかれどもまた敵愾心てきがいしんのために清国てきこくの病婦をとらへて、犯しはずかしめたる愛国の軍夫あり。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
却つて着物の袖だの裾だのに、ばくりと当つた石の方が、余計にショックも感じるし、敵愾心てきがいしんをそそられもする。
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)
ところで私は岩次郎=これは聖者の幼名=の求道の望みを知ってだいぶこの聖者に対する敵愾心てきがいしんが薄らいで来た。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もちろん、それは度重なる大敗からきた蜀軍への敵愾心てきがいしんであって、内部的な抗争や司馬懿に対する怨嗟えんさではない。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父の苦境や、母のかなしみや、一城の将士のもっている敵愾心てきがいしんなども、女の子だけに、なんとはなく分っていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その辺に転がっていた屍骸の鼻を缺いて来て桔梗の方の敵愾心てきがいしん挑発ちょうはつする道具に使ったのであろう。
吉弥の病気はそうひどくないにしても、罰当り、ごうさらしという敵愾心てきがいしんは、妻も僕も同じことであった。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
それ故にまた重吉は、他の同輩の何人よりも、無智的な本能の敵愾心てきがいしんで、チャンチャン坊主を憎悪していた。
殊に子供の敵愾心てきがいしんが強く現われて来たので、私は往来を歩いていて子供が石を投げやあしまいかと心配でたまりませんでした。
お蝶夫人 (新字新仮名) / 三浦環(著)
しかし彼の敵愾心てきがいしんは人々を最初からてきと決めていたから、憎まれてかえってサバサバと落着いた。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
フランス国民は、プロシヤに対して、盛んに敵愾心てきがいしんをもやし、しきりに「ベルリンへ! ベルリンへ!」と叫んでゐるのであつた。
風変りな決闘 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
それはやがて、強い敵愾心てきがいしんとかわって、哀別あいべつをこばむ決心が、だれのくちからともなく、
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手腕ある政治家はこの辺の消息に通じ巧みに国民の敵愾心てきがいしんを外に向けて国内の紛擾を避けることがある。
人類の生存競争 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
その呟きが相手の敵愾心てきがいしんを激発した。岡田は苦悶の顔色すさまじく、最後の気力をふるって、遂に、劇薬のコップを唇につけた。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
捕虜とした一兵卒といえども気概凛々りんりん敵愾心てきがいしんに燃えているのを見ては、——中国の攻略——これは難事のうちの難事業と
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あッ、黙っているな。敵愾心てきがいしんを感じたかな。」と栖方は云うと、横を向いた青年の背後を、これもそのまま梶と一緒に過ぎていった。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
だが、そこには栗鼠の毛皮の外套をつけた、僕にたいする敵愾心てきがいしんを青ざめた顔面に浮べた女性が寝台の柱に凭掛もたれかかっていた。
と何がなしに新八郎は呻いた。不安と憎悪と敵愾心てきがいしんとが、ひとつになったものを感じたからである。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それでも金谷宿佗住居の段に進んで来ると、云いしれない敵愾心てきがいしんが胸いっぱいにみなぎって来て、かれの眼には残忍の殺気を帯びた。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……今まで一種の敵愾心てきがいしんをもって、どことなく折合いかねていた二人は、この伝説に着眼すると同時に、何もかも忘れて握手してしまった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ましてや屈辱のあとだったから、いつものことを想い出すと共に敵愾心てきがいしん喚起よびおこした。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
けれど、まるで自分を呪うために長生きしているかのようなこの老婆に対して、なぜか武蔵はそれほど強い憎しみも敵愾心てきがいしんも持たなかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にが敵愾心てきがいしんが又胸につきあげて来た——嫉妬と云ふ言葉ででも現はすべき敵愾心が——
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
ほとんど相撲になるのは一人もないような負けぶりでしたから、浦の漁師連のうちにも一種の敵愾心てきがいしんが湧き出して来たのはぜひもありません。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
敵愾心てきがいしんもなく、戦闘心もない、粋な観賞精神が、思わず弾と一緒に開いた響きである。
忠作はまたここで、自分ながらわからない敵愾心てきがいしんの昂奮しきたるのを覚えました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「何だか双方敵愾心てきがいしんをもって云い合ってるようだが、喧嘩けんかでもしたのかい」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
目色、毛色が違うという事が、之程これほどまでに敵愾心てきがいしんを起させるものか。
十二月八日 (新字新仮名) / 太宰治(著)
金井君は馬鹿気た敵愾心てきがいしんを起して、出発する前日に、「今夜行くぞ」と云った。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それは如何にも自信ありに見えて、帆村探偵の敵愾心てきがいしんを燃えあがらせた。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
