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わんきょく
ふりがな文庫
“
彎曲
(
わんきょく
)” の例文
市中の地下鉄と違って線路が
無暗
(
むやみ
)
に
彎曲
(
わんきょく
)
しているようである。この「上野の山の腹わた」を通り抜けると、ぱっと世界が明るくなる。
猫の穴掘り
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
先ず
彎曲
(
わんきょく
)
した屋根を戴き、装飾の多い扉の左右に
威嚇的
(
いかくてき
)
の偶像を安置した門を
這入
(
はい
)
ると真直な敷石道が第二の門の階段に達している。
霊廟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
間口の狭い、簡素な家で、ほかの家々と同じく
彎曲
(
わんきょく
)
した、穴の開いた破風がついている。そして彼はわれを忘れてこの家に眺め入った。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
それは丘の上にあり、その丘をめぐって小川が美しく
彎曲
(
わんきょく
)
し、そしてくねくねとうねりながら、ひろびろとした柔かい牧場を流れてゆく。
寡婦とその子
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
それがいまわしい黒い虹の様に醜く
彎曲
(
わんきょく
)
し、その先端に、実物を千倍に拡大した程の槍の穂先が、ドキドキと鋭く光って見えた。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
牛窪村は谷がややひらけて、手取川が大きく
彎曲
(
わんきょく
)
した島のような地形の上にあった。村の三方を川の流れがまわっていた。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お城を取りまく堀と、そこから
彎曲
(
わんきょく
)
した傾斜で
聳
(
そび
)
える巨大な石垣とに就いてはすでに述べた。この石垣は東京市の広い部分をかこみ込んでいる。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
その自然木の
彎曲
(
わんきょく
)
した一端に、
鳴海絞
(
なるみしぼ
)
りの
兵児帯
(
へこおび
)
が、
薩摩
(
さつま
)
の
強弓
(
ごうきゅう
)
に新しく張った
弦
(
ゆみづる
)
のごとくぴんと薄を押し分けて、先は谷の中にかくれている。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
西のほうの海岸にみるような赤ちゃけた地肌のあらわな
花崗岩
(
かこうがん
)
の丘がぎざぎざに
連
(
つらな
)
り、うねうねと
彎曲
(
わんきょく
)
して、かなり間遠く両岸を形づくっている。
母の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
乳ト
臀部
(
でんぶ
)
ノ発達ハ不十分デ、
脚
(
あし
)
モシナヤカニ長イニハ長イケレ※、
下腿部
(
かたいぶ
)
ガヤヤO型ニ外側ヘ
彎曲
(
わんきょく
)
シテオリ、遺憾ナガラマッスグトハ云イニクイ。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彎曲
(
わんきょく
)
した短い足にズボンをはき、洋服をきて、チョコチョコ歩き、ダンスを踊り、畳をすてて、安物の椅子テーブルにふんぞり返って気取っている。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
川口は南方は
彎曲
(
わんきょく
)
し、石で護岸工事がほどこしてある。岸はかなり高い。五郎は腰をおろした。また瓶の栓を抜いた。熱いものが
咽喉
(
のど
)
をつらぬいた。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
あまりに低い天井の下にあって人の背骨が
彎曲
(
わんきょく
)
するごとく、人の心も過重の不幸の圧迫の下に形
歪
(
ゆが
)
んで、不治の醜さと不具とに陥ることがあるだろうか。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
椅子もそれに合はせて造つてあつて、
靠
(
もた
)
れが高く、脚が優美な
彎曲
(
わんきょく
)
をなして、なかなか凝つた意匠である。
灰色の眼の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
縫い合わせた痕が醜く幾重にも
痙攣
(
ひきつ
)
って、ダブダブと皺がより、
彎曲
(
わんきょく
)
した
踝
(
くるぶし
)
から土踏まずは
瘤
(
こぶ
)
のように隆起して、さながら死んだ
鱶
(
ふか
)
の腹でも眺めているような
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
周防の深い山襞が、南に向って次第にゆるやかにわかれ、低まり、やがて砂の白い
彎曲
(
わんきょく
)
した海岸となる。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「いき」な建築は
円窓
(
まるまど
)
と
半月窓
(
はんげつまど
)
とを許し、また床柱の曲線と
下地窓
(
したじまど
)
の竹に
纏
(
まと
)
う
藤蔓
(
ふじづる
)
の
彎曲
(
わんきょく
)
とを
咎
(
とが
)
めない。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
かかる群集の
動揺
(
どよ
)
む下に、冷然たる線路は、日脚に薄暗く沈んで、いまに
鯊
(
はぜ
