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鬱然
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うつぜん
ふりがな文庫
“
鬱然
(
うつぜん
)” の例文
百合
(
ゆり
)
と
山査子
(
さんざし
)
の匂いとだけ判って、あとは私の
嗅覚
(
きゅうかく
)
に慣れない、何の花とも判らない強い薬性の匂いが入れ混って
鬱然
(
うつぜん
)
と
刺戟
(
しげき
)
する。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
しかるにわが東京においてはもし
鬱然
(
うつぜん
)
たる樹木なくんばかの壮麗なる
芝山内
(
しばさんない
)
の
霊廟
(
れいびょう
)
とても完全にその美とその威儀とを保つ事は出来まい。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
あらゆる華やかさと恥と不可解がごく自然に存在し、事実、それらの堆積が
鬱然
(
うつぜん
)
し醗酵してLISBOAを作ってるのだ。
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
当時徳富蘇峰の『国民之友』は政治を中心としてあまねく各方面の名士を寄書家に
網羅
(
もうら
)
し、
鬱然
(
うつぜん
)
として思想壇に重きをなした雑誌界の
覇王
(
はおう
)
であった。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
川向こうを見ると城の
石垣
(
いしがき
)
の上に
鬱然
(
うつぜん
)
と茂った
榎
(
えのき
)
がやみの空に物恐ろしく広がって
汀
(
みぎわ
)
の茂みはまっ黒に眠っている。
花物語
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
この戦国の乱れた世に
鬱然
(
うつぜん
)
たる勢力を抱きながら眠れる
獅子
(
しし
)
のそれのように諸国の武将に恐れられ、しかも己は
焦心
(
あせ
)
らず逼らず己が国土を静かに守り
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
洋燈
(
ランプ
)
も
珍
(
めづら
)
しいが、
座敷
(
ざしき
)
もまだ
塗立
(
ぬりた
)
ての
生壁
(
なまかべ
)
で、
木
(
き
)
の
香
(
か
)
は
高
(
たか
)
し、
高縁
(
たかゑん
)
の
前
(
まへ
)
は、すぐに
樫
(
かし
)
、
槻
(
つき
)
の
大木
(
たいぼく
)
大樹
(
たいじゆ
)
鬱然
(
うつぜん
)
として、
樹
(
き
)
の
根
(
ね
)
を
繞
(
めぐ
)
つて、
山清水
(
やましみづ
)
が
潺々
(
せん/\
)
と
音
(
おと
)
を
寂
(
しづか
)
に
流
(
なが
)
れる。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
たとい留守を預かるほどの者が心がけがよくって、見苦しからぬよう手入れを
怠
(
おこた
)
らぬにしたところで、主人を持たぬ家は、その
鬱然
(
うつぜん
)
たる生気を失うにきまっている。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
扉を立てた剥げ落ちた朱色の門の下で、眼の悪い犬が眠った乞食の袋を
圧
(
おさ
)
えていた。ときどき
鬱然
(
うつぜん
)
と押し重なった建物の中から、鋭く警官の銃身だけが浮きながら光って来た。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
けれども雲の軍勢が
鬱然
(
うつぜん
)
と勃起し、時に
迅雷
(
じんらい
)
轟々
(
ごうごう
)
として山岳を震動し、電光
閃々
(
せんせん
)
として凄まじい光を放ち、
霰丸
(
さんがん
)
簇々
(
そうそう
)
として矢を射るごとく降って参りますと修験者は必死となり
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
レコードは、ビクターのコルトーは
鬱然
(
うつぜん
)
たる感じのする名演奏で(七四九三—五)、ほかに三、四種のレコードも入っているが、コルトーに比べると薄手で散漫で問題にならない。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
見ゆる限り草
蓬々
(
ぼうぼう
)
たる大野原! 四周を
画
(
かぎ
)
って層々たる山々が、
屏風
(
びょうぶ
)
のごとくに立ち
列
(
つら
)
なり、東北方、
山襞
(
やまひだ
)
の多い
鬱然
(
うつぜん
)
たる樹木の山のみが、その
裾
(
すそ
)
を一際近くこちらに
曳
(
ひ
)
いている。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
仰いで天文を望めば、日月星辰、
秩然
(
ちつぜん
)
として羅列するもの、一つとして妖怪ならざるはなし。
俯
(
ふ
)
して地理を察するに、山川草木、
鬱然
(
うつぜん
)
として森立するもの、またことごとく妖怪なり。
妖怪学講義:02 緒言
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
場所は山路であつて、正面に坂道を現はし(坂の上には小さな人物が一人向ふへ越え行かうとして居る処が画いてある)坂の右側に数十丈もあらうといふ大樹が
鬱然
(
うつぜん
)
として立つて居る。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
そして、時の芽ぶきを待ちつつ、近国近郡のひろい山野にその気運を
鬱然
(
うつぜん
)
と
萌
(
も
)
え出させた原動力は千早であった。千早に
拠
(
よ
)
って、よく今日までを耐えてきた超人的な人々の力であった。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
他面には恋愛結婚に対する憧憬が
鬱然
(
うつぜん
)
として盛んな機運を作ろうとしつつあり
平塚さんと私の論争
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
春雨を豊かに吸うた境内の土、処々に侘しく残った
潦
(
にわたずみ
)
、古めかしい香いのする本堂、
鬱然
(
うつぜん
)
として厳しく立ち並んだ老木の間には一筋の爪先き上りの段道がある。その側には申し訳のような谷川がある。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
此
(
こ
)
の
坂
(
さか
)
の
上
(
うへ
)
から、
遙
(
はるか
)
に
小石川
(
こいしかは
)
の
高臺
(
たかだい
)
の
傳通院
(
でんづうゐん
)
あたりから、
金剛寺坂上
(
こんがうじざかうへ
)
、
目白
(
めじろ
)
へ
掛
(
か
)
けてまだ
餘
(
あま
)
り
手
(
て
)
の
入
(
はひ
)
らない
樹木
(
じゆもく
)
の
鬱然
(
うつぜん
)
とした
底
(
そこ
)
に
江戸川
(
えどがは
)
の
水氣
(
すゐき
)
を
帶
(
お
)
びて
薄
(
うす
)
く
粧
(
よそほ
)
つたのが
眺
(
なが
)
められる。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ただ、眼に見えるものと云えば、洞然と静もる巨大な谷と
鬱然
(
うつぜん
)
と聳える雪の山と地に這っている灌木と氷張り詰めた河ばかり。そしてそれらを
蔽
(
おお
)
うている暗い寂しい空ばかり……。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
鬱然
(
うつぜん
)
とした大樹はあるが、
渭山
(
いやま
)
はあまり高くない。山というよりは丘である。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
イタリー歌劇の
鬱然
(
うつぜん
)
たる巨頭、伝統を
護
(
まも
)
って、ワグナーと
対峙
(
たいじ
)
したが、この人のイタリー歌劇は、その豊かな創作力と、変化きわまりなき種々相と、感銘の深さにおいて、何人も及ぶところでない。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
変幻出没の業を覚え、さらに兵法武術をも学び、仁徳を積み聖賢の道をも極わめ、父の仇を討って取ろうとして、義明を狙い同志を集め、
鬱然
(
うつぜん
)
とした勢力を作り、御嶽山上に砦を築き
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
鬱
常用漢字
中学
部首:⾿
29画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“鬱”で始まる語句
鬱
鬱陶
鬱蒼
鬱憤
鬱々
鬱金
鬱勃
鬱積
鬱屈
鬱懐