トップ
>
隙見
>
すきみ
ふりがな文庫
“
隙見
(
すきみ
)” の例文
めんどうになるような気はするのであったが、すでに
隙見
(
すきみ
)
をしたらしい人に隠すふうを見せるのはよろしくないと思った尼君は
源氏物語:55 手習
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「二十年も奉公した私に、主人の死に顔を見せられないはずはございません。あんまり変だから、そっと
隙見
(
すきみ
)
をすると——」
銭形平次捕物控:094 死相の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
残った連中が、後から出て行って、帰りがけに数右衛門の長屋の戸を
隙見
(
すきみ
)
してみると、数右衛門は
蒲団
(
ふとん
)
の中にもぐって、高い
鼾
(
いびき
)
をかいていた。
濞かみ浪人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、思って、裏手にまわって、閉め忘れたらしい小窓に、灯火がほんのりさしているのを見つけ、はしたなく、
隙見
(
すきみ
)
をしたのが、因果だった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
少女は実際部屋の窓に、緑色の
鸚鵡
(
おうむ
)
を飼いながら、これも去年の秋
幕
(
まく
)
の
陰
(
かげ
)
から、そっと
隙見
(
すきみ
)
をした王生の姿を、絶えず夢に見ていたそうである。
奇遇
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
結局旨く胡麻化して
隙見
(
すきみ
)
をさせましたが一ぺンに違うといいまへン。よう似てるが、違う所もあるちゅうような事だす。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
それが一方は近くに高い家が建ってたちまち見えなくなり、一方は樹木が一体に成長して、僅かに葉が落ちてからちらちらと
隙見
(
すきみ
)
をするだけになった。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「
昨夜
(
ゆうべ
)
なのさ。僕の
隙見
(
すきみ
)
の第五夜だ。丸くぼかした視野の中に、君の、その顔が、ヒョッコリ現われた時には、僕はもう少しで
叫声
(
さけびごえ
)
を立てる所だった」
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
真白な肉附きの好い肌が役者のように美くしかったので、近所の若い女が目引き袖引き垣根から
隙見
(
すきみ
)
したそうだ。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
女は唯
愈
(
いよい
)
よ
咽
(
むせ
)
びゐたり。音も立てず
臥
(
ふ
)
したりし貫一はこの時忍び起きて、障子の
其処此処
(
そこここ
)
より男を
隙見
(
すきみ
)
せんと為たりけれど、
竟
(
つひ
)
に
意
(
こころ
)
の如くならで止みぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
けれどもまた、
怜悧
(
りこう
)
な人は折助をうまく利用して、評判を立てさせたり
隙見
(
すきみ
)
をさせたりするのでありました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あのロメエヌ町の白い客間にいらっしゃるのを
隙見
(
すきみ
)
をいたした時、それが分かったのでございます。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
とこの
儘
(
まま
)
黙って
隙見
(
すきみ
)
をするのはもう気の毒で堪らないというように、そっと慶三の手を引いたが
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
主人の妻、大納言の
北
(
きた
)
の
方
(
かた
)
はこう云う座敷の有様を、
御簾
(
みす
)
のうちにいてさっきから
隙見
(
すきみ
)
していた。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
即
(
すなは
)
ち
隙見
(
すきみ
)
したる眼の無事なるを取柄にして、
何等
(
なんら
)
の発見せし事なく、
踵
(
きびす
)
を返して血天井を見る。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
人なき家に、ひとり弥生が入浴しているので、よろこんだ豆太郎、そっと
隙見
(
すきみ
)
をしてみると!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
僕は影にいて、賞讃でもみくちゃになるカビ博士をくすぐったく
隙見
(
すきみ
)
しているわけだった。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「どう考えても
解
(
げ
)
せないことだ。誠の使者か
贋物
(
にせもの
)
か、どれちょっと
隙見
(
すきみ
)
してやろう」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あやつめが四たび五たびとしつこく
隙見
(
すきみ
)
して、何か嗅ぎ出そうと不埓な振舞いに及んだゆえ、
脅
(
おど
)
しつけようと飛んで出たところへ、貴殿がふらふらと迷ってお出なすったという次第じゃ。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
命を
賭
(
と
)
しても此帷幕の
隙見
(
すきみ
)
をす可く努力せずに居られぬ人を
哂
(
わら
)
うは
吾儕
(
われら
)
が
鈍
(
どん
)
な
高慢
(
こうまん
)
であろうが、同じ
生類
(
しょうるい
)
の進むにも、鳥の道、魚の道、
虫
(
むし
)
の道、また
獣
(
けもの
)
の道もあることを忘れてはならぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
祭日
(
まつりび
)
の太皷の
囃子
(
はやし
)
厭はしく、わが外の世をば
隙見
(
すきみ
)
しぬ。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
あまりに泣くので
隙見
(
すきみ
)
をしている源氏までも悲しくなった。子供心にもさすがにじっとしばらく尼君の顔をながめ入って、それからうつむいた。
源氏物語:05 若紫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「その通りですよ。下女のお友が一から十まで、
隙見
(
すきみ
)
をしてゐたんですつて——いやもう大變な見ものだつたさうですよ」
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「二番の部屋といったっけな」
裏梯子
(
うらばしご
)
を上がって隣り座敷へ、そっと細目の
隙見
(
すきみ
)
、
鰻
(
うなぎ
)
なりに寝そべっている。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暗闇に立っていること
故
(
ゆえ
)
大丈夫とは思ったけれど、二人は充分用心して、屋内から
隙見
(
すきみ
)
されてもそれと気附かれぬ様、ドアのすぐ横に
蹲
(
うずく
)
まって様子を窺った。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
神尾の殿様の様子を見ようと石灯籠の蔭で
隙見
(
すきみ
)
をしているところを
取捉
(
とっつか
)
