一伍一什いちぶしじゅう)” の例文
と大江山が不審がるので、雁金検事は一伍一什いちぶしじゅうを手短かに物語り、九時までに彼の電話がかかって来る筈だったのだと説明した。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と是から丈助の悪事の一伍一什いちぶしじゅう話をしたときには、田舎気質かたぎのおしのは肝を潰してぶる/\手を震わし、涙を膝へ落しまして
そして、守と殿村夫人とから、一伍一什いちぶしじゅうを聞取ると、直ちにこの事を警察に知らせて、一層の警戒を依頼することにした。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ですから私はその事の一伍一什いちぶしじゅうを知って居ましたけれども、そういう顔も出来ませんから珍しい話のように聞いて居りますと、大臣は話を進めて
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ほとんど挨拶がわりに左膳から剣渦けんか一伍一什いちぶしじゅうを聞かされて、栄三郎方および火事装束と刃を合わす期をたのしみに待っていた月輪門下の同志は
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこで、思いきって一伍一什いちぶしじゅうを南条にうちあけて、さてどうしたらよいものかと、しおらしくその意見を叩きました。
文角もななめならず喜び、今は時節もよかるべしと、或時黄金丸をひざ近くまねき、さて其方そなたまことの児にあらず、斯様々々云々かようかようしかじかなりと、一伍一什いちぶしじゅうを語り聞かせば。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
今夜——これから直ぐ父様の処に行きましょう、そして一伍一什いちぶしじゅうを話して、早速、国に帰るようにした方が好い
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そこで康雄は一伍一什いちぶしじゅうを話した。もとよりお豊に約束したとおり、レンズを自分自身が拾ったことにし、隣家をたずねて、附添婦つきそいから事情をきいたと告げた。
好色破邪顕正 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
吟味与力で、南の利け者、笹野新三郎の前へ出ると、例の十五両包を出して一伍一什いちぶしじゅうを報告したものです。
「わたし、あの時は実にこわかったわ。顔がこんなよ。」と手真似てまねをして、玉子が一伍一什いちぶしじゅうくわしく話した。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私が自分の生い立ちの一伍一什いちぶしじゅうをこと細かに聞いたのは、それからずっと夕方になるまでで、雪の下の咲いたやつがその間じゅう私の目さきにちらちらしていた。
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
四人の身性みじょうについて、引ッ手繰たぐられるお手数だけでも省けるようにと思いまして、さいわい、四人のことなら、たいがいわれわれ二人が一伍一什いちぶしじゅう存じておりますから
何だか自分が今兄としてきた相談の一伍一什いちぶしじゅうをそのまま勘平に聞いていられたような気がしたのである。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
さすがにそれとは言よどんで、すこし口唇を震わせておりましたが、やがて石の上に腰を掛けて、草鞋のひもを結直しながら、書記から聞いた一伍一什いちぶしじゅうを話し出した。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私も一伍一什いちぶしじゅうのことを話して、あんたにとくと聴いてもらいたいことは山ほどあるけれど、それをいい出す日になれば腹も立てねばならぬ、愚痴もいわねばならぬ。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
この一伍一什いちぶしじゅうを、源内の所から帰りがけに、ふと見かけてつけて来たのは、法月弦之丞のりづきげんのじょうであった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんないたずらがこの子にできるかできないか、考えてもみろ。可哀そうに。はずみから出たあやまちなんだ。おれはさっきから一伍一什いちぶしじゅうをここでちゃんと見ていたんだぞ。
卑怯者 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
僕はいま、すべての作家的手法を排除して、その一伍一什いちぶしじゅうをここに詳述してみたいと思う。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
手塚につれられて文子は外へ出た、文子は歩きながら一伍一什いちぶしじゅうを手塚に語った。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
おんなはやがて階段きざはししたひざまづいて、こまごまと一伍一什いちぶしじゅう物語ものがたったうえ
けれども、そのうちに、駐在所の旦那や区長さんが来て、顔中泥だらけにして泣いている文作を引きずり起こすと、文作は土の上に坐ったまま、シャクリ上げシャクリ上げして一伍一什いちぶしじゅうを話し出した。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もうける。そこで一伍一什いちぶしじゅうの話をした。
で、父が一伍一什いちぶしじゅうを話すと——
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そういって私は、あの白い毛のようなものを取り出して兄に見せると共に、発見当時の一伍一什いちぶしじゅうを手短かに語りました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
迎えに来たに組の頭常吉のはなし半ばに鍋屋へ到着したので、中途から、発見者たる初太郎自身が後を引き継いで、この一伍一什いちぶしじゅうを話したのである。
