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じやうとう
「
唐縮緬も
近頃ぢや
廉くなつたから一
尺十二三
錢位のものかね、
上等で十四五
錢しかしないだらうね」
なんと
言ふことだ。
天氣は
上等、
此のとほりの
青空だ。かうして
自分は
荷車にのせられ、その
上にこれはまた
他の
獸等に
意地められないやうに、
用意周到なこの
駕籠。
澁を
買ひに
行く
時かすりでも
取つて
吹矢の
一本も
當りを
取るのが
好い
運さ、お
前さんなぞは
以前が
立派な
人だといふから
今に
上等の
運が
馬車に
乘つて
迎ひに
來やすのさ
今時バアで
醉拂つて、タクシイに
蹌踉け
込んで、いや、どツこいと
腰を
入れると、がた、がたんと
搖れるから、
脚を
蟇の
如く
踏張つて——
上等のは
知らない——
屋根が
低いから
屈み
腰に
眼を
据ゑて
三
月兎は
時計を
取つて
物思はしげにそれを
眺めました、それから
彼はそれを
茶碗の
中へ
浸して
又それを
見てゐました、
併し
彼は
自分が
最初云つた『それは
上等の
牛酪でした』と
云ふ
言葉より
他に
何も
嘘ではないよ
何時かお
前が
言つた
通り
上等の
運が
馬車に
乘つて
迎ひに
來たといふ
騷ぎだから
彼處の
裏には
居られない、
吉ちやん
其うちに
糸織ぞろひを
調製へて
上るよと
言へば、
厭だ
『それは
上等の
牛酪でした』と三
月兎は
優しやかに
答へました。