大粒おほつぶ)” の例文
蒲團ふとんてらばつてはうがえゝな」みなみ亭主ていしゆこゑ段々だん/\大粒おほつぶつてんでゆきみだれのなか勘次かんじあとからけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
皺だらけな顏が白くなつた上に大粒おほつぶな汗をにじませながら、脣のかわいた、齒のまばらな口をあへぐやうに大きく開けて居ります。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
大粒おほつぶの雹、濁れる水、および雪はくらやみの空よりふりしきり、地はこれをうけて惡臭をしうを放てり 一〇—一二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
やゝ大粒おほつぶえるのを、もしたなごころにうけたら、つめたく、そして、ぼつとあたゝかえたであらう。そらくらく、かぜつめたかつたが、温泉まち但馬たじま五月ごぐわつは、さわやかであつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
素燒すやきでありますけれども、くろずんだ茶色ちやいろいぶされたのがおほいのです。そしてそのつちしつこまかいすなや、ときには大粒おほつぶすながまじつてゐるために平均へいきんしてをりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ヘレンの哀しいあきらめの容子は、私の胸に堪へきれない痛みをもたらし、彼女には感じられない憤怒いかりが、まる一日私の心に燃えつゞけて、熱い大粒おほつぶの涙が、絶え間なく、私の頬にやけつくやうだつた。
皺だらけな顔が白くなつた上に大粒おほつぶな汗をにじませながら、唇のかわいた、歯のまばらな口をあへぐやうに大きく開けて居ります。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さらつもりつゝある大粒おほつぶゆききたからなゝめ空間くうかん掻亂かきみだしてんでる。おつぎは少時しばしすくんだ。大粒おほつぶゆきげつゝちる北風きたかぜがごつとさむさをあふつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
白痴ばかにもこれ可笑をかしかつたらう、此時このときばかりぢや、真直まツすぐくびゑてあつくちびるをばくりとけた、大粒おほつぶ露出むきだして、ちゆうげてかぜあふるやうに、はらり/\。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おつぎはひくのきしたを一したら、北風きたかぜつてたといふやうに、みだれたかみまくつて、大粒おほつぶゆきあらそつて首筋くびすぢむらがおち瞬間しゆんかんえた。さうしてまた衣物きものうへかるやはらかにとまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)