長二もかねおりもあらば和尚にだけは身の上の一伍一什いちぶしじゅうを打明けようと思って居りました所でございますから、幸いのことと、自分は斯々かく/\棄児すてごにて
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
自然、津村が一伍一什いちぶしじゅうを物語らねばならぬ羽目はめとなった。(星田君、一体どうしたんだろう。病人みたいに無口で、その上あの死人のような蒼白あおじろさは)
この一伍一什いちぶしじゅうを、最初、お角さんが、伊太夫に向って物語った時、それを聞き終った伊太夫が、思い当るところあるらしく、考え込んでいたが、結局
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
若い二人の恋が愈〻いよいよ人目に余るようになったのはこの頃であった。時雄は監督上見るに見かねて、芳子を説勧ときすすめて、この一伍一什いちぶしじゅうを故郷の父母に報ぜしめた。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
丸次の家で使っている御飯焚ごはんたきの婆の家が、君香のいる家のすぐ二、三げんさきで、一伍一什いちぶしじゅうすっかり種が上っているとは夢にも知らないから、此方こっちはいつもの調子で
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一伍一什いちぶしじゅうの物語をしてそれから「どういう訳でしょう。外国人はこんなに来て見たがるのは」という話。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そんな事を言われながら、八五郎はとうとう三日前の晩の事を、一伍一什いちぶしじゅう話させられてしまいました。
その前後二、三分の間にまくし上がった騒ぎの一伍一什いちぶしじゅうを彼は一つも見落とさずに観察していたわけではなかったけれども、立ちどまった瞬間からすぐにすべてが理解できた。
卑怯者 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ふたりの儒臣じゅしんが、憂いをおもてにあらわして、お家の大事とばかり、綿々めんめんと告げる一伍一什いちぶしじゅうを。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私も一伍一什いちぶしじゅうをきいて、出発点はやはり胃の内容物の化学的検査にあると思いました。もしパリス・グリーンが牛乳に混ぜられてから熱せられたならば、表面に緑色の泡が立たねばなりません。
誤った鑑定 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
それからきつづいて敦子あつこさまは、こちらの世界せかい目覚めざめてからの一伍一什いちぶしじゅうわたくし物語ものがたってくれましたが、それは私達わたくしたちのような、月並つきなみ婦女おんなとうったみちとはたいへんにおもむきちがいまして、随分ずいぶん苦労くろうおお
この場合においても、お喋り坊主の弁信は、一別来の一伍一什いちぶしじゅうを喋り出そうとするから、米友も堪り兼ねて
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
主君から一伍一什いちぶしじゅうを聞いた高大之進こうだいのしん大垣おおがき郎右衛門ろうえもん寺門一馬てらかどかずま駒井甚こまいじんろう喜田川頼母きたがわたのも面々めんめん、口々に
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
警部さんには、よく私の気持が判っていてれたのです。これ位うれしいことはありません。私は元気を取戻しながら、一伍一什いちぶしじゅうを手短かに話してきかせました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
近頃はすっかりつのを折って、平次は勿論、ガラッ八にもいやな顔を見せない利助は、一伍一什いちぶしじゅうの様子を聞くと、一も二もなくガラッ八の意見に賛成してしまいました。
絹枝さんは、黄金仮面がいなくなったので、やっと正気に返って、昨夜ゆうべ一伍一什いちぶしじゅうを語った。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこで女が出て来ますと、その様子を見て居た外の人達がその女にどういう具合であったかと尋ねたところが、こういう訳だと言うて裸体にされた一伍一什いちぶしじゅうを話したそうです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
誠に何うも申しにくいが、何時までぐず/″\かくしてもられませんから一伍一什いちぶしじゅう申上げる儀でござるが、実はの婦人の手を切るに三十円と云う訳で、段々先方せんぽうへ掛合った処が
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
時雄は懊悩おうのうした。その心は日に幾遍となく変った。ある時は全く犠牲になって二人の為めに尽そうと思った。ある時はこの一伍一什いちぶしじゅうを国に報じて一挙に破壊して了おうかと思った。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
唖然あぜんとしていう処を知らぬ種員に向って仙果は泣く泣く一伍一什いちぶしじゅうを語り聞かせた。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして渡瀬さんが帰ってから、その一伍一什いちぶしじゅうを母に話して聞かせようとして、ふと母の境涯を考えると、とんでもないことをいいかけたと思って、そのまま口には出さないでしまったのだった。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いや、こうなったら一伍一什いちぶしじゅうを申し上げます。西村電機商会は近ごろの不景気のために大穴をあけ、世間の手前および取引先を誤魔化すために先日、社長が五万円の贋造紙幣を買い込んだのです。
一伍一什いちぶしじゅうのはなし。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この心中から身投げの一伍一什いちぶしじゅうを見て来たように話がはずんで、ひとり昂奮の程度にまで上るのは不思議なくらいでしたが、それにつり込まれでもしたように