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参差
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しんし
ふりがな文庫
“
参差
(
しんし
)” の例文
旧字:
參差
截
(
き
)
り立ったような
梢
(
こずえ
)
は葉を
参差
(
しんし
)
していて、井戸の底にいるような位置の私には、
草荵
(
くさしのぶ
)
の生えた井の口を遙かに
覗
(
のぞ
)
き上げている趣であった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
赭土の土間の上には、青痰やら、煙草の吸殻やら、魚の頭、豚の軟骨、その他雑多なものが
参差
(
しんし
)
落雑していて、ほとんど足の踏み場もない。
犂氏の友情
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
春の水が春の海と出合うあたりには、
参差
(
しんし
)
として
幾尋
(
いくひろ
)
の干網が、網の目を抜けて村へ吹く軟風に、
腥
(
なまぐさ
)
き
微温
(
ぬくもり
)
を与えつつあるかと怪しまれる。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
富士の美しく
霞
(
かす
)
んだ下に大きい
櫟林
(
くぬぎばやし
)
が黒く並んで、
千駄谷
(
せんだがや
)
の
凹地
(
くぼち
)
に新築の家屋の
参差
(
しんし
)
として連なっているのが走馬燈のように早く行き過ぎる。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
絶壁の上の
楓
(
かえで
)
の老樹も手に届くばかりに
参差
(
しんし
)
と枝を分ち、葉を交えて、鮮明に澄んで
閑
(
のど
)
かな、ちらちらとした光線である。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
▼ もっと見る
大方は雨漏に朽ち腐れて、柱ばかり
参差
(
しんし
)
と立ち、畳は破れ天井裂け、戸障子も無き部屋どもの、昔はさこそと
偲
(
しの
)
ばるるが
一
(
ひ
)
い
二
(
ふ
)
ウ
三
(
み
)
いと数うるに
勝
(
た
)
えず。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
拍子に幹を揺ぶるのである。
参差
(
しんし
)
した枝々には時ならぬざわめきが起った。それらの枝にちょこなんととまっていた雪は、はずみを
喰
(
く
)
ってだッと墜ちた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
すなわち内側から土塀の方へ、鉄よりも堅く思われるような老木をビッシリ植え込んで、枝や葉を網のように
参差
(
しんし
)
させて
防禦
(
ぼうぎょ
)
の態を造っているからである。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
聖人板敷山という深山を、つねに往返したまひけるに、
彼
(
かの
)
山にして度々相待つといへども、更にその節をとげず、つらつらことの
参差
(
しんし
)
を案ずるに、
頗
(
すこぶ
)
る奇特のおもひあり。
加波山
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
今にも
毀
(
こわ
)
れそうな馬車だ。馬は車に
馴
(
な
)
れず、動かじと
佇
(
たたず
)
むかと思うと、また
俄
(
にわ
)
かに走り出す。車の右は西山一帯の丘陵で、その高低
参差
(
しんし
)
たる間から、時々白い山が見える。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
崖の上からは
楓
(
かえで
)
と松が
参差
(
しんし
)
と枝をさしかわしながら滝の面へ
蔽
(
おゝ
)
いかぶさっているのであるが、
蓋
(
けだ
)
し此の滝は、さっきの音羽川の水を導いて来て、こゝへ
堰
(
せ
)
き入れたのであろう。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
右方にはセントアーン山高くそびえ、左方にはボウフナルト湾のきわまるところに、
参差
(
しんし
)
として白雪が
隠見
(
いんけん
)
している。これはかつて富士男が希望湾から望み見た、白点であった。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
橄欖樹
(
かんらんじゅ
)
が
参差
(
しんし
)
交錯して、脚下に海は横たわりながら、眺望が一切利かないのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
やがて小高い岡に仰がれたのは、
老杉
(
ろうさん
)
参差
(
しんし
)
として神さびた
湯前
(
ゆまえ
)
神社の石段であります。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこには宮殿の楼閣が
参差
(
しんし
)
と列っていて、その間には珍しい木や草が花をつけていた。すこし行くと大きな殿堂がきた。それは白壁の柱で、
砌
(
みぎり
)
に青玉を敷き、
牀
(
こしかけ
)
には珊瑚を用いてあった。
柳毅伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
庭の内に
高低
(
こうてい
)
参差
(
しんし
)
とした十数本の松は、何れも
忍
(
しの
)
び得る
限
(
かぎ
)
り雪に
撓
(
た
)
わんで、最早
払
(
はら
)
おうか今払おうかと思い
貌
(
がお
)
に枝を
揺々
(
ゆらゆら
)
さして居る。
素裸
(
すっぱだか
)
になってた
落葉木
(
らくようぼく
)
は、
従順
(
すなお
)
に雪の積るに任せて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
さて一種の
濁
(
にご
)
った色の
霞
(
かすみ
)
のようなものが、雲と雲との間をかき乱して、すべての空の模様を動揺、
参差
(
しんし
)
、任放、錯雑のありさまとなし、雲を
劈
(
つんざ
)
く光線と雲より放つ陰翳とが彼方此方に交叉して
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
俗悪怪奇なものは
厭
(
いと
)
