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憂悶
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ゆうもん
ふりがな文庫
“
憂悶
(
ゆうもん
)” の例文
彼と話しているうちに、新蔵はいくらか
憂悶
(
ゆうもん
)
が軽くなった。憤怒して去った友達の行く先に、まだ幾分かの気懸りは残していたが。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その間に焦燥し
憂悶
(
ゆうもん
)
したのは
尤
(
もっと
)
もで、『大日本史歌人列伝』に、性狂燥で進取に急だと書いてあるのは事実であるにしても同情のない言であった。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
綾子は
頤
(
おとがい
)
を襟に
埋
(
うず
)
めぬ。
磨
(
みが
)
かぬ玉に
垢
(
あか
)
着きて、清き襟脚
曇
(
くもり
)
を帯び、
憂悶
(
ゆうもん
)
せる心の風雨に、
艶
(
えん
)
なる姿の花
萎
(
しぼ
)
みて、
鬢
(
びん
)
の毛頬に
乱懸
(
みだれかか
)
り、
俤
(
おもかげ
)
太
(
いたく
)
く
窶
(
やつ
)
れたり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
発病以来苦痛も中々あったであろうが、一言も
不平
(
ふへい
)
憂悶
(
ゆうもん
)
の語なく、何をしてもらっても「
有難
(
ありがと
)
う/\」と心から感謝し、信仰と感謝を以て此世を去った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
憂悶
(
ゆうもん
)
の雲は忽ち
無辜
(
むこ
)
の青年と、金を盗まれた両親との上に
掩
(
おお
)
い掛かる。それを余所に見て、余りに気軽なマリイ・ルイイズは、
閨
(
ねや
)
に入って夫に戯れ掛かる。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
ナポレオン戦役の時、ロシア軍の捕虜になったフランスの一士官が、
憂悶
(
ゆうもん
)
のあまり数学の研究に没頭していたという話は、妙に彼の心に触れるものがあった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「英雄ポロネーズ」に
偲
(
しの
)
ぶポーランド華やかなりし中世騎士の勇姿、「
雨滴
(
あまだ
)
れのプレリュード」に示した
凄
(
すさ
)
まじくも美しい
憂悶
(
ゆうもん
)
は、何に例えるものがあろう。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
帰途
勧工場
(
かんこうば
)
に入りて
筆紙墨
(
ひっしぼく
)
を買い
調
(
ととの
)
え、
薄暮
(
はくぼ
)
旅宿に帰りけるに、稲垣はあらずして、古井
独
(
ひと
)
り何か
憂悶
(
ゆうもん
)
の
体
(
てい
)
なりしが、妾の帰れるを見て、共に晩餐を
喫
(
きっ
)
しつつ
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
およそ自ら自己のうちに、労働の
埃
(
ほこり
)
のごとき
聖
(
きよ
)
き貧しさを多少有せずして、人はいかにして日夜絶えずあらゆる
憂悶
(
ゆうもん
)
や不運や困窮に接することができるであろうか。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
『
貴方
(
あなた
)
の
云
(
い
)
うジオゲンは
白痴
(
はくち
)
だ。』と、イワン、デミトリチは
憂悶
(
ゆうもん
)
して
云
(
い
)
うた。『
貴方
(
あなた
)
は
何
(
なん
)
だって
私
(
わたくし
)
に
解悟
(
かいご
)
だとか、
何
(
なん
)
だとかと
云
(
い
)
うのです。』と、
俄
(
にわか
)
に
怫然
(
むき
)
になって
立上
(
たちあが
)
った。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
この春の
齎
(
もたら
)
せしものは痛悔と失望と
憂悶
(
ゆうもん
)
と、別に
空
(
むなし
)
くその身を
老
(
おい
)
しむる
齢
(
よはひ
)
なるのみ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
兵部卿の宮が
憂悶
(
ゆうもん
)
しておいでになり、そのころ病気にもおなりになったこともお思いになっては、宮の心情も哀れにお思われになり、いずれにしても口の出されぬ人のことであるとして
源氏物語:55 手習
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そっと面をあげて見ると、明敬の
眉間
(
みけん
)
が曇っている、額に深く
皺
(
しわ
)
を刻んでどうやら
憂悶
(
ゆうもん
)
に苦しんでいるようすであった。かつて例のないことなので久之進は何か間違いがあったなと直感した。
粗忽評判記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
深い
憂悶
(
ゆうもん
)
と、人生に対する疑問とが彼を
蜘蛛
(
くも
)
の網のように包みとり巻いた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
現在のこうした
憂悶
(
ゆうもん
)
が彼の心に生まれたのは、もうずっとずっと前の事で、それがしだいに生長し、積もり積もって、最近に至っては、恐ろしい、奇怪な、ありうべからざる疑問の形をとって
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
源内先生の
憂悶
(
ゆうもん
)
の種はこんなことだった。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
燭のゆらぐたび、
鬢
(
びん
)
の
毛
(
け
)
も立つようにうごいている。それが
惨
(
さん
)
として、そそけ立つかに見えるほど、
