寸暇すんか)” の例文
だれもかれも寸暇すんかをおしんで働かねば暮しのたたぬ村、だが、だれもかれも働くことをいとわぬ人たちであることは、その顔を見ればわかる。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
かれひる寸暇すんかをもをしんで勞働らうどうをするので一つにはれがなべの仕事しごとはげないほど疲勞ひらうおぼえしめてるのでもあるが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
下士のはいようやく産を立てて衣食のうれいまぬかるる者多し。すでに衣食を得て寸暇すんかあれば、上士の教育をうらやまざるを得ず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自分の代りに、弥兵衛をつかわしたが、何ぶん、まだ戦のさいちゅうだから、いずれ寸暇すんかができたら、見舞うてやるぞ。くれぐれからだを大事にせよ。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の祖父は医師と卜者ぼくしゃを業とし、四方の村々から療治やうらないに招かれて、ほとんど寸暇すんかもないくらいであった。
幸いにして少年ブラームスの向学心は、寸暇すんかぬすんで教養を高め、後年の気高い情操、哲学に対する識見などの土台を、艱難かんなんのうちに積み上げたのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
すなはち文化の一具を欠くものと謂可いふべし。(中略)余ここに感ずる所あり。寸暇すんかを得るの際、米仏とうの書をひもとき、その要領を纂訳へんやくしたるもの、此冊子さつしを成す。よつて之を各国演劇史となづ
本の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
六日目の朝、やっと寸暇すんかを見出した望月少佐は、久し振りで朝食後の山の散歩に出かけた。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
患者かんじゃが門前に殺到さっとうし、寸暇すんかもない有様ありさまとなってしまいました。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
あづか渡世とせい寸暇すんかなければ中々田舍ゐなかへ尋ね行事などは思ひもよらず心にかゝる計りにて今迄疎遠そゑん打過うちすごしたり夫に付ても此間の手紙に細々こま/″\と言越たるには追々おひ/\不時ふじの災難や水難旱損かんそんの打續きて思はぬ入費ものいりの有しゆゑ親のゆづりの身上も都合つがふしくなりし由じつに當時の世の中は田舍も江戸もつまがちしか呉々くれ/″\返事へんじ言遣いひつかはしたる通り親は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おつぎは八釜敷やかましく勘次かんじ使つかはれてひるあひだ寸暇すんかもなかつた。がひつそりとするころはおつぎは卯平うへい小屋こやなやんでこしんでやつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
春日山かすがやま太守たいしゅ景勝様には、当城に御在陣ときき、主人羽柴筑前守様にも、千載せんざいの好機なれ、ぜひとも、一夕いっせきお会い申したいと、陣旅じんりょ寸暇すんかをさいて、富山よりこれへ参ってござる。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれ只管ひたすらひぢ瘡痍きず實際じつさいよりも幾倍いくばいはるかおも他人ひとにはせたい一しゆわからぬ心持こゝろもちつてた。寸暇すんかをもをしんだかれこゝろ從來これまでになく、自分じぶん損失そんしつかへりみる餘裕よゆうたぬほど惑亂わくらん溷濁こんだくしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「お久しいことでおざった。やれやれ、これはまた、思いがけぬ所で、思わぬお方にお会いするものではある。安土においでて、寸暇すんかもなくお勤めと伺っていましたが、きょうはまた、どうしたおついでで、かかる無人の山中へわたらせられたか」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)