出来事できごと)” の例文
旧字:出來事
おもいがけない出来事できごとに、茫然ぼうぜんとしていた小僧こぞう市松いちまつが、ぺこりとげたあたまうえで、若旦那わかだんなこえはきりぎりすのようにふるえた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
石見守いわみのかみはらでは、吹針ふきばり試合しあいではしょせんあの老女ろうじょ勝目かちめはないと考えていたので、この出来事できごとはもっけのさいわいと思った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
クリストフはいつもよるよく眠れないで、夜の間に昼間ひるま出来事できごとを思いかえしてみるくせがあって、そんな時に、小父おじはたいへん親切しんせつな人だと考え
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
毛布を眼までかぶり、その実、眠るどころではなく、どう考えていいかわからないさっきの出来事できごとを、それからそれへと想い浮かべているのだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
翌朝よくちょうかれはげしき頭痛ずつうおぼえて、両耳りょうみみり、全身ぜんしんにはただならぬなやみかんじた。そうして昨日きのうけた出来事できごとおもしても、はずかしくもなんともかんぜぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
不意ふい出来事できごとに、女房にょうぼうおもわずキャッ! とさけんで、地面じべた臀餅しりもちをついてしまいましたが、そのころ人間にんげん現今いま人間にんげんとはちがいまして、すこしはかみごころがございますから
そんなことはみんなぼんやりしたもやの中の出来事できごとのようでした。牛がげたなんて、やはりゆめだかなんだかわかりませんでした。風だって一体吹いていたのでしょうか。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
だから、ヱヴェレストは千ねんまへ出来事できごと昨夜ゆふべゆめのやうにしてはなしてくれる。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
大正たいしょう元年がんねんの夏のころ、僕は米国に滞留たいりゅうしていたが、そのころ日本の新聞通信にもあらわれたことで、シカゴ市における共和党きょうわとうの大会は近年にない大騒ぎで、独り米国の一大出来事できごとたるのみならず
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
やがて唱歌の声がきこへた。讃美歌といふものだらうと考へた。締切しめきつた高い窓のうちの出来事できごとである。おん量から察すると余程の人数らしい。美禰子の声もそのうちにある。三四郎は耳を傾けた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
吉原よしわら出来事できごと観音様かんのんさま茶屋女ちゃやおんなうえなど、おそらくくちひらけば、一ようにおのれの物知ものしりを、すこしもはやひとかせたいとの自慢じまんからであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
これが現世げんせでの出来事できごとだったら、そのときなにをしたかれませぬが、さすがに神様かみさま手前てまえ今更いまさらみだしたところをられるのがはずかしうございますから、わたくしは一しょう懸命けんめいになって
密林みつりん出来事できごと
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まったく夢想むそうもしなかった出来事できごとに、おせんは、そのこしえたまま、ぐには二のげなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
んなふう物語ものがたると、すべてがいかにも人間界にんげんかい出来事できごとのようにえて、をかしなものでございますが、もちろんこの天狗てんぐさんは、私達わたくしたちせるめに、わざ人間にんげん姿すがたけて