中程なかほど)” の例文
市街まち中程なかほどおほきな市場いちばがある、兒童こども其處そこへ出かけて、山のやうに貨物くわもつつんであるなかにふんぞりかへつて人々ひと/″\立騒たちさわぐのをて居る。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
幕が又りた。美禰子とよし子が席を立つた。三四郎もつゞいて立つた。廊下迄来て見ると、二人ふたりは廊下の中程なかほどで、男と話をしてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
弓柄を左手ににぎり、矢の一端を弦の中程なかほどてて右手の指にてつままむと云ふは何所も同じ事なれど、つまみ方に於ては諸地方住民種々異同有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
仕方がなしに仙公は十八文の提灯をぶら下げ、道庵先生はいい気になって山田の町を通って行くと、町の中程なかほど
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
権八の後から私も這ひ込んで行つた。両端は直径二尺位の円筒だが、まん中になるほどふくらんでゐるのであつた。私は時々頭をつつけながら中程なかほどまで這つて行つた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
とこした秋海棠しゅうかいどうが、伊満里いまり花瓶かびんかげうつした姿すがたもなまめかしく、行燈あんどんほのおこうのように立昇たちのぼって、部屋へや中程なかほどてた鏡台きょうだいに、鬘下地かつらしたじ人影ひとかげがおぼろであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
えゝ……とほくへもかないで、——くすりはなかつたあだをしに——待受まちうけてでもたのでせう……二丁目にちやうめ中程なかほどから、うやつて提灯ちやうちんしたさうですが、主人あるじかつて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いためしとてつゑすがりて參りし處惡い駕籠舁かごかきどもに付込れ當底たう/\あざむかれ乘て參りたるが今頃いまごろは此熊谷土手の中程なかほどにて路金も女も定めしとられ給ひしならんアヽ思ひ出しても可愛かあいさうな事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うち這入はいると足場あしばの悪い梯子段はしごだんが立つてゐて、中程なかほどからまがるあたりはもう薄暗うすぐらく、くさ生暖なまあたゝか人込ひとごみ温気うんき猶更なほさら暗い上のはうから吹きりて来る。しきりに役者の名を呼ぶ掛声かけごゑきこえる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ところが森の中程なかほどに来ると、ふいに森の精の姿が見えなくなりました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
その小径のくずれかかった中程なかほどで足をとめ、なお一層注意深く、耳を澄まして見たが、あたりはまるでこの世の終りのように、シーンと静もりかえって、葉ずれの音以外、なんの物音も聴えなかった。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
御馳走の中程なかほどに出るポンチというものだ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
三筋みすぢあるわかみち中程なかほどなりき。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
休茶屋やすみぢやゝ女房にようぼふちの厚い底のあがつたコツプについで出す冷酒ひやざけを、蘿月らげつはぐいと飲干のみほしてのまゝ竹屋たけや渡船わたしぶねに乗つた。丁度ちやうどかは中程なかほどへ来たころから舟のゆれるにつれて冷酒ひやざけがおひ/\にきいて来る。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
(第七回、容器考説ようきかうせつ中程なかほどを見よ。)
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)