怪無電の謎を解き魔境征服という以外にも、不義の徒に対する烈々たる敵愾心てきがいしん
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
時代がようやく進んで全民族の宗教はいよいよ統一し、小区域の敵愾心てきがいしんなどは意味もないものになったが、それでも古い名残は今だって少しは認められる。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
平次は何を考へたか、相手にもしません。が、八五郎にしては、それがまたもどかしく何んとかして、平次の敵愾心てきがいしんをかき立てたくてたまらない樣子です。
大江山警部は、帆村の力を借りたい心と、まだ燃えのこる敵愾心てきがいしんとにはさまって、例の「ううむ」をうなった。そのときかたわらに声があった。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
積年の敵愾心てきがいしんは燃えあがらずにいられなかった。退くにしても、背中へ、
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人に対する反抗と敵愾心てきがいしんのために絶えず弾力づけられていなければられないような彼女は、小野田の顔を見ると、いきなり勝矜かちほこったように言った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そうして綾子には「何を!」という反感と敵愾心てきがいしんを起こさしめていた。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
始めは勇気もあり敵愾心てきがいしんもあり悲壮と云う崇高な美感さえあったがついには面倒と馬鹿気ているのと眠いのと疲れたので台所の真中へ坐ったなり動かない事になった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
好奇心や敵愾心てきがいしんから無理に苦い酒に酔ってみようとはしなかったか。
語られざる哲学 (新字新仮名) / 三木清(著)
それが今日のように国を挙げて敵愾心てきがいしんを奮い起して攻めてきたのは呂蒙りょもう、潘璋、傅士仁、糜芳などに対する憤怒で、今はそれらの者もみな亡んでしまった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こちらの胸のうちをのぞきこんだような堀の斡旋あっせんを考えると、あんなに好都合に行ったことが腹立たしく、むしろ敵愾心てきがいしんが刺激され、彼はうずうずした。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
ひとつはそれにたいする敵愾心てきがいしんくははつたので。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし、また一方、この同じ心理がたとえば戦時における祖国愛と敵愾心てきがいしんとによって善導されればそれによって国難を救い戦勝の栄冠を獲得せしめることにもなるであろう。
蒸発皿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
とりわけ、開きが多すぎて……といふ教師の言葉は、甘く心をくすぐる暇もなく、真正面から少年の自尊心を傷つけて、彼をして当てどのない敵愾心てきがいしんのやり場に困じさせた。
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)
物珍しいものを見るという様子をしてはいたけれども、心の中には自分の敵がどんな獣物けだものであるかを見きわめてやるぞという激しい敵愾心てきがいしんが急に燃えあがっていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
やがて木門道から取り上げてきたしかばねに対して、帝は厚き礼を賜い、洛陽を人と弔旗ちょうきに埋むるの大葬を執り行って、いよいよ、討蜀の敵愾心てきがいしんを振起させた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
X大使だと知って、私は猛然と、敵愾心てきがいしんを盛り起した。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
席を立つ時などは多少彼に対する敵愾心てきがいしんさえ起った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、むしろ今川氏に対する敵愾心てきがいしんたかめた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この思ひがけない大胆な予言に彼らは暫くは目を見合はすばかりであつたが、やがてその笑止ながら殊勝な敵愾心てきがいしんはもはや組長の権威をも無視するまでにたかぶつてひとりの奴は仰山に
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
雲霧のあたまには、まだ何処かに相手が子供だという念がありますから、野槍を持ってむかッてきても、それを憤然とたたッ斬る程の大人気おとなげない敵愾心てきがいしんは湧いてこない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馭者の正勝は固く唇をみ締めながら馬を追った。彼の沼のような落ち着きのうちには、激しい敵愾心てきがいしんあらしのように乱れているのだった。彼はそれをじっと抑えつけていた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
の松陰の如きは、その血管中に敵愾心てきがいしん横溢おういつしたるにかかわらず、なお鎖国の小規模に陥らざりしもの、固より象山啓発の力、あずかりて大ならずんばあらず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
これにはさすが江戸ッ児のキチャキチャ(チャキチャキの誤り)弥次郎兵衛、喜多八でさえも荒胆あらぎもをひしがれたので、この一派は江戸者に対して常に一種の敵愾心てきがいしんを蓄えている。
そのありありと眼に出ている反感や、武者修行同士が行きずりに持つ、自負心と自負心との反溌しあう妙な敵愾心てきがいしんなど、武蔵のひとみに顕然けんぜんと読まれるので、武蔵もおのずから、
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年がら年じゅうこづきまわされている彼らは、これだけは自分の自由意志だと思いこんだものがぐわんとはばまれるその刹那に、想像できないほどの敵愾心てきがいしんあおられるのであった。
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