まって、すんでのことに息の根を止められようとするところを不意にあの騒ぎで、神尾の殿様も
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
貞子の方は奥より駈出で(見るに眼も
眩
(
く
)
れ心も消え、)と
絃
(
いと
)
に乗るまでにはあらざるも、式台の戸より
隙見
(
すきみ
)
して、一方ならぬ
御愁傷
(
おなげき
)
なり。書生は殊更にかっぷと
唾
(
つば
)
を
拳
(
こぶし
)
に打占め
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
公は往年夫人の
閨
(
ねや
)
へ通いつゞけた夜な/\、
餘所
(
よそ
)
ながら此の
奇態
(
きたい
)
な顔を
隙見
(
すきみ
)
させて
貰
(
もら
)
っては快感に浸っていたので、今日が始めてなのではないが、当人はそれを知る筈がないから
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
また
外光
(
ぐわいくわう
)
の
紫
(
むらさき
)
に
河岸
(
かし
)
の
燕
(
つばめ
)
の飛び
翔
(
かけ
)
りながら
隙見
(
すきみ
)
する
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
(もう一度
隙見
(
すきみ
)
をしてやろうか)
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
今日は恋人のことが思われずに、風の中でした
隙見
(
すきみ
)
ではじめて知るを得た継母の女王の面影が忘られないのであった。
源氏物語:28 野分
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
加え得る様な、強い女ではありません。その上相手に悟られぬ様に、こっそり
隙見
(
すきみ
)
をする方法もあるのです
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
神尾の許へ行くからには、どうせ
碌
(
ろく
)
なことでないのはわかっています。そうしてこの男が老女の家を辞して帰る時に、垣根の蔭から何か、そっと
隙見
(
すきみ
)
をしてその途端に
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その遠眼鏡を中心に、参詣の男女が、一家族のように楽しんでいるのを見ると、宅助は、平和な家庭の垣を
隙見
(
すきみ
)
した
継子
(
ままこ
)
と同じさみしみを感じて、自分も、仲間入りをしたくなった。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
北の方は、自分が左大臣を
隙見
(
すきみ
)
していることを、左大臣が知っているかどうか半ば疑問にしていたのであったが、今は疑う餘地もないと思うと、自分の顔が
俄
(
にわ
)
かに
赧
(
あか
)
くなるのを感じた。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
娘自身も並み並みの男さえも見ることの
稀
(
まれ
)
な
田舎
(
いなか
)
に育って、源氏を
隙見
(
すきみ
)
した時から、こんな
美貌
(
びぼう
)
を持つ人もこの世にはいるのであったかと
驚歎
(
きょうたん
)
はしたが
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
それが非常に遠く感じられ、不思議と
物淋
(
ものさび
)
しい晩のことでありましたが、私はとうとう、土蔵へ忍びこんで、そこの二階にいる筈の夫の
隙見
(
すきみ
)
を
企
(
くわだ
)
てたのでございます。
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
米友が推察の通り、この塀の外から中を
隙見
(
すきみ
)
していたのは折助でありました。折助が三人ばかり先刻から節穴を覗いていたのを、米友に見つけられて彼等は丸くなって雪の中を逃げました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
表戸を
閉
(
た
)
てて、
隙見
(
すきみ
)
していた道三の側衆たちは、思わず
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ほのかな
隙見
(
すきみ
)
をしただけの面影すら忘られないのであるからまして院が女王のためのお悲しみの深さは道理至極であると言わねばならぬと同情も申していた。
源氏物語:42 まぼろし
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
一刹那
(
いっせつな
)
、この世の視野の外にある、別の世界の
一隅
(
いちぐう
)
を、ふと
隙見
(
すきみ
)
したのであったかも知れない。
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「いやじゃありませんか、いつのまに、こんなものをかいたんでしょう。そっと
隙見
(
すきみ
)
をして、こんなところをかいちまっていながら、知らん顔をしているんですから、ずいぶん、人の悪い白雲先生よ」
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「待てしばし」と、しずかに
隙見
(
すきみ
)
しておられた。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こうした
隙見
(
すきみ
)
がもとで長い物思いを作らせられたと同じく、自分を苦しくさせるための神仏の計らいであろうかとも思われて、落ち着かぬ心で見つめていた。
源氏物語:54 蜻蛉
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
どこか
隙見
(
すきみ
)
でもする
箇所
(
かしょ
)
はないかとさがしたり、そこを立ち去りかねていたが、いつまでそんなことをしていても仕方がないと
諦
(
あきら
)
めて、通りすがりの自動車を呼びとめた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
次の間で
隙見
(
すきみ
)
をしていたお絹が
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
長い間
噂
(
うわさ
)
だけを聞いていて、いつの日にそうした方を
隙見
(
すきみ
)
することができるだろうと、はるかなことに思っていた方が思いがけなくこの土地へおいでになって
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
わしはこの
隙見
(
すきみ
)
によって、川村の奴が、どれ程深く瑠璃子に溺れているかを知ることが出来た。彼は姦婦の柔かい指先の一触によって、たちまち
水母
(
くらげ
)
の様になってしまった。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
御簾
(
みす
)
の向こうの黒い
几帳
(
きちょう
)
の
透
(
す
)
き影が悲しく、その人の姿はまして寂しい喪の色に包まれていることであろうと思い、あの
隙見
(
すきみ
)
をした夜明けのことと思い比べられた。
源氏物語:48 椎が本
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そとから
隙見
(
すきみ
)
のできないようにしておいて、用意の
釘抜
(
くぎぬ
)
きで木箱の
蓋
(
ふた
)
をひらきはじめた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
隙
常用漢字
中学
部首:⾩
13画
見
常用漢字
小1
部首:⾒
7画
“隙見”で始まる語句
隙見男