造詣ぞうけい)” の例文
しかも華麗を競ふたる新古今時代において作られたる技倆ぎりょうには、驚かざるを得ざる訳にて、実朝の造詣ぞうけいの深き今更申すも愚かに御座候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
家は、室町むろまち幕府の名門であったし、歌学の造詣ぞうけいふかく、故実こじつ典礼てんれいに詳しいことは、新興勢力の武人のなかでは、この人をいて他にない。
今川や大内などのように文に傾き過ぎて弱くなったのもあるが、大将たる程の者は大抵文道に心を寄せていて、相応の造詣ぞうけいを有して居た。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その婦人は三十何年間日本にいて、平安朝文学に関する造詣ぞうけい深く、平生日本人に対しては自由に雅語がご駆使くしして応対したということである。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
けれども、彼の中世史学に対する造詣ぞうけいを知るものには、何時か好む戯詩として、斯うした作品が生まれるであろう事は予期していたに相違ない。
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
先生は、哲学方面の造詣ぞうけいも深く、その未完の名著『物理学序説』では、物理学の本質について、深奥な考察をされている。
比較科学論 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
国学への造詣ぞうけいをふかめるとともに、国学的な世界観や人間観を身につけ、反封建的超俗的な思想を抱懐するようになった。
雨月物語:04 解説 (新字新仮名) / 鵜月洋(著)
国学への造詣ぞうけいをふかめるとともに、国学的な世界観や人間観を身につけ、反封建的超俗的な思想を抱懐するようになった。
これは哲学の素養もなく、社会学の造詣ぞうけいもなく、科学に暗く宗教を知らない一人の平凡な偽善者のわずかばかりな誠実が叫び出した訴えに過ぎない。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「今日に限った事じゃない。いつでも腹の中で出来てるのさ。僕の俳句における造詣ぞうけいと云ったら、故子規子こしきしも舌をいて驚ろいたくらいのものさ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其磧以後の小説を一と通り漁り尽した私は硯友社諸君の器用な文才には敬服しても造詣ぞうけいの底は見え透いた気がして円朝の人情ばなし以上に動かされなかった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
しかし学芸を研鑽けんさんして造詣ぞうけいの深きを致さんとするものは、必ずしも直ちにこれを身に体せようとはしない。必ずしもただちにこれを事に措こうとはしない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
もっともこれは東洋哲学に造詣ぞうけいの深い斎藤先生の指導に影響されたせいでもあるが、その結果、福岡から程遠からぬ所に在るこの有名な、恐ろしい伝説に
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
博覧強記で学識があり識見があり、漢学の造詣ぞうけいにも深いものがありました。それに蒐集家しゅうしゅうかで書画、古硯こけん、古陶、染織等の類は、見るべき品が数々ありました。
沖縄の思い出 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
自分でも興味が出て来て研究しますから、好い加減な易者えきしゃよりも造詣ぞうけいが深い積りです。博士になる筈ですよ
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
高橋氏の、考古学に関する造詣ぞうけいは、すでに趣味の領域をでている。専門的な学問としての研究で、多方面のその成果を発表して、絶讃を博しているときいている。
これを以て見れば、良斎の方は、尺八の音について、さまでの造詣ぞうけいはないものと見てよろしいでしょう。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
庸三は舞台の正面の、少し後ろの方に坐って、童謡を踊る愛らしい少女たちを見ていたが、後ろのすみの方に、舞踊にも造詣ぞうけいのふかい師匠の若い愛人の顔も見えた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
然るにびょうたる河内の一郷士正成が敢然立って義旗を翻すに至った動機には、実に純粋なものがあるのだ。学者の研究に依ると、正成は宋学の造詣ぞうけいが相当深かった様だ。
四条畷の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
世間の評判によると、あなたもたくさんの花やいい匂いについて、ずいぶんご造詣ぞうけいが深いそうではありませんか。いかがです、わたしの先生になって下さいませんか。
モオリスは世のいわゆる高尚優美なる紳士にして伊太利亜イタリヤ埃及エジプト等を旅行して古代の文明に対する造詣ぞうけい深く、古美術の話とさえいえば人に劣らぬ熱心家でありながら
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかしてこうがその専門についてある点まで上達すれば、乙がまた他の専門についてある点に達するに比べて専門がいかに違っても、各自の造詣ぞうけいは深さ高さによりて測り
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
精神分析学にも造詣ぞうけいが深いと言われる安宅先生がこれしきの心理の曲折を識らないわけもございますまいに、ぬけ/\とこれを葛岡に押し付けてさせるところをみれば
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
書中に云っている所から推すと、彼は老儒の学にも造詣ぞうけいのある、一かどの才子だったらしい。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
くなった衛門督えもんのかみはどんな場合にも思い出される人だが、ことに何の芸術にも造詣ぞうけいが深かったから、こうした会合にあの人を欠くのはもののにおいがこの世になくなった気がしますね
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
動物学に於ける自分の造詣ぞうけいの浅薄さが、いかん無く暴露せられたという事が、いかにも心外でならなかったらしく、私がそれから一つきほど経って阿佐ヶ谷の先生のお宅へ立寄ってみたら