憂悶
(
ゆうもん
)
の陰がその姿に濃い。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのうえ優しい心の持主なる作曲者は、ニューヨークの生活の圧迫に堪え兼ねて、
癒
(
いや
)
し
難
(
がた
)
きホームシックに悩まされ、
憂悶
(
ゆうもん
)
の日を送ることが多かったのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
内心の
憂悶
(
ゆうもん
)
、自分の受けた不公平についての根深い感情、それから反動、もしありとすれば、善なるもの
無垢
(
むく
)
なるもの正しきものにさえ対する反動、などがあった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
而して彼女をも同じ波瀾に捲き込むべく努めた。斯等の手紙が
初心
(
うぶ
)
な彼女を
震駭
(
しんがい
)
憂悶
(
ゆうもん
)
せしめた
状
(
さま
)
は、
傍眼
(
わきめ
)
にも気の毒であった。彼女は従順にイブセンを読んだ。ツルゲーネフも読んだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
これよりして多事ならんと、思去り思来たりて、綾子は車上に
憂悶
(
ゆうもん
)
せり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
急にまたしても自分の
憂悶
(
ゆうもん
)
の方へ帰って行きながら
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
光秀は、ふたたび
憂悶
(
ゆうもん
)
に
囚
(
とら
)
われだした。——そういう事々が、彼の澄んだ眼には、余りに見えすぎるための憂鬱症であった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
前日まであれほど
憂悶
(
ゆうもん
)
のうちに沈んでいた罪人は、今は輝きに満ちていた。彼は自分の魂がやわらいでいるのを感じ、そして神に希望をつないでいた。司教は彼を抱擁した。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
主人六兵衛の眼を
怖
(
おそ
)
れて一人も近づかず、三度の物を運んでくれる小僧の留吉だけは、何かと心配をしてくれますが、十三や十四の少年では、染五郎の
憂悶
(
ゆうもん
)
を救う工夫もありません。
銭形平次捕物控:137 紅い扱帯
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
帝には、なお、複雑な
憂悶
(
ゆうもん
)
があったのである。何后のほかに、王美人という寵姫があって、その腹にも皇子の
協
(
きょう
)
が生れた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分のそばに、目の前に、子供の単純な恐るべき額の上に、ますます崇高に勢いよく開けてくるその美を、彼は自分の醜さと老年と悲惨と刑罰と
憂悶
(
ゆうもん
)
との底から、
狼狽
(
ろうばい
)
して見守った。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
男の
憂悶
(
ゆうもん
)
と気の荒くなるのをみるのみでしたが、それでも彼女は悔みません、男が嫌えば嫌うだけの面白味、男が
悶
(
もだ
)
えれば悶える姿を見る面白味
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さすが、
甲州流
(
こうしゅうりゅう
)
の
軍学家
(
ぐんがっか
)
、
智謀
(
ちぼう
)
のたけた
民部
(
みんぶ
)
といえども、この
急迫
(
きゅうはく
)
な
処置
(
しょち
)
には、ほとんど
困惑
(
こんわく
)
したらしく、
憂悶
(
ゆうもん
)
の色がそのおもてを
暗
(
くら
)
くしている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そちの体の生れつきひよわいのは、一族の中から一子はそれに捧げよとの、仏天のおいいつけかも知れないのだ。宿命というものである。いらざる
憂悶
(
ゆうもん
)
は
抱
(
いだ
)
かぬがよい
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たとえば、肝を病めば、涙多く、心をやぶれば、
恟々
(
きょうきょう
)
としてものに恐れ、
脾
(
ひ
)
をわずらえば、事ごとに怒りを生じやすく、肺の
虚
(
きょ
)
するときは
憂悶
(
ゆうもん
)
を抱いて、これを
解
(
げ
)
す力を失う。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は微かな
憂悶
(
ゆうもん
)
を覚えた。いや、
慟哭
(
どうこく
)
するだけの精気すら、すでにないのかもしれない。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「久しぶり
憂悶
(
ゆうもん
)
を忘れました。愚かな日常の
齷齪
(
あくせく
)
が、われながら
嘲
(
わら
)
えて来ます」
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると、すでに鎌倉では、彼のそうした
憂悶
(
ゆうもん
)
のあらわれを、敏感に知っていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
典膳は見
恍
(
と
)
れていた。この朝から彼はまた青年の
憂悶
(
ゆうもん
)
を深くした。
剣の四君子:05 小野忠明
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“憂悶”の意味
《名詞》
憂悶(ゆうもん)
何かを憂いて悶えること。
(出典:Wiktionary)
憂
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
悶
漢検準1級
部首:⼼
12画
“憂”で始まる語句
憂
憂鬱
憂慮
憂目
憂欝
憂愁
憂身
憂鬱症
憂世
憂惧