却説さて)” の例文
却説さて兎と熟兎は物の食べようを異にす、たとえば蕪菁かぶくらうるに兎や鼠は皮をいで地に残し身のみ食うる、熟兎は皮も身も食べてしまう。
却説さて……斯様にして屍体台帳の書換えを終りました若林博士は、その台帳を無記入ブランクの屍体検案書と一緒に、無雑作に机の上に投出しました。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
却説さて、林謹直のオヴァーランドが日比谷公園の近くまで来ると、公園の方に当ってワアッと言う凄まじいどよめきが起った。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
却説さて小助こすけは、いへあしで、おなむら山手やまてつた。こゝに九兵衞くへゑふもののむすめにおあきふ、とし十七になる野上一郡のがみいちぐん評判ひやうばん容色きりやうし。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
時下じか残暑ざんしょしのぎがたく候処そうろうところ益〻ますます御清穆ごせいぼく御事おんこと存上候ぞんじあげそうろう 却説さて 伯爵様はくしゃくさま折入おりいって直々じきじき貴殿きでん御意得度思召ぎょいえたきおぼしめし被在候間あらせられそうろうあいだ明朝みょうちょう御本邸ごほんてい御出仕可然ごしゅっししかるべく此段申進候このだんもうしすすめそうろう 早々そうそう頓首とんしゅ
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
却説さて江州甲賀ごうしゅうこうがの山奥木賊とくさ村庄屋家記かきによると、弦之丞は両刀をすて、農となってその地で終っている。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
却説さて、山田某。女共の軽い口からちらちら洩れる噂も気になるし、折柄の坂本警護を、いゝおりに、彦根をいで、江洲へ行った。お俊が戻ると共に、この事を知ったのは勿論である。
新訂雲母阪 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
却説さて、翌日の昼頃、広からぬ僕の家の玄関に、改まって人の訪ずれる声がする。女中が出たが、何やら見なれぬ人が要領を得ぬことを言っていると、又それがわけのわからぬ取次ぎ方である。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
却説さて一昨年岡崎邦輔君の紹介である人が予に尋ねられたは、何とかいう鉄道は鬼門に向いて敷設され居るとて一向乗客少ない。
丁告之以故ていこれにつぐるにゆゑをもつてす。——却説さて一體いつたい此處こゝ何處どこだ、とくと、冥土めいど、とこたへて、わたしあと閻魔王えんまわう足輕あしがる牛頭鬼ごづおにのためにめとられて、いまつまつた、とげた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それは却説さて、ほどなく道灌山の自動車は「住吉」の門を走り出て、芝の方角へ。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
却説さて、言うがごとく、清葉の看板は滝の家にただ一人である。母親がある。それは以前同じ土地に聞えた老妓で、清葉はその実、養女である。学校に通う娘が一人。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
却説さて大雷たいらいの後の稀有なる悲鳴を聞いた夜、客が蔀を開けようとした時の人々の顔は……年月としつきを長く経ても眼前まのあたり見るような、いずれも石を以て刻みなした如きものであった。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
却説さて大雷たいらいあと希有けうなる悲鳴ひめいいたよるきやくしとみけようとしたとき人々ひと/″\かほは……年月としつきながても眼前まのあたりるやうな、いづれもいしもつきざみなしたごときものであつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
却説さて、葛木法師の旅僧は遠くもかず、どこで電車を下りて迂廻まわりみちしたか、多時しばらくすると西河岸へ、船から上ったごとく飄然ひょうぜんとしてあらわれて、延命地蔵尊の御堂みどうに詣でて礼拝らいはいして
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
却説さて……巡査が格子戸を出ると、やがて××署在勤笠原信八郎とある名刺にのせた、(同妻おなじくつま。)をじっと視ていた、稲葉家のお孝は、片手の長煙管をばたりと落して、すっと立つと、頂いて
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
却説さて——その白井しらゐさんの四歳よツつをとこの、「おうちへかへらうよ、かへらうよ。」とつて、うらわかかあさんとともに、わたしたちのむねいたませたのも、そのかあさんのすゑいもうとの十一二にるのが
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
却説さてれて、歸途かへりである。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
却説さて前段ぜんだんつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)