器量きりょう)” の例文
(この人に、信長ほどな器量きりょうがあるかどうか。ここまでは意外な神速と才腕を見せて来たが、この辺が精いッぱいな弓勢ゆんぜいではないか)
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御覧ごらんのとおりわたくしなどはべつにこれともうしてすぐれた器量きりょう女性おんなでもなく、また修行しゅぎょうったところで、多寡たかれてるのでございます。
それでいて彼はこの男の娘なら、須永との関係はどうあろうとも、器量きりょうはあまりいい方じゃあるまいという気がどこにも起らなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おそらく快楽好きな若者の目には器量きりょうよしには映るまい。自転車にまたがっている彼女の姿は宛然あたかも働きものの娘さんを一枚の絵にしたようだ。
落穂拾い (新字新仮名) / 小山清(著)
「三ごく一の嫁御よめごというこった。あんな器量きりょうよしは、まあ、かねのわらじをはいて、さがしても、ほかには二人ふたりとないというはなしだ。」
赤いガラスの宮殿 (新字新仮名) / 小川未明(著)
熊笹を、カサコソと踏みわけながら闇の中から出て来たのは、二十四五の、それこそ、水の垂れるような器量きりょうよし。
そして彼らは父がかかる怯懦きょうだなる器量きりょうをもって、清盛きよもりを倒そうともくろんだのは、全く烏滸おこの沙汰であると放言しました。むろん、わしは彼らの話の細部さいぶは信じなかった。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
こと器量きりょうくない夫婦などが「われわれ夫婦」などと言うのを聞くのをかの女は好まない。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
やはり禿たかに似た顔はすっかり頭の白いだけに、令息よりも一層慓悍ひょうかんである。その次に坐っている大学生は勿論弟に違いあるまい。三番目のは妹にしては器量きりょうの好過ぎる娘さんである。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
第一、野良声のらごえの調子ッぱずれの可笑おかしところへ、自分主人でもない余所よそ小児こどもを、坊やとも、あのとも言うにこそ、へつらいがましい、お坊ちゃまは不見識の行止ゆきどまり、申さば器量きりょうを下げた話。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ガロフォリが去年来たとき、ぼくをいっしょにれて帰ったのさ。いったいぼくよりはつぎの弟のレオナルドを連れて行きたかったのだ。レオナルドはぼくとちがって器量きりょうがいいのだからね。
「あら、奥さま、私、とても出来ませんわ、そんな器量きりょうの悪い顔は」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
妹娘の佐代さよは十六で、三十男の仲平がよめとしては若過ぎる。それに器量きりょうよしという評判の子で、若者どもの間では「岡の小町」と呼んでいるそうである。どうも仲平とは不吊合いなように思われる。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
師匠ししょうさまはご器量きりょうや芸能が諸人にすぐれておられたばかりに一生のうちに二度までも人のねたみをお受けなされたお師匠さまの御不運は全くこの二度のご災難のおかげじゃと云ったのを思い合わせれば
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
譜代宿老を鼻にかけておるような人物にが大志を託すよりは、むしろいちかばちか、彼に会って、その器量きりょうをこころみ、たのむべき男であれば
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしは、あんな器量きりょうよしのむすめたことがない。」と、としをとった、荷物にもつをかついだたびおんならしいひとがいいました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
細君はおかねさんと云って、器量きりょうはそれほどでもないが、色の白い、皮膚のなめらかな、遠見とおみの大変好い女であった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただ綺麗きれいではありませんが、——器量きりょうなどはどうでもかまわないのでしょう?
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あの子は村でいちばん器量きりょうよしの子どもだよ」
「ははあ……」といったまま、呂宋兵衛るそんべえ蚕婆かいこばばあも、すっかり毒気どっけをぬかれたていで、いままで喋々ちょうちょうとならべたてた吹聴ふいちょうが、いっそう器量きりょうを悪くした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それには三沢の様子や態度が有力な原因となって働いていたに違ないが、単独に云っても、彼女は自分の視線を引着けるに足るほどな好い器量きりょうをもっていたのである。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれど、一目ひとめそのむすめひとは、みんなびっくりするようなうつくしい器量きりょうでありましたから、なかにはどうかしてそのむすめたいとおもって、ろうそくをいにきたものもありました。
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これはおまつさんと云って、器量きりょうは到底お君さんの敵ではない。まず白麺麭パンと黒麺麭ほどの相違がある。だから一つカッフェに勤めていても、お君さんとお松さんとでは、祝儀の収入が非常に違う。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ではこの隆景は如何いかがといえば、われらとても同様、輝元公をさしいて、天下を掌握しょうあくするなどは思いも寄らぬこと。……しかるに輝元公の器量きりょうはどうか。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんという器量きりょうのいいむすめさんだろう……。しかし、ようすをると、あまりゆたかな生活せいかつをしているとはおもわれない。さっきから、ああして、人形にんぎょうとれているが、ものは相談そうだんだ。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それがまた看護婦としては特別器量きりょうが好いので、三沢は時々不平な顔をして人を馬鹿にしているなどと云った。彼の看護婦はまた別の意味からして、この美しい看護婦を好く云わなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いやいや、自分には、御身の上に立って、召し抱えるなどという器量きりょうはない。主君信長に御推挙申して、自分はあなたを師としてこれから学びたいと思っている」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まえのねえやは、それは、かおもよかったし、がきいて、やくにたつでしたが、器量きりょうがご自慢じまんなので、ひまさえあれば、かがみかって、ほおべにをつけたり、おしろいはけでたたいたりするので
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いや、いかなる人間でも、あせりを思うては、日ごろの器量きりょうも出ぬものだ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれほどの器量きりょうなら、こんなことをしていなくてもよさそうなものだ。あんなうつくしいむすめなら、だれでももらいがあるのに。」と、ひくおとこがのびあがって、あちらをながら、いっていました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
秀吉は心のうちで、官兵衛の器量きりょうをもう一応も二応も見直していた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わかるまい。そちなどの器量きりょうと年齢では、まだまだ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と燕作は鉄門の前に立って、器量きりょういっぱいな大声。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)