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卑猥
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ひわい
ふりがな文庫
“
卑猥
(
ひわい
)” の例文
ここは門司市、東川端の
卑猥
(
ひわい
)
な街、カアルトン・バアの青い給仕人の花風病の体温、ロシア女の新らしい技術の中で無頼漢の唄う流行歌。
飛行機から墜ちるまで
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
黄色く薄濁りした液体が一ぱいつまって在る一升瓶は、どうにも不潔な、
卑猥
(
ひわい
)
な感じさえして、恥ずかしく、眼ざわりでならぬのである。
酒ぎらい
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
しかし無名の手紙はなおつづいて来て、ますます侮辱的に
卑猥
(
ひわい
)
になっていった。そのために彼らはいらだちと堪えがたい恥ずかしさとに陥った。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
だれもがこんな
謡
(
うた
)
の
囃子
(
はやし
)
を小ばかにし、またよろこび迎えた。その調子は
卑猥
(
ひわい
)
ですらあるけれども、陽気で滑稽なところに親しみを覚えさせる。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
些
(
ちっ
)
とも
卑猥
(
ひわい
)
な心持を起させずに、ただ
精緻
(
せいち
)
な観察其物として、他をぐいぐい引き付けて行く処などは、
何
(
ど
)
うしても
旨
(
うま
)
いと云わなければなりません。
木下杢太郎『唐草表紙』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
しかし
煩瑣
(
はんさ
)
な、冗漫な
文字
(
もんじ
)
で、平凡な
卑猥
(
ひわい
)
な思想を写すに至ったこの主義の作者の末路を、飽くまで排斥する客の詞にも、確に一面の真理がある。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その談話は何かと聞けば、競馬の掛けごとに
麻雀賭博
(
マージャンとばく
)
、友人の悪評、出版屋の盛衰と原稿料の
多寡
(
たか
)
、その他は女に関する
卑猥
(
ひわい
)
極
(
きわま
)
る話で持切っている。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
卑猥
(
ひわい
)
で無智だったパン焼職人の若い衆仲間のなかで、遂に死のうとしたほど苦しがっていた青年時代のゴーリキイ。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
一方では酒を飲んでいた連中が、
卑猥
(
ひわい
)
な歌を歌い出して、家が揺れるほど笑い興じていた。テナルディエは彼らをおだて、彼らに調子を合わしていた。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
けれども彼には近藤の美的
偽善
(
ぎぜん
)
とも称すべきものが——自家の
卑猥
(
ひわい
)
な興味の上へ芸術的と云う
金箔
(
きんぱく
)
を塗りつけるのが、不愉快だったのもまた事実だった。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そしてそこで始めて、多数の公開観覧所が
卑猥
(
ひわい
)
なものやあくどい
際物
(
きわもの
)
で堕落し切っているのに対して、道徳的なものをもって対抗させる機会を得るだろう。
アインシュタインの教育観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
男も女もこの奇異な
裸形
(
らけい
)
に奇異な場所で出遇って笑いくずれぬものはなかった。卑しい身分の女などはあからさまに
卑猥
(
ひわい
)
な言葉をその若い道士に投げつけた。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
卑猥
(
ひわい
)
な文句を浴せかけたり、楽書をしたりする者が出来てきたが、当人の低能娘はいっこう平気なもので、なぶられることを誇りともしないが、苦痛ともしない。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
座のなかから「——とっても、いけねえや」という
頓狂
(
とんきょう
)
な、やや
卑猥
(
ひわい
)
な調子をこめた声が
挙
(
あが
)
った。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
卑猥
(
ひわい
)
な雑談にふけったり、
流行唄
(
はやりうた
)
を唄ったりして夜更けまで闇の中をあちこちとうろつき廻った。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
女たちは思いきって
卑猥
(
ひわい
)
なことを叫び、「入れてくれ」と、殆んど泣き声をあげて哀願していた。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
不作法
(
ぶさはふ
)
な
言辭
(
げんじ
)
に
麻痺
(
まひ
)
して
居
(
ゐ
)
る
彼等
(