わしい。丸ビルの如き切り取ったような四角のものもあってよかろうが、又
参差
(
しんし
)
として塔の林立せるが如きものもほしい。それにしても、帝国ホテルの屋根は矢張り好もしい。
丸の内
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
試に市内の高処に登って遠く眼を南方に放つと、南南西に当って
遥
(
はるか
)
の地平線上に、高低
参差
(
しんし
)
たる三、四の峰頭を
幽
(
かす
)
かに認めるであろう、之が伊豆半島の天城山で、右端の最も高いのが
伴三郎
(
ばんざぶろう
)
岳である。
望岳都東京
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
細き太き、数知れぬ樹々の梢は
参差
(
しんし
)
として相交つてゐる。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
参差
(
しんし
)
する
梢
(
こずえ
)
のために、星も見えなかった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
昔
(
むか
)
し「影
参差
(
しんし
)
松三本の月夜かな」と
咏
(
うた
)
ったのは、あるいはこの松の事ではなかったろうかと考えつつ、私はまた家に帰った。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
築山の木枝の
参差
(
しんし
)
へかけて、
満庭
(
まんてい
)
の鬱々としてまた
媚々
(
びび
)
たる、ものゝ芽の芽立ちの色の何という
嫉
(
ね
)
たましいまでに美しく人を
牽
(
ひ
)
き付けることでしょう。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
参差
(
しんし
)
たる
松
(
まつ
)
ヶ枝
(
え
)
、根に
上
(
あが
)
り、横に
葡
(
は
)
い、空にうねって、いうところの
松籟般若
(
しょうらいはんにゃ
)
を弾ずるの
神境
(
しんきょう
)
である。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
売り物のひょろ松やら
樫
(
かし
)
やら
黄楊
(
つげ
)
やら八ツ手やらがその周囲にだらしなく植え付けられてあるが、その向こうには千駄谷の街道を持っている新開の屋敷町が
参差
(
しんし
)
として連なって
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
僅
(
わづか
)
に板戸の隙間より内の模様を窺ふに、畳二三十も敷かるべく、柱は
参差
(
しんし
)
と
立
(
たち
)
ならべり。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
鬱蒼たる老樹の幹には
蔦葛
(
つたかずら
)
の葉が
荒布
(
あらめ
)
のように
絡
(
から
)
み着き、執念深く入り乱れた枝と枝とは
参差
(
しんし
)
として行く手の途を塞ぎ、雑草灌木の矢鱈無上に繁茂した湿っぽい地面につゝまれて
金色の死
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それが密生し、根と茎とを
参差
(
しんし
)
させ、すき間もなく原野を
蔽
(
おお
)
うてつづいていた。地は熊笹に占有されて。人間はそれを刈り取って、彼の意志する一条の路をつくろうとするのである。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
キッと空を見上げたが、頭上には
裸体
(
はだか
)
の大
公孫樹
(
いちょう
)
が、枝を
参差
(
しんし
)
と差し出していた。
柳営秘録かつえ蔵
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
近くには半ば葉の
堕
(
お
)
ちた巨木の枝が
参差
(
しんし
)
として「サルオガセ」が頼りなげにかかっている。朝から人にも逢わぬ。獣も見ぬ、鳥さえも
啼
(
な
)
かぬ、山中の白日は深夜よりもなお静かである。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
と、思うと、またふと足を止めて、
参差
(
しんし
)
とした杉木立の奥をすかすように見た。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その階段から我々の佇んでいる道のべまで一面に広い乳白の
甃
(
いしだたみ
)
が敷き詰められて、中空に
参差
(
しんし
)
し交錯した橄欖樹が、折からの
翳
(
かげ
)
った陽の光を受けて、
仄
(
ほの
)
かに影を甃の上に落している平和さ
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
境遇に負けて
人臆
(
ひとおく
)
れのする少年であった鼈四郎は、これ等の
人気
(
ひとけ
)
を避けて、土手の屈曲の影になる川の枝流れに、芽出し柳の
参差
(
しんし
)
を盾に、姿を隠すようにして漁った。すみれ草が甘く
匂
(
にお
)
う。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
段丘は雑木に
蔽
(
おお
)
われていた。丈なす笹やぶがつづいていた。
参差
(
しんし
)
する草木の海を泳いで、磁石の針に導かれているのである。おいおいと消えて行く
靄
(
もや
)
の
彼方
(
かなた
)
に、その土地の高低起伏が隠見した。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
苗樹ばかりの桑の、薄く芽ぐみたるが
篠
(
しの
)
に似て
参差
(
しんし
)
たり。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
銅像の検閲を受ける銃剣の
参差
(
しんし
)
のように並木の
梢
(
こずえ
)
が
截
(
き
)
り込みこまかに、やはりシルエットになって見える。それはかの女が帰朝後間もない散歩の途中、東京で珍しく見つけたマロニエの木々である。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
“参差”の意味
《形容動詞》
高さや長さが不揃いであるさま。ちぐはぐであるさま。
(出典:Wiktionary)
参
常用漢字
小4
部首:⼛
8画
差
常用漢字
小4
部首:⼯
10画
“参差”で始まる語句
参差歯
参差錯落