トップ
>
顔馴染
>
かおなじみ
ふりがな文庫
“
顔馴染
(
かおなじみ
)” の例文
旧字:
顏馴染
坊ちゃん政——それは私にいつの間にか付けられた
通
(
とお
)
り
名
(
な
)
だった。もちろんかねて
顔馴染
(
かおなじみ
)
の二刑事が覚えているのも
詮
(
せん
)
ないことだろう。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
(アア、あれは
春川月子
(
はるかわつきこ
)
だ。やつれてはいるけれど、スクリーンで
顔馴染
(
かおなじみ
)
の春川に違いない。春川がこんな所に押込められているんだな)
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼はその仲間が帰ってから、
顔馴染
(
かおなじみ
)
の内弟子に向って、「恩地殿のような武芸者も、病には勝てぬと見えますな。」と云った。
或敵打の話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その男は、九女八の
家
(
うち
)
の門口で、
顔馴染
(
かおなじみ
)
の台助に逢うと、いま聞いてきたばかりの、
煙
(
けむ
)
の出るような噂がしたくてたまらなくなったように
市川九女八
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それでも永い間の
顔馴染
(
かおなじみ
)
になってみれば、やはりそれだけの心安さは出来た。外に客の居ない時などには、
適
(
たま
)
には世間話の一つもする事はあった。
雑記(Ⅱ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
弁士にもお座敷での
顔馴染
(
かおなじみ
)
があり、案内女にも顔を知られて、お座敷がかかれば、そっと座席へ知らせに来てもくれた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この不思議な来客というのは、米友とは古い
顔馴染
(
かおなじみ
)
、最近関ヶ原以来の——机竜之助であることに疑いはありません。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この楽器屋はこの近辺の学生たちの「
溜
(
たま
)
り」になっているらしく、ナオミもちょいちょい来るものと見えて、店員などもみんな彼女と
顔馴染
(
かおなじみ
)
なのでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
いつもこんにゃくを買ってくれる家の奥さんや女中さんとも
顔馴染
(
かおなじみ
)
になったりしていったが、たった一つだけが、いつまで
経
(
た
)
っても、恥ずかしく
辛
(
つら
)
かった。
こんにゃく売り
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
……
顔馴染
(
かおなじみ
)
の濃い
紅
(
くれない
)
、
薄紫
(
うすむらさき
)
、雪の
膚
(
はだえ
)
の
姉様
(
あねさま
)
たちが、この
暗夜
(
やみのよ
)
を、すっと
門
(
かど
)
を出る、……と
偶
(
ふ
)
と寂しくなった。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二人は左手の
隅
(
すみ
)
の
食卓
(
テーブル
)
についてビールを注文すると、
顔馴染
(
かおなじみ
)
の
肥
(
ふと
)
った給仕女が二つの
洋盃
(
コップ
)
を持って来た。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
自分も釣の
往復
(
ゆきかえ
)
りに立寄って
顔馴染
(
かおなじみ
)
になっていたので、
岡釣
(
おかづり
)
に用いる竿の
継竿
(
つぎざお
)
とはいえ三
間半
(
げんはん
)
もあって長いのをその
度〻
(
たびたび
)
に携えて往復するのは好ましくないから
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
不断は何の気も附かない宅の主人が、「あの人は
越後
(
えちご
)
ではなかろうか」といいますので、
顔馴染
(
かおなじみ
)
になった時聞きましたら、やはりそうでした。近親という事です。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
もう一つには、その女の人柄や風俗がどうも土地の人ではないらしい。五日もつゞけて買ひに来て、もう
顔馴染
(
かおなじみ
)
にもなつてゐながら、決してその居所をあかさない。
小夜の中山夜啼石
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
顔馴染
(
かおなじみ
)
の江藤老人は、顛倒したうちにも、斯んな事を言って、足の勇を
離屋
(
はなれ
)
へ案内してくれます。
流行作家の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
或る日、私が仕事をしていると、がちゃがちゃサアベルの音をさせて人が
這入
(
はい
)
って来たから私は戸籍調べが来たのかと思って見ると、その人は
顔馴染
(
かおなじみ
)
のある後藤貞行さんであった。
幕末維新懐古談:69 馬専門の彫刻家のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
住職の老人には私は
平時
(
いつ
)
も
顔馴染
(
かおなじみ
)
なので、この
時談
(
はなし
)
の
序
(
ついで
)
に、先夜見た
談
(
はなし
)
をすると、老僧は
莞爾
(
にっこり
)
笑いながら、
恐怖
(
こわ
)
かったろうと、いうから、私は別にそんな感も
起
(
おこ
)
らなかったと答えると
子供の霊
(新字新仮名)
/
岡崎雪声
(著)
なぜ、にわかに伝吉が、この街道を丹波に向かって急いで来たかというに、
顔馴染
(
かおなじみ
)
の飛脚屋が、原山峠から園部へ出る間で、たしかに、春日新九郎に会ったということを耳にしたからであった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すぐ近くの交番のおまわりで、私とはもちろん
顔馴染
(
かおなじみ
)
の仲なのです。
男女同権
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
焼けあとの
形
(
かた
)
づけさえ
覚束
(
おぼつか
)
ない状況のさなかで、一方ではこのありさまである。その光景にひどく驚いたが、店の主人は
顔馴染
(
かおなじみ
)
でもあるし、鶴見にしてからがその店の前は素通りにはできなかった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
地下に他郷に古い
顔馴染
(
かおなじみ
)
