一寸ちよつ)” の例文
もつと左樣さうするまへ老人らうじん小聲こゞゑ一寸ちよつ相談さうだんがあつたらしく、金貸かねかしらしい老人らうじんは『勿論もちろんのこと』とひたげな樣子やうすくびかたせてたのであつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
うしてつくる? ……つひ一寸ちよつくら手真似てまねはなされるもんではねえ。むねに、機関からくりつとります。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
奪ひ取り行掛ゆきがけ駄賃だちんにしてくれんと獨り笑壺ゑつぼ入相いりあひかねもろともに江戸を立出たちいで品川宿の相摸屋へ上りのめうたへとざんざめきしが一寸ちよつとこに入り子刻こゝのつかね相※あひづに相摸屋を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かきごしにさしいだ團扇うちわとらんとあぐればはづかしゝ美少年びせうねんかんとする團扇うちわさき一寸ちよつおさへて、おもひにもゆるはほたるばかりとおぼすかとあやしの一言ひとこと暫時しばし糸子いとこわれかひと
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さて小栗總州そうしう、木城安太郎を兩大將に、それに附屬する我々に至るまで——わたくしはまだブランサンであつたが、一寸ちよつとお目附方の息子といふので、參謀官の見習ひといふやうなところで居た。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
自分じぶん義母おつかさんに『これから何處どこくのです』とひたいくらゐであつた。最早もう我慢がまんきれなくなつたので、義母おつかさん一寸ちよつたつようたしにつた正宗まさむねめいじて、コツプであほつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
せしがまたことさらにホヽとわらつてじやうさま一寸ちよつ御覽ごらんあそばせこのマア樣子やうす可笑をかしいことよと面白おもしろげにいざなはれてなんぞとばかり立出たちいづ優子いうこ八重やへ何故なぜ其樣そのやうなことが可笑をかしいぞわたしにはなんともきを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かしつかはしたるが着替きかゆる時に一寸ちよつと見し懷中ふところの金は七八百兩と白眼にらんだ大膳が眼力がんりきはよもたがふまじ明朝みやうてうまで休息きうそくさせ明日は道案内みちあんないに途中まで連出つれだしてわかぎはに只一刀だいまいの金は手をぬらさずと語る聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『まア貴下あなたあれがえないの。アゝ最早もうえなくなつた。』と老婦人らうふじん殘念ざんねんさうに舌打したうちをした。義母おつかさん一寸ちよつ其方そのはうたばかり此時このとき自分じぶんおもつた義母おつかさんよりか老婦人らうふじんはう幸福しあはせだと。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
二人ふたりの言葉は一寸ちよつ途断とぎれた。そして何所どこへともなく目的あてどなくあるいて居るのである。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)