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干菜
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ほしな
菜が
洗ひ
畢つた
時枯葉の
多いやうなのは
皆釜で
茹でゝ
後の
林の
楢の
幹へ
繩を
渡して
干菜に
掛けた。
自分等の
晝餐の
菜にも
一釜茹でた。
家へ入ると、通し庭の
壁側に据ゑた小形の
竈の前に小さく
蹲んで、
干菜でも煮るらしく、鍋の下を焚いてゐた母親が
宛如、
秋の
掛稻に、
干菜、
大根を
掛けつらね、
眞赤な
蕃椒の
束を
交へた、
飄逸にして
錆のある
友禪を
一面ずらりと
張立てたやうでもあるし、しきりに
一小間々々に、
徳利にお
猪口、お
魚に
扇
やがて
漬物甕や、
飯櫃や、鶏や、
干菜や
漿塩壺など思い思いに抱えてきた。
お
品は
起きて
居ても
別に
疲れもしないのでそつと
草履を
穿いて
後の
戸口から
出て
楢の
木へ
引つ
張つた
干菜を
見た。それから
林を
斜に
田の
端へおりて
又牛胡頽子の
側に
立つて
其處をそつと
踏み
固めた。
大根の
時雨、
干菜の
風、
鳶も
烏も
忙しき
空を、
行く
雲のまゝに
見つゝ
行けば、
霜林一寺を
抱きて
峯靜に
立てるあり。
鐘あれども
撞かず、
經あれども
僧なく、
柴あれども
人を
見ず、
師走の
市へ
走りけむ。
それで
其の
蔬菜が
庖丁にかゝる
間は
口にこそつぱい
干菜や
切干やそれも
缺乏を
告げれば、
此れでも
彼等の
果敢ない
貯蓄心を
最も
發揮した
菜や
大根の
鹽辛い
漬物の
桶にのみ
其の
副食物を
求めるのである。