きらひ)” の例文
知りもしないひとところへ、くかかないかつて、いたつて。すきでもきらひでもないんだから、なんにも云ひ様はありやしないわ。だかららないわ
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
左様さうです、し松本等の主張ならば、僕も驚きは致しませぬ、しかるにの温良なる、むしろ温柔のきらひある浦和武平が、涙をふるつて之を宣言したのです
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
誰だつて泥棒はきらひだけれども、それは泥棒が物を持つてゆくからといふのではない。誰もゐないときをねらつて、黙つてはいつて来るからいやなのである。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
きみきらひだつたいぬ寢室しんしつにはれないでくから。いぬへばきみは、犬好いぬずきのぼつちやんの名前なまへぼく使つかつたね。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
「疑ふ、疑はんと云ふのは二の次で、私はその失望以来この世の中がきらひで、すべての人間を好まんのですから」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
きらひな子だよ、お前は何時でもちやかしてお了ひだけれども、眞箇なんだよ。」とおふくろは躍起やくきとなツて、「そりやお前には私の苦勞が解らないんだから………」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ねえ、若旦那わかだんなわたし貴方あなたきらひなの。でもきらひだとつたつて、きらはれたことわからないおかたでせう。貴方あなた自分じぶんおもつたをんなは、みんなことくんだとおもつてるもの。おもはれるものの恥辱ちじよくです。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
寄生木になつて栄えるはきらひぢや、矮小けち下草したぐさになつて枯れもせう大樹おほきを頼まば肥料こやしにもならうが、たゞ寄生木になつて高く止まる奴等を日頃いくらも見ては卑い奴めと心中で蔑視みさげて居たに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
斯んな事を真面目まじめくちにした、又今でもくちにしかねまじき親爺おやぢは気の毒なものだと、代助は考へる。彼は地震がきらひである。瞬間の動揺でもむねなみつ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「ううん。母さんは子供がきらひだもんだから、子供が家へ遊びに来ると、頭がやめるつていふのさ。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
何人か又た之を疑はん「山木様はタシカ軍人はおきらひはずでしたがネ」「独身主義の御講義を拝聴した様にも記憶致しますが」「オールド、ミスも余り立派なものでありませんからね」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
いやもう生得しやうとく大嫌だいきらひきらひといふより恐怖こわいのでな。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「これはもう遊ぶ事ならきらひはございませんので」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
言葉ことばいたとき、代助は平岡がにくくなつた。あからさまに自分のはらなかを云ふと、そんなに家庭がきらひなら、きらひでよし、其代り細君をつちまふぞと判然はつきり知らせたかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あら、よツちやん、私はすききらひも無いと言つてるぢやありませんか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
おとうとかれ性質せいしつとして、そんなちゆうぶらりんの姿すがたきらひである、學校がくかうても落付おちついて稽古けいこ出來できず、下調したしらべかないやう境遇きやうぐうは、到底たうてい自分じぶんにはへられないとうつたへせつしたが
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「そんなものだらう。——先生僕は丸行燈だの、雁首がんくびだのつて云ふものが、どうもきらひですがね。明治十五年以後に生れた所為せゐかも知れないが、何だか旧式でいやな心持がする。君はどうだ」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あなた、何時いつから此花が御きらひになつたの」と妙な質問をかけた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)