黄村先生言行録 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いたずらっぽくはいったが、その男は漢学の造詣ぞうけいも深く、書家でもあった。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「わ、判ったよ。君の動物学についての造詣ぞうけいは百二十点と認める——」
獏鸚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
俊基がそんな軽薄ではないにしろ、彼とて、新しい宋学そうがく造詣ぞうけいにかけては、堂上一般の若公卿なみに、いやそれの先駆者ぐらいな誇りもある者だった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美妙斎は余りに早く大家となったために自分をもまた余りに高く買い被り過ぎて少しも造詣ぞうけいに励まなかった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
無論算哲博士に、考古学の造詣ぞうけいがなけりゃ問題にはしないけれども、この形と符合するものが、ナルマー・メネス王朝あたりの金字塔ピラミッド前象形文字の中にある。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
太祇蕪村一派の諸家その造詣ぞうけいの深さ測るべからざる者あり。暁台きょうたい闌更らんこう白雄しらおらの句つい児戯じぎのみ。(五月二日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
庸三も踊りはわかるようでわからないのだったが、見るのは好きであったので、舞踊にも造詣ぞうけいのふかい若い愛人清川を得てからの新作発表の公演も見逃みのがさなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
妻は茶道に造詣ぞうけいが深い。少くとも京都へ行って、千の表だか裏だかの免状を貰って来ている。姪に教えていたが、嫁に行ってしまったので差当りお弟子さんがない。
四十不惑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
このことばは私の評価に少からず影響した。F君のドイツ語の造詣ぞうけいは、初め狂人かとまで思った疑を打ち消して、大いに君を重くしたのに、この詞は又頗る君を軽くした。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
当時余はほんの小供こどもであったから、先生の学殖がくしょくとか造詣ぞうけいとかを批判する力はまるでなかった。第一先生の使う言葉からが余自身の英語とはすこぶる縁の遠いものであった。
親しくその人をはぐくんだ山川草木の間で、相当の研究を積んでいたには相違ないが、その中でも竹中半兵衛尉重治たけなかはんべえのじょうしげはるの研究に就いては、なかなかの造詣ぞうけいを持っているらしい。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
詩文の造詣ぞうけいと才は、全く天下一品だったので、その方の世話にだけあずかる積りで止宿を乞うていたのであるが、もはや自分の目的が変った以上寺を出て仕舞ってもよかった。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
文芸趣味に造詣ぞうけいが深く、寝ころんでも愉快に生涯を送れる身分でありながら、七面倒臭い東京の市長になって、かくも利欲に眼をくれず、どっちかといえば大した過ちもなく
植物についてこれほどの深い造詣ぞうけいがあるにもかかわらず、彼とその植物との間には、少しの親しみもないらしく、むしろ反対に、彼は植物に触れることも、その匂いを吸うことも
鉄心は実務の才に富むのみならず文学の造詣ぞうけいもまた浅からず、執務のかたわら暇あれば詩人墨客を招いて詩を唱和し酒豪を以て自ら誇りとなした。詩文を斎藤拙堂に禅を雪爪せっそう禅師に学んだ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
法皇はあらゆる芸術に通じておいでになるが、その中でも最も音楽の御造詣ぞうけいが深いから、それらに遠ざかっておいでになる御出家後といえども院が御覧になるのだと思うと晴れがましいのですよ。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
「ああ、あなたの地質の造詣ぞうけいの深いのには敬意を表しますが——」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自分の平生の造詣ぞうけいを、十分披瀝ひれきして見よう。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
中野氏の家系は、鎌倉執権代の長崎高資のえいとか。山口県での毛利氏研究には専門家以上の造詣ぞうけいのある人である。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ましてや謙遜な二葉亭は文章の造詣ぞうけいでは遥に春廼舎に及ばないのを認めていたから、おのれをむなしゅうして春廼舎の加筆を仰いだ。春廼舎臭くなったのも止むを得なかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
さて、葉書の問題でなくて俳句のことだが、この方面に於ける僕の造詣ぞうけいは至って浅い。学校の読本で見本を三つ四つ習ったばかりだから全然的ぜんぜんてき無学むがくだといっても差支ない。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
浮城物語、西国立志篇程度のもので、これに、後年になって学んだ義太夫の造詣ぞうけいと、聞き噛り式に学んだ禅語の情解的智識を加えたら、彼の精神生活の由来するところを掴むのは
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それには衣食に事をいても書物を買うと云う君の学問好を認めた為めもあるが、決してそればかりではない。ドイツ語に於ける君の造詣ぞうけいの深いことは、初対面の日にもう知れていた。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
占いの好きなその友人も、何か新しい仕事に取りかかる時とか、または一般的な運命を知りたい場合に、東西の人相学などにも造詣ぞうけいのふかい易者に見てもらうのが長い習慣になっていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)