が追々遠くなるのは淋しいものです。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
二人は
予
(
かね
)
て
顔馴染
(
かおなじみ
)
の警視庁
強力犯係
(
ごうりきはんがかり
)
の刑事で、
折井
(
おりい
)
氏と
山城
(
やましろ
)
氏とだった。いや、顔馴染というよりも、もっと
蒼蠅
(
うるさ
)
い仲だったと云った方がいい。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私はさびしきまま、先日来
顔馴染
(
かおなじみ
)
の三造が、壁一重向うの焚き場にいることを思い出して、例の小さな覗き穴のふたをあけて彼の姿をさがしました。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
顔馴染
(
かおなじみ
)
の女中さんは、ニコニコしてなるたけ涼しいところへ座らせようと、
茣座
(
ござ
)
の座ぶとんを持ってウロウロした。
旧聞日本橋:03 蕎麦屋の利久
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
何にしても大して
顔馴染
(
かおなじみ
)
ではないのであるが、その頃から見るとすっかり
垢抜
(
あかぬ
)
けがしているので、先方から名のってくれなかったら、ちょっと分りそうもなかった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
草相撲で博した
贔屓
(
ひいき
)
も人気もあるのに、相手にとった一種異様なグロテスクは、土地の人にさっぱり
顔馴染
(
かおなじみ
)
がないのみならず、「馬泥棒馬泥棒」という相手方の宣伝が
甚
(
はなはだ
)
しく
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
勿論、このおかみさんも
如才
(
じょさい
)
ないには相違なかったが、
顔馴染
(
かおなじみ
)
のないわたしに対して、無料でそれだけの商売物を愛想よく渡してくれたのは、かの福草履の威徳にほかならない。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
昨夜
(
ゆうべ
)
からの籠城ですっかり、
顔馴染
(
かおなじみ
)
になった岡崎敬之助は早坂勇の肩をそっと叩きます。
音波の殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
下顎
(
したあご
)
の出た猿のようなこの老人は、どこへでもしゃあしゃあと押しだして往って、
何人
(
たれ
)
とでも
顔馴染
(
かおなじみ
)
になりました。
国司
(
こくし
)
の
館
(
たち
)
などに往くと、十日も
二十日
(
はつか
)
もそこにいることがありました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
顔馴染
(
かおなじみ
)
の近常さん。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「もう水戸が見える筈だ」そう云ったのは、賊を追って、お茶の水の
濠傍
(
ほりわき
)
から、戸波研究所の地下道を突撃して行ったことで
顔馴染
(
かおなじみ
)
の、参謀
草津
(
くさつ
)
大尉であった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
顔馴染
(
かおなじみ
)
のない皮膚科の医者の所へなど診て貰いに行くのは
嫌
(
いや
)
なのであろう、が、一つには
端
(
はた
)
の者が蔭で気を
揉
(
も
)
んでいるほど、当人はそのシミを神経に病んでいないのであった。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
顔馴染
(
かおなじみ
)
を利用するのが、あんまり現金すぎるとも思い、引受けた母までが
嫌
(
いや
)
だった。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
亡き源三郎の
顔馴染
(
かおなじみ
)
の
芸妓
(
げいしゃ
)
などから、「お久し振りでございますわね」などと、肩を叩かれたりしますと、彼はもう益々大胆になって、大胆になればなる程、お芝居が板について、今では
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いえ、夜は
反
(
かえ
)
って物騒ですよ。私は諸方をほッつき歩いて、其辺中の官兵の屯所は、一つ残らず
顔馴染
(
かおなじみ
)
だから、私と一緒にお
出
(
い
)
でなさい。とがめられたら、私の弟子ということにしましょう。
芳年写生帖
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
天風が入って往くと
顔馴染
(
かおなじみ
)
のある肥った
婢
(
じょちゅう
)
が出て来て二階へ案内した。
文妖伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「オヤオヤ、これは帆村君」と、
顔馴染
(
かおなじみ
)
の
大江山
(
おおえやま
)
捜査課長が
赭
(
あか
)
い顔を現した。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
自分の番を待ちながらくろうとたちの間に交って相弟子の稽古を見物したり、
顔馴染
(
かおなじみ
)
の芸者や
舞妓
(
まいこ
)
に話しかけたりすると云う風なので、実際の歳を考えれば別に不思議はないのだけれども
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お静が水茶屋に奉公している頃の
顔馴染
(
かおなじみ
)
には相違ありませんが、こういった肌合いの女——金が有り余って、意気とか
通
(
つう
)
とかを持薬にしている、遊芸の外に生活興味のない人間と付き合うのを
銭形平次捕物控:125 青い帯
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「一本つけて貰おうか」と、山西は
顔馴染
(
かおなじみ
)
の老人の顔を見て云った。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
料理の方は、重三郎という、これは
顔馴染
(
かおなじみ
)
の板前で、外に近所の女達二人、下女のお角が
采配
(
さいはい
)
を揮って居たようで。奇月宗匠に貸しのあるのはうんと居ますが、怨みのあるのは一人もありません。
銭形平次捕物控:245 春宵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
顔
常用漢字
小2
部首:⾴
18画
馴
漢検準1級
部首:⾺
13画
染
常用漢字
小6
部首:⽊
9画
“顔”で始まる語句
顔
顔色
顔容
顔付
顔貌
顔立
顔面
顔触
顔料
顔回