)
が釣れるから待て、と大都市の泥海に、入江のごとく
彎曲
(
わんきょく
)
しつつ、
伸々
(
のびのび
)
と静まり返って
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
岸に沿って
彎曲
(
わんきょく
)
している防波堤の石に腰かけて
杖
(
つえ
)
をたらせばその先の一、二寸はらくに海水にひたる。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
軒端の線が両端に至ってかすかに上へ
彎曲
(
わんきょく
)
しているあの曲がり工合一つにも、屋根の重さと柱の力との間の安定した釣り合いを表現する有力な契機がひそんでいる。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
温度の相違などに依って空気の密度が局部的に変った場合、光線が
彎曲
(
わんきょく
)
して思いがけない異常な方向に物の
像
(
すがた
)
を見る事があるね。
所謂
(
いわゆる
)
ミラージュとか蜃気楼とかって奴さ。
石塀幽霊
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
そのとき、かれは緋鯉の丸っこい胴体が
捩
(
ね
)
じられて、
彎曲
(
わんきょく
)
されて滑らかに
露
(
あら
)
われたのをみた。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そこの石畳は一つ一つが踏みへらされて古い
砥石
(
といし
)
のように
彎曲
(
わんきょく
)
していた。時計のすぐ下には東北御巡遊の節、
岩倉具視
(
いわくらともみ
)
が書いたという木の額が古ぼけたままかかっているのだ。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
(岩切)という人にあって聞きました。トラホームだの
頸腺腫
(
けいせんしゅ
)
だのX
彎曲
(
わんきょく
)
だの、というくだりは、あなたに、いい、といわれたばかりに、どこへでも持って歩いていたのです。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
いくつもいくつも川の
彎曲
(
わんきょく
)
部を越えて上って行くと、ひとりの女が川岸で踊っていた。
えぞおばけ列伝
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
近づくままに
熟視
(
じゅくし
)
すると、岸には百
丈
(
じょう
)
の
岩壁
(
がんぺき
)
そばだち、その前面には黄色な砂地がそうて右方に
彎曲
(
わんきょく
)
している、そこには樹木がこんもりとしげって、暴風雨のあとの快晴の光をあびている。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
『
新撰字鏡
(
しんせんじきょう
)
』に「岸久万、また
太乎里
(
たおり
)
、また井太乎利、曲岸なり」とある。ただしクマもタオリもともにまた山についてもいう語であるからこれは単に
彎曲
(
わんきょく
)
というだけの意味であったと思う。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
装飾は全然ついてはいないがきわめて
彎曲
(
わんきょく
)
して上へ昇っているため、中くらいの男でもそこにはまっすぐには立てず、しょっちゅう手すりの前に身体を乗り出していなければならないほどだった。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
他の一方には陰極が
插入
(
そうにゅう
)
されていて、そこから強力な陰極線が発射されると、その一道の電子の流れは球形磁石の磁場のためにその経路を
彎曲
(
わんきょく
)
され
B教授の死
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
砂浜がゆるく
彎曲
(
わんきょく
)
してゆき、やがてしだいに岩の多い磯になると、近くに潮の流れでもあるとみえ、波はさらに荒あらしく、岩礁を
噛
(
か
)
んでは激しく
飛沫
(
しぶき
)
をあげた。
雨の山吹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
質屋の
暖簾
(
のれん
)
だの
碁会所
(
ごかいしょ
)
の看板だの
鳶
(
とび
)
の
頭
(
かしら
)
のいそうな
格子戸作
(
こうしどづく
)
りだのを左右に見ながら、彼は
彎曲
(
わんきょく
)
した
小路
(
こうじ
)
の中ほどにある
擦硝子張
(
すりガラスばり
)
の扉を外から押して内へ入った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その巡邏隊は、カドラン街の下にある
彎曲
(
わんきょく
)
した
隧道
(
すいどう
)
と三つの行き止まりとを見回ってきたところだった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
巨人の指は忽ち内部に
彎曲
(
わんきょく
)
し始め、見る見る内に彼の主人である韮崎を握り締めてしまったのである。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
乗客達は皆窓から首を出したが、畑の真ん中の、線路が少し
彎曲
(
わんきょく
)
している土手の上で立ち往生したまま動かなくなっており、どう云う事故なのか、見たところちょっと分らなかった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこで石垣や門の持っている固有の様式がまた明白に己れ自身を見せ始めたのである。石垣や門の屋根などの持っている
彎曲
(
