身長みのたけ)” の例文
初め山道は麓の村落でおどかされた程急ではないが、漸く樵夫きこりの通う位の細道で、両側から身長みのたけよりも高き雑草でおおわれている処もある。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
すがたは、坐していても、身長みのたけことにすぐれて見え、身には水色の鶴氅かくしょうを着、頭には綸巾りんきんをいただき、その面は玉瑛ぎょくえいのようだった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
斯く肉體の身長みのたけも、種々階級があるが如くに、性格といふものも、自らにして非常に高い人もある、中位の人もあり、更に低い人もある。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
身長みのたけ九尺六寸といわれる長人孔子の半分位しかない短矮たんわい愚直者ぐちょくしゃ子羔しこう。年齢から云っても貫禄かんろくから云っても、もちろん子路が彼等の宰領格さいりょうかくである。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
鬼髯おにひげが徒党を組んで左右へ立ち別かれ、眼の玉が金壺かなつぼの内ぐるわに楯籠たてこもり、まゆが八文字に陣を取り、くちびる大土堤おおどてを厚く築いた体、それに身長みのたけやぐらの真似して
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
空處にとなれるそのへりと、たえず聳ゆる高き岸のもととの間は、人の身長みのたけたびはかるに等しかるべし 二二—二四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
肉附きよく、身長みのたけ高く、総体に風采は堂々たるもので、麗人の名に背かなかった。着ている衣裳は大時代で、日本の神代の衣裳であった。そうして首には珠をかけていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
声の主は、その頃同じ基経の恪勤かくごんになつてゐた、民部卿時長の子藤原利仁としひとである。肩幅の広い、身長みのたけの群を抜いたたくましい大男で、これは、煠栗ゆでぐりを噛みながら、黒酒くろきさかづきを重ねてゐた。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
開閉器スイッチの所在が判って、室内が明るくなった。テレーズの人形は身長みのたけ五尺五、六寸ばかりの蝋着せ人形で、格檣トレリス型の層襞そうへきを附けた青藍色のスカートに、これも同じ色の上衣フロックを附けていた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
吉本さんの住居すまいや学校の方で二三度捨吉も見かけたことのある、稀なひとみすずしさと成熟したすがたに釣合った高い身長みのたけとを有った婦人だ。この婦人も捨吉と同じ下宿をさして急いで来た。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
剛七郎身長みのたけ六尺近く、有名なムッツリ屋、周防すおうの国は毛利左京亮もうりさきょうのすけ府中ふちゅう万石まんごく後足あとあしで砂をかけたという不忠の浪人——ナニ、変な洒落だ? とにかく、コイツ面倒臭いと思ったのだろう。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
山路にさしかゝると、頂上には小夜峠さよとうげがあつて、そこには子育観音こそだてかんのんが安置されてゐる。その寺は久圓寺といつて、真言宗しんごんしゅうである。本尊の観世音かんぜおん行基僧正ぎょうきそうじょうの作で、身長みのたけ一尺八寸であるといふ。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ほこえたような沢山たくさんきば……どう周囲まわりは二しゃくくらい身長みのたけは三げんあまり……そうったおおきな、神々こうごうしいお姿すがたが、どっと飛沫しぶき全身ぜんしんびつつ、いかにも悠々ゆうゆうたる態度たいどで、巌角いわかどつたわって
呉の末臨海の人山に入って猟し夜になって野宿すると身長みのたけ一丈で黄衣白帯した人来て我明日かたきと戦うから助けくれたら礼をしようというたので、何の礼物に及びましょう必ず助けましょうというと
溺死人男年齢三十歳より四十歳の間とう二十二年七月五日区内築地三丁目十五番地先川中へ漂着仮埋葬済○人相○顔面長おもながかた○口細き方眉黒き方目耳尋常左りの頬に黒あざ一ツありかしら散髪身長みのたけ五尺三寸位中肉○傷所数知れず其内大傷は
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
身長みのたけしやくちかく、灰色はいいろはりごと逆立さかだち、するどつめあらはして、スツと屹立つゝたつた有樣ありさまは、幾百十年いくひやくじふねん星霜せいさうこの深林しんりん棲暮すみくらしたものやらわからぬ。
呂布は身長みのたけ七尺ゆたかな偉大漢なので、団々と、巨大なまりの如く縄をかけられたため、いかにも苦しげであった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身長みのたけはひどく大きくもないのに、具足が非常な太胴ゆえ、何となく身の横幅が釣合つりあいわるく太く見える。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
人々の身長みのたけの高さは大凡定つてゐるのであるから、無暗に最大範圍に於ける最高級に達することを欲せず、比較的狹い範圍内に於て志を立てて最高位を得んことを欲したならば
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
横川勘平は、身長みのたけ六尺ある。十人力という評判であるが、実際それぐらいはあるかも知れない。この番所住いでは兎に角、窮屈きゅうくつに出来上っている体格だ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一行は手分けをして、雨にうるお身長みのたけより高い草を押分け押分け、蚤取眼のみとりまなこで四方八方捜索したが、いかにしても見出す事が出来ない。咽はいよいよ渇いて来る。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
すでにその義龍は、身長みのたけ六尺余り、膝長ひざたけ一尺二寸という堂々たる青年となり、稲葉山城の主君として君臨し、道三は、長良川ながらがわ向うの鷺山さぎやまの城へ、隠居の身とはなっている。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身長みのたけ七尺もありそうです。おかしいのは、髪を短く切って、襟の辺に垂らしていることで、容貌はまず、雄偉とでもいいましょうか。まあ、壮士でございますよ、ひと口にいえば」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも身長みのたけ仰ぐばかりであり、腰まわりも普通人の倍にちかい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)