かれら
)
はどうしたら
相互
(
さうご
)
に
感動
(
かんどう
)
を
與
(
あた
)
へ
得
(
う
)
るかと
苦心
(
くしん
)
しつゝあつたかと
思
(
おも
)
ふ
樣
(
やう
)
な
卑猥
(
ひわい
)
な一
句
(
く
)
が
唐突
(
だしぬけ
)
に
或
(
ある
)
一
人
(
にん
)
の
口
(
くち
)
から
出
(
で
)
ると
他
(
た
)
の一
人
(
にん
)
が
又
(
また
)
それに
應
(
おう
)
じた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
七八歳の子供が
卑猥
(
ひわい
)
きわまる
唄
(
うた
)
などを覚えて来てそれを平気で学校でうたっている。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
あの、
卑猥
(
ひわい
)
な
牝豚
(
めすぶた
)
のような花子に
培
(
つちか
)
われた細菌が、春日、木島、そしてネネと、一つずつの物語を残しながら、暴風のように荒して行った
痕跡
(
あと
)
に、顔を
外向
(
そむ
)
けずにはいられなかった。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
油に汚れた作業衣を着た少年が先に立つて、その黒縮緬の丸髷の奥さん風の婦人を案内してゐるのを多くの職工等は目を丸くして見た。中には彼等特有の
卑猥
(
ひわい
)
な声を浴びせるのもあつた。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
……
卑猥
(
ひわい
)
にも不潔にもなじむことがない。あなたは生まれてからまだ一度も嘘をいったことがない。あなたは、この世で最も堅実で道義心の強いどの男性よりも、もっと堅実で道徳的です。
キャラコさん:01 社交室
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
大黒を祀りて強欲の根拠とし、天満宮を
卑猥
(
ひわい
)
のなかだちとし、観音を産婆代わりとし、狐、狸、天狗の妄談、いささかの辻神、辻仏に種々の霊験をみだりにいいふらし、仏神の夢想に託し
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
それも普通の仏説を応用して居るならば少しも怪しむに足らないですが、チベットには一種不可思議に
卑猥
(
ひわい
)
なる宗教がありまして、その宗教の真理を修辞学に応用してあるのでございます。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
残酷、
卑猥
(
ひわい
)
、不倫というような毒々しい文字が諸新聞の劇評をうずめた。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
純文芸の復興や、
卑猥
(
ひわい
)
小説の
擡頭
(
たいとう
)
などの計画とともに、十把一からげの有様で、ついに科学小説時代の件もがらがらと崩れてしまったのである。これでは本質的には何とも説明のつけようがない。
『十八時の音楽浴』の作者の言葉
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼等が眼は舞台の華美にあらざれば奪ふこと能はず。彼等が耳は
卑猥
(
ひわい
)
なる音楽にあらざれば娯楽せしむること能はず。彼等が脳膸は奇異を旨とする探偵小説にあらざれば以て
慰藉
(
ゐしや
)
を与ふることなし。
漫罵
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
たちまちにして読み
畢
(
おわ
)
りぬ。余音
嫋々
(
じょうじょう
)
として絶えざるの感あり。天ッ晴れ傑作なり貴兄集中の第一等なりと感じぬ。この平凡なる趣向、
卑猥
(
ひわい
)
なる人物、浅薄なる恋が何故に面白きか殆ど解すべからず。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
そしてこのニヒリスティックな人生観から、社会のあらゆる道義観や風俗に
挑戦
(
ちょうせん
)
し、故意に人生の醜悪を描き、人間性の本能を高調し、
隠蔽
(
いんぺい
)
されたものを引っぺがし、性の実感的
卑猥
(
ひわい
)
を書き散らした。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
極めて操正しい女は、自ら知らずして
卑猥
(
ひわい
)
であるかもしれない。
雨の玉川心中:01 太宰治との愛と死のノート
(新字新仮名)
/
山崎富栄
(著)
「貴様は直ぐ
其様
(
そんな
)
卑猥
(
ひわい
)
なことを言ふから
不可
(
いか
)
んよ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
決して
卑猥
(
ひわい
)
なるものという事は出来ない。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
駅売りの粗悪で
卑猥
(
ひわい
)
な雑誌などにも載るようになり、自分は、上司幾太(情死、生きた)という、ふざけ切った匿名で、汚いはだかの絵など画き
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
卑猥
(
ひわい
)
と道徳とを和解させんとする「男らしい
淡泊
(
たんぱく
