帰途かへり)” の例文
旧字:歸途
帰途かへりに大陸ホテルの前を過ぎると丁度ちやうど今の季節に流行はやる大夜会の退散ひけらしく、盛装した貴婦人のむれ続続ぞくぞくと自動車や馬車に乗る所であつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
僕が四年に君が三年だツたかな、学校の帰途かへりに、そら、酒屋の林檎畑へ這入ツた事があツたらう。何でも七八人も居たツた様だ。………………
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
松島まつしまから帰途かへりに、停車場ステーシヨンまでのあひだを、旅館りよくわんからやとつた車夫しやふは、昨日きのふ日暮方ひぐれがた旅館りよくわんまで、おな停車場ていしやばからおくつたをとこれて、その心易こゝろやす車上しやじやうはなした。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
野崎氏はいやうにはからつた。富豪かねもちあと金高きんだかを聞いて、自分の胸算用より少し出し過ぎたなと思つた。ちやう婦人をんな客が百貨店デパートメントストア帰途かへりにいつも感じるやうに……。
「いゝえ、お嬢様、上野浅草へいらしやるのを、心配とも何とも思ひは致しませんが——帰途かへり大洞おほほら様の橋場の御別荘へ、お寄りなさるとおつしやるぢや御座いませんか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
彼に心を寄せしやからは皆彼が夜深よふけ帰途かへりの程を気遣きづかひて、我ねがはくは何処いづくまでも送らんと、したたおもひに念ひけれど、彼等の深切しんせつは無用にも、宮の帰る時一人の男附添ひたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
帰途かへりに芝居の前のその家へ寄ると、ピニヨレ夫人は僕等にカンキナ酒をいで出しながら「今夜お差支さしつかへが無いなら山荘の方へ馬車で案内したい」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
『今井さん。今日はわしも煎餅組にして貰ひませうか。飲むと帰途かへり帰途かへりだから歩けなくなるかも知れない。』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
火のの散るなかをうろ/\駈けづり廻つて、帰途かへりには茶飯ちやめしの一杯も掻き込んで、いゝ気で納まつてゐた。
この人の紹介せうかい社中しやちうに加はる事になつたのでした、其頃そのころ巌谷いはや独逸協会学校どいつけふくわいがくかうまして、おばうさんの成人せいじんしたやうな少年で、はじめ編輯室へんしうしつに来たのは学校の帰途かへりで、黒羅紗くろらしや制服せいふくを着てました
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
喧嘩の帰途かへりは屹度私の家へ寄る。顔に血の附いてる事もあれば、衣服きものが泥だらけになつてる事もあつた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
照子がその手帛はんけち命令いひつけ通り方々へ配つたか、それともこつそり箪笥たんすの中にしまつてゐるかは私の知つた事ではないが、親切な大隈侯は先日こなひだ養子の信常氏が九州へ往つた帰途かへりにも
帰途かへり、とある路傍みちばたの田に、稲の穂が五六本出めてゐたのを見て、せめて初米の餅でもくまで居れば可いのにと、誰やらが呟いた事を、今でも夢の様に記憶おぼえて居る。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
所へ魚釣うをつり帰途かへりらしい子供が一人通りかゝつた。手には小鮒こふなを四五ひきげてゐる。青木氏は懐中ふところ写生帖スケツチブツクから子供の好きさうなを一枚引き裂いて、それと小鮒の二尾程とかへつこをした。
『目賀田先生はああして先になつてますけれども、帰途かへりには屹度きつと一番後になりますよ。』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
俊子が一人離れて側道わきみちれてしまへばそれでいゝのだが、帰途かへりの都合からそのなかの一人と途連みちづれになるやうな事があると、あとの二人は何だか物寂しい、だまされたやうな気持になるのださうだ。
汽車の帰途かへりの路すがら、奈何どうしても通抜とほりぬけが出来なかつたから、突然ではあつたが、なつかしい此村を訪問したと云ふ事、今では東京に理髪店を開いてゐて、熟練じゆくれんな職人を四人も使つてるが
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
鼓村氏は二三日その友人のとこで遊んだ。帰途かへりにその渡し場を通ると、矢張り同じ船頭が待つてゐて、慌てて頬冠ほゝかむりを取つた。その瞬間鼓村氏は二三日前の悪戯いたづらを思ひ出した。で、しかつべらしく言つた。
投網打とあみうち帰途かへりに岩鼻の崖から川中へ転げ落ちて、したたか腰骨を痛めて三日寝た、その三日だけは、流石に、盃を手にしなかつたさうなと不審がられた程の大酒呑、酒の次には博奕ばくち所好すき
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その日は帰途かへりに雨に会つて来て、食事に茶の間に行くと、外の人はう済んで私一人限ひとりきりだ。内儀は私に少し濡れた羽織を脱がせて、真佐子に切炉の火でさせ乍ら、自分は私に飯をよそつて呉れてゐた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『そんなら私、帰途かへりには早く歩いてお目にかけますわ。』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)