そして萬事につけ敵愾心てきがいしんを揷むに至つた。
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
声を掛けたのは、高城たかぎ鉄也という、東京新報の花形記者で、足の勇とは商売敵に当るのですが、敵愾心てきがいしんよりは友情の方をどっさり持って居ようという、優秀な感じのする若い男でした。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
即ち敵愾心てきがいしんの結果になれるものと覚候。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
いくら見たくても、あればっかりは拝見が叶うまいと、閨秀美人けいしゅうびじんと豪傑画家とが、しきりに歎息しているのを盗み聴いて、そうしてまたしても、むらむらと敵愾心てきがいしんが起って来た。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
敵愾心てきがいしんは自尊心の傷からんだ。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
敵情を探るのは探偵の係で、たたかいにあたるものは戦闘員に限る、いふて見れば、敵愾心てきがいしんを起すのは常業のない閑人ひまじんで、すすんで国家に尽すのは好事家ものずきがすることだ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ましてさかんな敵愾心てきがいしんで燃えているような京都の空気の中へ、御隠居の同意を得ることすら危ぶまれるほどの京都へ、はたして藩主が飛び込んで行かれるか、どうかは、それすら実に疑問であった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
将門の敵愾心てきがいしん執拗しつようさ、その駆使する兵馬のはやさ、それは、かつて信濃路の千曲川に追い詰められたときも、いやという程、身を以てその経験をめさせられている貞盛であった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
荒海を征服してわがもの顔に行く、その雄姿を、この大洋の上に見せられると、白雲も、外夷を軽蔑する頭を以て、充分の敵愾心てきがいしんを呼び起されつつも、なおその姿の懸絶に動かされないわけにはゆかない。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その敵愾心てきがいしんの猛烈さにも、毛利勢はまず一泡吹いたが、より以上、彼等が苦闘に陥った理由は、この姫路の城下町が、他国の城下町とは、まったく異なる性格を持っていたことを知らずにいたことにある。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この不思議な悲しみの合唱は、エンジンの単調な響きともつれ合って、いつまでも、いつまでもつづいた。泣きに泣いて、女賊の胸に日頃の邪悪が眼ざめるまで、早苗さんの心に敵愾心てきがいしんが湧きあがるまで。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ここで、はじめて七兵衛は、鬼に対する一種の敵愾心てきがいしんと、満々たる稚気とを振い起して、その一つ家に向って近づいてみると、ほどなく——右の一つ家のつい眼の前のところへ来て、小流れにでくわしました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
敵情を探るのは探偵のかかりで、たたかいにあたるものは戦闘員に限る、いうてみれば、敵愾心てきがいしんを起すのは常業のない閑人ひまじんで、すすんで国家に尽すのは好事家ものずきがすることだ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ、いよいよ生きながら白骨化して行く自分を感じて、これではいけないとたとえ遠くからでも無理にも真佐子を眺めて敵愾心てきがいしんやら嫉妬やら、にくしみやらを絞り出すことによって、意力にバウンドをつけた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もし、いて、恟々おどおどなどしていると、あたりの鋭い白眼が、たちまち酒気と敵愾心てきがいしんに駆られて、何をやり出すかも知れない——実に、間髪の危機といってもいい、殺気のなかに彼はいたからである。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸ッ子でないものは人でないような扱いをしていたのは、一方からいうと、江戸が東京となって、地方人に蹂躙じゅうりんせられた、本来江戸児とは比較にもならない頓馬とんまな地方人などに、江戸を奪われたという敵愾心てきがいしん
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
しかし看護員たる躰面を失ったとでもいうことなら、弁解も致します、罪にも服します、責任もになうです。けれども愛国心がどうであるの、敵愾心てきがいしんがどうであるのと、さようなことには関係しません。自分は赤十字の看護員です。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どんなにもがいてみてもまだまだほんとうに自分の所有を見いだす事ができないで、ややもするとこじれた反抗や敵愾心てきがいしんから一時的な満足を求めたり、生活をゆがんで見る事に興味を得ようとしたりする心の貧しさ——それが私を無念がらせた。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「君が千日つわものを養い給うのは、ただ一日の用に備えんためである。僕はまだまだ黄口こうこうの若年ですが、こんな時こそ、日頃の机上の兵学を、この敵愾心てきがいしんと誠忠の心を以て、君に酬わんと思う者であります。どうか小生をまっ先に派遣してください」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
留守の間に自派の振わざるを見、阪東派の盛んなのを見て、いかなる感慨をいだいたか、それはわからないが、力枝、大吉、力代といったような弟子たちを集めて、女芝居を組織したところを以て見れば、多少の義憤と、敵愾心てきがいしんを持っていたことは争われないと思われる。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一本の剣で数十人のライバルを倒す為、一生、惨憺たる修行をした宮本武蔵という前近代人が、原子力時代といわれる今日でもなお、ぼくたち同胞の英雄として読まれ慕われているという事実は、日本人の近代文明に対する劣等感、嫉妬、軽蔑、敵愾心てきがいしん等々から生れた遣切れぬ奇蹟であろうか。
さようなら (新字新仮名) / 田中英光(著)