)
さ」——結婚に
淫蕩
(
いんとう
)
の様子を与えながら結婚を保護する放逸な貞節さ——いわゆるゴール風なのであった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そしていろいろ人を笑わせるつもりらしい粗暴なあるいは
卑猥
(
ひわい
)
な言語を並べたりした。「あの曲がった煙突をかくといいんだがなあ」などという者もあった。
写生紀行
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
この詩章を読みて
卑猥
(
ひわい
)
なりとなすものあらば、そはこの詩章の深意を解すること能はざるものなり。
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
聖母や小児イエスなどが出て来る道化た
卑猥
(
ひわい
)
な歌だった。テナルディエの上さんまでが、その仲間に加わって笑い騒いだ。コゼットは例のテーブルの下で火を見つめていた。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
警察の門を出て、私は
卑猥
(
ひわい
)
にわらった刑事の顔を思い出しながら、渡されたチタ子が女としての
売行表
(
リスト
)
とも思われる一枚の紙片を読んだ——佐田チタ子、女事務員。十七歳。女学校は中途退学。
大阪万華鏡
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
客も入っていないのに、彼女たちは大きな声で
卑猥
(
ひわい
)
な歌をうたう。
暗号数字
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
みなさんに忘れられないように私の勉強ぶりをときたま、ちらっと
覗
(
のぞ
)
かせてやろうという
卑猥
(
ひわい
)
な魂胆のようである。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あるいは得意げな気取った判断を述べ、あるいは不条理な比較を試み、あるいは無作法なこと、
卑猥
(
ひわい
)
なこと、狂気じみたこと、
駄洒落
(
だじゃれ
)
めいたこと、などを口にした。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
この詩章を読みて
卑猥
(
ひわい
)
なりとなすものあらば、そはこの詩章の深意を解すること能はざるものなり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
前夜、馬方らと酒をのみながら、
煙草
(
たばこ
)
をふかしながら、
卑猥
(
ひわい
)
な歌を歌いながら、彼は猫のように
覘
(
うかが
)
い数学家のように研究して、始終その見なれぬ男を観察していたのである。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
卑猥
(
ひわい
)
であくどい茶番はヤンキー王国の顧客にはぜひとも必要なものであろう。
音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
卑猥
(
ひわい
)
で不名誉な雰囲気を、「おまけの附録」としてもらって、そうしてそのほうが、自分の休養などよりも、ひどく目立ってしまっているらしいのでした。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ある人々は他人をまねて、朝刊新聞が切り売りする
卑猥
(
ひわい
)
なものを書こうと苦心していた。彼らはそれを、一週に一、二回、きまった日に規則正しく生み出していた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
時間を浪費し、パイプをくゆらし、暴言を吐き、酒場に入りびたり、盗人と知り合い、女とふざけ、隠語を用い、
卑猥
(
ひわい
)
な歌を歌い、しかもその心のうちには何らの悪もないのである。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ただ落語や川柳には低級なあるいは
卑猥
(
ひわい
)
な分子が多いように思われており、また実際そうであるのは、これらのものの作者が従来精神的素養の乏しい階級に属していたためにそうなったので
漫画と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
もう
家
(
うち
)
の食べものなど、全く心配しない事にしよう。「牛の肉だぞ」なんて、
卑猥
(
ひわい
)
じゃないか。食べものに限らず、家の者の将来に就いても、全く安心していよう。
新郎
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あるいはしばしば
曖昧
(
あいまい
)
卑猥
(
ひわい
)
な情景にたいして、すなわち一言にしていえば、すべて普通の良識と謹直とを傷つけるようなものにたいして、意地悪い
嗜好
(
しこう
)
を示していた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
木炭で書きなぐった
卑猥
(
ひわい
)
な絵が見えていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
卑
常用漢字
中学
部首:⼗
9画
猥
漢検1級
部首:⽝
12画
“卑猥”で始まる語句
卑猥心
卑猥感