わんきょく
)
線は、対岸の西洋建築には全然見いだされないものである。
城
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
砂浜は大きく
彎曲
(
わんきょく
)
して凹んでいる。海が長年かかって、
浸蝕
(
しんしょく
)
したのである。今眺める海は静かだが、石垣島あたりで発生した台風が、枕崎や佐多岬に上陸して荒れ狂い、鹿児島から北上する。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
女の子のうんうん
唸
(
うな
)
って、顔を赤くして針金ねじ曲げた子供の柔かいちからが、そのまま、じかに残っていて、
彎曲
(
わんきょく
)
のくぼみくぼみに、その子供の小さい努力が、ほの温くたまっていて、君は
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その線路の右端の下方、すなわち紙の右下隅に
鶯横町
(
うぐいすよこちょう
)
の
彎曲
(
わんきょく
)
した道があって、その片側にいびつな長方形のかいてあるのがすなわち子規庵の所在を示すらしい。
子規自筆の根岸地図
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
第二に右の方には、カドラン街の
彎曲
(
わんきょく
)
した
隧道
(
すいどう
)
が歯のような三つの行き止まりを持って控えている。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
いぬそばや
藺
(
い
)
に似た草などの生えている
水際
(
みずぎわ
)
の線は、出入りや
彎曲
(
わんきょく
)
が多く、対岸の林の樹影をうつす水は、たっぷりと
溢
(
あふ
)
れるほどの水量であるが、それは不透明に濁っていた。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ゴリラは歯をむき出して、
威嚇
(
いかく
)
しながら、頸と太腿を掴んだ手を、ギュウとしめて、令嬢の死骸を弓の様に
彎曲
(
わんきょく
)
させた。今にも背骨がペキンと折れてしまうのではないかと思われる程。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
真中
(
まんなか
)
に
袂時計
(
たもとどけい
)
ほどな丸い肉が、
縁
(
ふち
)
とすれすれの高さに
彫
(
ほ
)
り残されて、これを
蜘蛛
(
くも
)
の
背
(
せ
)
に
象
(
かた
)
どる。中央から四方に向って、八本の足が
彎曲
(
わんきょく
)
して走ると見れば、先には
各
(
おのおの
)
鴝鵒眼
(
くよくがん
)
を
抱
(
かか
)
えている。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
首の長いガラスのフラスコの底板を思い切り薄くして少しの曲率をもたせて
彎曲
(
わんきょく
)
させたものである。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
道の左を流れている上川が、
諏訪
(
すわ
)
の湖へはいる前に少し左へ曲ってゆく、その
彎曲
(
わんきょく
)
したところが草原になっていた。秀之進はそれを見当に足を早めていって、しずかに五人を追いぬいた。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
すると床の上に釣るした電気灯がぐらぐらと動いた。
硝子
(
ガラス
)
の中に
彎曲
(
わんきょく
)
した一本の光が、
線香煙花
(
せんこうはなび
)
のように
疾
(
と
)
く
閃
(
きら
)
めいた。余は生れてからこの時ほど強くまた恐ろしく光力を感じた事がなかった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし実戦においては中間の物を打つ必要があって、敵が近くにおり発射を急ぐ場合には、ますますそれが大切となる。十六世紀の旋条砲の弾道が
彎曲
(
わんきょく
)
するその欠点は、装薬の弱さからきている。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
風の影響もあるだろうが、それよりもむしろ、筒口を出る際の、偶然の些細な条件のために、時々は弾道が上の方でひどく
彎曲
(
わんきょく
)
して、とんでもない方へ行って開く事もある。
雑記(Ⅱ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彼女は五尺そこそこの身長で、骨も太く肉付き
逞
(
たくま
)
しく、
赭
(
あか
)
い縮れ髪で、腰部は臼と云う以外に形容をなし難い。足は俗にがみ
股
(
また
)
といって、外方に
彎曲
(
わんきょく
)
して短く太い。その上方に
臀部
(
でんぶ
)
が怒り出ておる。
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
谷中の台地から
田端
(
たばた
)
の谷へ面した傾斜地の中腹に沿う
彎曲
(
わんきょく
)
した小路をはいって行って左側に、小さな荒物屋だか、駄菓子屋だかがあって、そこの二階が当時の氏の仮寓になっていた。
中村彝氏の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
この花のおしべが
釣
(
つ
)
り
針
(
ばり
)
のように
彎曲
(
わんきょく
)
してその
葯
(
やく
)
を花の奥のほうに向けていること
沓掛より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彎
漢検1級
部首:⼸
22画
曲
常用漢字
小3
部首:⽈
6画
“彎曲”で始まる語句
彎曲線
彎曲部
彎曲率
彎曲艙骨